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【高校野球】「新潟の高校野球の歴史を変える」阪神投手の兄から継承した「1」帝京長岡・茨木佑太

 

マウンド上で常に平常心


帝京長岡高の144キロ右腕・茨木は同校初の甲子園出場を目指す[写真=BBM]


【第106回全国高等学校野球選手権新潟大会】

 新潟大会は7月5日に開幕。今春の県大会、北信越大会優勝校で、第1シードの帝京長岡高は7月7日の2回戦から登場する。

 春夏を通じて初の甲子園出場を目指す上で、キーマンとなるのは144キロ右腕・茨木佑太(3年)だ。2歳上の兄である阪神茨木秀俊も同校でプレー。2年前の夏は新潟大会決勝で延長11回、日本文理高にサヨナラ負け(1対2)。当時、1年生で背番号11を着けていた弟は、兄の無念を背負い、同秋からエースナンバーを継いでいる。

 同じ右腕だが、高校3年時の登録を見ると、兄が「182センチ85キロ」に対して、弟は「187センチ92キロ」と一回り大きい。最速は兄に3キロ及ばないが、野球は球速で勝負する競技ではない。

 NPB通算46勝を挙げた帝京長岡高・芝草宇宙監督には、独自の指導方針がある。投手は下半身強化が基本で、上半身のトレーニングは極力回避。仮に取り組んでもインナーを鍛える程度で、負荷はかけないという。肩回りの筋肉の柔軟性を重要視しており、ストレッチも入念に行う。下地ができたところで、ようやく上半身強化に着手。茨木の場合は2年冬がそのタイミングだった。腕の位置も昨秋は最もボールに力が伝わるスリークォーターに下げた。あくまでも、成長過程。オフシーズンを経て再び、オーバースローに戻すと、以前よりも指のかかりが良くなったという。

 昨秋の138キロから、この春は6キロアップ。芝草監督からすれば、想定内だった。トレーニングを継続していけば、150キロの大台も見えてくるが、指揮官はストップをかけた。一気に上げ過ぎると、故障が隣り合わせ。伸びシロを残した状態で、次のステージへと送り込みたいと考えている。セットポジションから投球フォームのバランスを重視し、キレを追い求める。高校生として「勝てる投手」を目指す。茨木には「将来性」がある。

 芝草監督の下には春以降、多くのNPBスカウトが視察、あいさつに訪れ、注目度は増している。芝草監督は兄との比較をこう語る。

「弟は常にマウンド上で平常心で、崩れない。勝負どころでは冷静に、どう打ち取るかを考えることができます。手足が長いですが、自分をコントロールすることができる。兄は2年前の夏、県大会を勝ち上がるごとにピッチングを覚えていきました。弟は今春の段階で、9イニングを配分して投げることを習得しました。体があり、投球術の部分でも高校生のレベルでは、すでに完成に近い。上半身のトレーニングは本格的にはしていませんから、高校卒業後にさらに伸びる可能性を秘めている。兄は厳しい練習に対して何も言わず、黙々とやり遂げる芯の強さがありました。兄弟2人共通して、我慢強さがあります」

「初出場初優勝を目指す」


芝草監督[左]が3年間指導。阪神に在籍する2歳上の兄・秀俊に続いて、プロへ進んでほしいと願っている[写真=BBM]


 新潟大会では甲子園まで2回戦から6試合、勝ち上がる必要がある。茨木は決意を語る。

「新潟の高校野球の歴史を変える。甲子園で勝つ野球を目指してきました。新潟県勢は全国から見ても弱いイメージを持たれていると思います。今年こそは、自分たちの代で甲子園を決める。初出場初優勝を目指します!!」

 新潟勢は春夏を通じて全国優勝がない。2009年夏の日本文理高の準優勝が最高成績である。兄に続き、プロの世界へと進みたい思いが強いが、まずは夏のピッチングに集中する。

「この夏に結果を残すことが大事。チームとして『勝てる投手』になれば、(ドラフトの)結果もついてくる」

 最速144キロのストレートは数字以上の迫力がある。横変化のスライダーは空振りが取れ、目線をずらす縦変化のカーブ、タイミングを外すチェンジアップと精度が高い。好きな言葉は「一意専心」。2024年夏、茨木は一つの目標に向かって、チームのために腕を振る。

文=岡本朋祐
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