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今オフのFA市場で一番人気? 「Cランクの最多勝右腕」が争奪戦必至

 

育成からはい上がって


今年で11年目のシーズンを送っている石川


 首位を独走するソフトバンク。投打ががっちりかみ合って順調に白星を重ねているが、ファームで復活を期す右腕がいる。石川柊太だ。

 今季は初登板となった4月5日の楽天戦(楽天モバイル)に先発し、5回2安打1失点で初勝利と幸先良いスタートを切った。その後はチーム事情で先発、救援で登板を重ねる。だが、交流戦優勝がかかった6月16日の阪神戦(みずほPayPay)に先発し、初回に前川右京に先制の満塁アーチを被弾。この4点が重くのしかかる形となり、5回4失点で今季2敗目を喫し、翌17日に登録抹消された。

 185cmの長身からサイド気味のスリークォーターから投げ込まれる球質は、唯一無二と言ってよいだろう。直球は常時140キロ台後半と目を見張る速さではないが、うなりを上げるような回転で打者をねじ伏せる。代名詞のパワーカーブは縦に大きく割れ、打者の視線から見ると一瞬消えるため捉えられない。スライダーを入れたコンビネーションでテンポよくアウトを重ねる。

 アマチュア時代は目立った存在ではなかった。創価大から育成ドラフト1位で入団。プロ2年間は右肘、右肩の故障で満足に投げられない日々が続いたが、2016年にファームで結果を残して7月に支配下昇格した。17年に先発、救援で34試合登板とフル回転し、8勝をマーク。DeNAと対戦した日本シリーズでは育成出身の投手で初の2勝を挙げた。18年は自己最多の13勝と順調に階段を駆け上がる。コロナ禍により120試合制で行われた20年に11勝3敗、防御率2.42で最多勝、最高勝率(.786)のタイトルを獲得した。

昨年は“ノーノー”達成


 育成入団の先輩・千賀滉大(カブス)の背中を追いかけ、ソフトバンクのエースになる期待が高まったが、21年以降は3年連続2ケタ勝利に到達できずシーズン負け越し。昨年は4勝8敗、防御率4.15と一軍に定着以来最も悪い防御率だったが、大記録を成し遂げた。8月18日の西武戦(PayPayドーム)でノーヒットノーランを達成。127球の熱投でナインに祝福されると久々に笑顔がはじけた。石川は週刊ベースボールの取材でこう振り返っている。

「たくさんお祝いの連絡をもらったりすると、湧きましたね。すごいことをやれた、というか、やらせていただいた。いろいろなことがかみ合って起きたことなんです。自分の実力だけじゃない部分もある。だからもう本当に、いろいろと感謝しかないですね」

「やっぱり雰囲気は、いつもとは違いますよね。1球、1アウトごとに歓声が上がったり。ただ、自分としては意識はしていないですけどね。開幕投手をやったときもそう(21年)。自分はいつもどおりに投げているだけ。でも、周りからしたら、いつもとは違う、異様な空気というか。今回もそれに近い。自分は何も考えていなくて、アウトを取るだけなんですけど、球場の雰囲気がだんだんと盛り上がっていくというか、舞い上がっていくというか」

4年ぶりVへ必要な存在


 巻き返しを誓った今季。投球内容が決して悪いわけではない。9試合登板で2勝2敗、防御率3.26。先発、救援陣が充実しているチーム事情もあり、現在はファームで調整している。

 石川は6月12日に国内FA権を取得した。推定年俸1億2000万円で、人的補償を必要としないCランクとみられる。他球団の編成担当は「昨オフにFA宣言した山崎福也(日本ハム)がCランクで複数球団の争奪戦になったように、石川もFA権を行使すれば、一番人気になるんじゃないですかね。実績がありますし、能力の高さを考えれば先発でエース格になれる。今オフの去就が注目されます」と高い評価を口にする。

 有原航平モイネロ大津亮介大関友久東浜巨スチュワート・ジュニアと先発陣が盤石のソフトバンクだが、ペナントレースは長い。小久保裕紀監督の下で4年ぶりのリーグ優勝、日本一へ。石川の力が必要とされる時期は必ず来るはずだ。名実共にソフトバンクのエースになれるか。

写真=BBM
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