あまりに短い夏
大会前から注目された森井は試合後、多くの報道陣に囲まれた[写真=田中慎一郎]
【第106回全国高校野球選手権西東京大会】
7月7日 府中市民球場
▽2回戦 富士森9-2桐朋(7回
コールド)
桐朋高は富士森高との2回戦で7回コールド敗退。最速153キロ、高校通算45本塁打を誇る 森井翔太郎(3年)は無念の初戦敗退に終わった。前日に東・西東京大会開会式に臨んだばかり。あまりに短い夏だった。
「初戦の相手が決まってから、手ごわい相手だとは分かっていましたので、準備をしてきたんですが……。こんなに早く負けるとは思っていませんでした」
チームは1回裏、ミスが重なり7失点。森井は初回の途中からリリーフしたが、相手の勢いを止めることができなかった。「勝つことだけを考えて、一人ひとりを抑えようと思った」。5回まで投げ、反撃したいところだったが「(3打席は)自分の中でも力みがあった。いつも打撃ではなかった」と、すべて中飛の3打数無安打に終わっている。
1回裏の途中から救援登板。力のあるボールを投げ込んだ[写真=田中慎一郎]
「チームメートと過ごした時間は、苦しいこともありましたが、楽しかったです。感謝しています。これから次の舞台に向けてトレーニング、練習をしないといけない。上の舞台では通用しない。ここからがまた、スタートだという気持ちです。自分で考え、何が足りないのかを探し、つぶしていく作業の中で自分の技術を伸ばしてきたのは成長したところ。田中先生(隆文、監督)に教わることもたくさんありましたが、自分で考え、レベルアップすることに集中でき、やりやすい環境だったと思います。ただ、強豪校に比べて練習時間が短いですし、フォームの再現性とか量が劣る。ここから量にこだわっていきたい」
森井が言う「次の世界」「上の世界」には、2つ選択肢がある。
都内トップレベルの私学の進学校・桐朋高から出現した二刀流。春以降、NPBスカウトだけでなく、MLBスカウトも視察に訪れ、注目度はヒートアップするばかり。進学志向が強い校風の中で、森井は昨年12月の段階で「大学進学は考えませんでした。高卒プロが第一志望です」と、NPBドラフトでの指名を目指していた。小学校時代からメジャー志向が強く、森井が描く最高のシナリオはNPBで活躍した上で、MLBで活躍することだった。仮にNPBドラフトで指名されなかった場合は、米国大学への留学を考えていた。
MLBへの夢は一貫
劣勢の展開のため、力みにより、3打数無安打。結果は出なかったが、スケールのあるスイングを披露した[写真=田中慎一郎]
スタンフォード大へ進学した花巻東高・
佐々木麟太郎が一つの道を示したのも影響したという。昨年12月に展望をこう語っていた。
「世代トップクラスの選手が表明され、こうした前例ができたのは、自分としても、行きやすい状況だと思います。最終目標はメジャー・リーガー。日本の大学を経由するよりも、アメリカの大学へ進んだほうが近道かな、と」
時間が経過していく中で心境が変化し「五分五分」と、プロ志望届を提出するか、米国留学するかの選択肢となっていた。この日の試合後、あらためて、進路について言及している。
「夏の大会に集中しないと、チームに申し訳ないですし、自分もこのチームで勝ちたかった。現状は五分五分というか……。これからゆっくり考えていきたいと思います。(アメリカの大学へ見学に)行ってみたいと思いますし、これから予定を立てていきたいです」
あくまでも、MLBへの夢を一貫としている。
「メジャー・リーグに最終的に挑戦したい思いが強いので、どちらが良いのか分からないんですけど、そういう選択肢(米国留学)があるなら考えたい。メジャー・リーガーになりたいので、勉強もしたいというわけではなくて、野球で超一流になりたいと思っているので、野球が一番上達できる環境というのを探していきたい」
この日も、10球団以上のNPB、MLBスカウトが視察。投打での「将来性」が評価されている。森井は自らの野球人生を歩んでいく上で、最善の道を選ぶ段階に入っていく。