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【大学野球】土俵際からの粘り腰 東農大が31年ぶりの一部の座を手にできた3つの理由

 

「主将抜てき」で「古豪復活」


駒大との一部二部入れ替え戦を2勝1敗で制し、東農大の4年生は喜びを分かち合った[写真=矢野寿明]


【東都一部二部入れ替え戦▽神宮】
▼6月27日 3回戦 東農大2勝1敗
東農大(二部優勝)12-1駒大(一部6位)
※東農大は1993年秋以来の一部昇格

 東農大は土俵際から粘り腰を見せた。

 駒大との一部二部入れ替え戦。1回戦を落としてあとがなくなってから、2、3回戦で連勝し、1993年秋以来の一部昇格を決めた。

 なぜ、31年ぶりに一部の座を手にすることができたのか。3つの理由がある。東農大は1931年春、東都大学野球連盟(当時・五大学野球連盟)の結成当時のメンバーである。2022年春から指揮する北口正光監督は「古豪復活」の勝因を「主将抜てき」に挙げた。

 三部降格した昨秋、当時の3年生・和田泰征(4年・習志野高)をキャプテンに据えた。

「(昨春の段階で)4年生で出ていたのは1、2人。秋も4年生に引っ張らせるのは酷かな、と。(当時の3年生を中心とした)このチームを何とか作っていって、二部に上がって、一部に上げたい、と。私としても腹をくくりながら、できるだけ早めにこの年(世代)にかけたい思いがありました。三部に落ちて、キャプテンを変えたのは良かった」

 部運営は主将・和田に託した。北口監督はPL学園高、亜大、松下電器(現パナソニック)でプレー。現役引退後はパナソニックでの部長、監督、コーチを歴任し、指導者経験も豊富であり、人を動かすことに長けている。

「もともと三部にいたときにコーチに就任し、監督を受けた就任2年目に三部に落としてしまった……。二部と三部の往復。3年目、チームも見えてきて、メンバーも残っていましたので、4年生になったときは楽しみだな、と思っていました。主将・和田を中心に学生に任せていますので、私はミーティングもしません。和田と話しながら、主将以下に下ろしてもらって助かりました。今までの農大は、上がってもすぐに(二部に)落ちる。(2024年は)すぐに一部に上がって神宮大会で優勝するぞ!! と年頭から言ってきました。途中過程ですが、夢は叶うんだな、と。中間地点としては、良い方向に行っている」

一つずつ踏んだステップ


2023年春 二部最下位→三部降格
2023年秋 三部優勝→二部昇格
2024年春 二部優勝→一部昇格

 一つずつ、ステップを踏んできた。主将・和田の「覚悟」も2つ目の勝因である。

「(昨春に)三部に落ちて、これ以上ない悔しい思いをした。(3年秋から主将となり)すぐに(二部に)上がって、すぐに(二部で)優勝して、すぐに(一部に)上がるんだ。目指す場所は、一つしかない。チャンスは1回。そのチャンスをものにするかが重要。昨秋の入れ替え戦で二部に上がって、この一冬が大事になるんだぞ!! と。二部で勝つため、一部二部入れ替え戦で勝つための取り組みを継続してきました。実を結んで良かった」

 1回戦で駒大に先勝を許しても、慌てない。最後の勝因は強じんな「メンタル」である。

「僕らの学年が中心となって野球をやらせてもらって『楽しく野球をやろうじゃないか』と。苦しむのではなく、楽しく試合に臨む。良い意味で割り切りがあるチームです。自分たちは二部から一部へと上がるチャレンジャー。1回戦は浮足立っていた。試合後、監督からの話で『取り組んできた努力を、信じてやるしかない。それで結果が出なければ仕方ない』と。選手間でももう一度、確認し合い、リフレッシュして2回戦以降を臨むことができました。(3回戦は)気持ち。一つのボールに食らいつく執念でやっていこう、と」

「一部昇格」がゴールではない。2024年秋、東農大は一気に「戦国・東都」の頂点に駆け上がるべく、万全の準備を進める。

文=岡本朋祐
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