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【大学野球】日本代表初選出の早大・吉納翼 合宿であらためて学んだ結果以上に大切なこと

 

野球人生において中身の濃い3日間


早大・吉納は左の強打者。合宿期間中の打球速度の計測ではフリー打撃で165キロ、ティー打撃で155キロと、トップレベルの数字をたたき出した[写真=矢野寿明]


【侍ジャパン大学代表候補合宿】
[バッティングパレス相石スタジアムひらつか]

 合宿2日目(6月23日)。代表候補メンバー45人は朝4時15分に球場集合となった。宿泊施設から徒歩約10分。当然であるが、誰一人として遅刻者はいなかったという。早大・吉納翼(4年・東邦高)は侍ジャパン大学代表・堀井哲也監督(慶大監督)が示した意図を、こう受け止めた。

「国際試合(出場するプラハ・ベースボールウイーク2024、ハーレム・ベースボールウイーク2024には)は日本との時差がある中で、慣れない環境下でのタフさが求められる」

 何の不自由もなく、恵まれた国内の一方で、海外は異文化で、食事が合わないかもしれない。空港でのロストバゲージ、整備が行き届いていないグラウンドコンディション、練習会場の変更、移動バスが到着しないなど、大会運営におけるイレギュラーは常。そのたびに、心が揺らいでいては、勝負にならない。

 あえて、国内での候補合宿の段階から、難しい状況を設定したのである。でき得る準備はすべて整えておかないと済まない。国際試合に近い、一発勝負のスリリングな社会人野球(三菱自動車岡崎、JR東日本)で監督を歴任してきた堀井監督のチームビルディングだ。

 3日目、最終日のラストメニューは「2ストライクアプローチ」が組み込まれた。カウント0ボール2ストライク。しかも、投手板から本塁は通常より約2メートル短い約16メートル。打者には相当、追い込まれたシチュエーションの中で「対応力」が見極められた。安打が出れば最高だが、求められる役割はそれ以外にもある。いかに粘って、相手バッテリーに重圧を与えるか。堀井監督は「勝ちに貢献しない技術は必要ない」が持論である。

「結果だけではないところを見ているのだと感じました」。吉納にとって今合宿は「野球人生において中身の濃い3日間でした。目的は代表24人に選ばれることですが、それ以上にこれから野球を続けていく上で勉強になる刺激的な日々でした」と、充実感ある表情で振り返った。他大学の選手とコミュニケーションを図る中で、再認識することがあった。

「早慶戦のホームラン見たよ!! という一言目から会話が弾んだケースが何度もありました。早稲田で野球をやれることが、どれだけ特別なことなのかを感じましたし、当たり前ではないので、感謝の気持ちになりました」

日の丸を背負って戦う喜びと責任


 今春の慶大1回戦で2本塁打。リーグ優勝に王手をかける左越えとバックスクリーンへの2発は、観衆3万人の伝統の一戦でインパクトを残した。三塁ベンチにいたのは堀井監督。言うまでもなく、吉納の高い能力を認めており今回、大学日本代表に初めて選出された。

「高校3年時はコロナ禍で侍ジャパンU-18代表チームは編成されませんでしたので、そのチャンスすらなかった。初めて日の丸を背負って戦うことに、喜びと責任を感じます。日本代表として恥じないプレー、所作、立ち居振る舞い。堀井監督から言われた『大学生の模範、目標とされる選手』を胸に自覚ある行動が求められます。合宿3日間を通じて、あらためて結果以上に大切なことを学びました」

 堀井監督は東京六大学リーグ、神宮球場で天皇杯を争うライバル・慶大の指揮官である。早大・吉納としては、身近で接する中で特別な感情が芽生えた。

「慶應の選手たちは常日頃から、こうした堀井監督のきめ細かな指導の下で活動しているわけです。春は早慶戦で連勝(早大は7季ぶりのリーグ制覇)しましたが、秋のリーグ戦ではより一層、警戒していかないといけない」

 早大からは吉納のほか主将・印出太一(4年・中京大中京高)、遊撃手・山縣秀(4年・早大学院)、エース・伊藤樹(3年・仙台育英高)が選出。6月29日からは、代表メンバー24人が集まり、国内最終合宿がスタートする。捕手・印出は堀井監督から大学日本代表の主将に指名された。早大で副将を務める吉納は、侍ジャパンでも同様にサポートしていく形となる。

文=岡本朋祐
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