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ドライチで伸び悩みも…打撃フォーム改造で覚醒予感の「スピードスター」は

 

追い込まれると「ノーステップ打法」に


6月下旬に一軍昇格するとシュアなバッティングを見せている藤原


 ロッテ藤原恭大が昨年までと違う姿を見せている。

 開幕前のオープン戦で自打球を当て、右膝蓋骨骨折で長期離脱。6月28日のオリックス戦(ZOZOマリン)で一軍復帰すると、8試合出場で打率.370マークしている。数字以上に強烈なインパクトを与えているのが、2ストライクと追い込まれた後の打撃フォームだ。首位打者を2度獲得した実績を持つ角中勝也を彷彿とさせる「ノーステップ打法」に。7月3日の日本ハム戦(エスコンF)では猛打賞の活躍を見せた。4回に左腕・細野晴希の外角低めに逃げるスライダーを左前に運ぶと、6回も無死満塁の好機で アニュラス・ザバラの直球を三塁線にはじき返す2点逆転適時二塁打を放った。この2本はいずれもノーステップ打法だった。

「細野から打った球は昨年までだったら空振りしていた可能性が高い。2ストライク後は広いスタンスからコンタクトを重視した打法に変えることによって、体の開きを抑えて逆方向にヒットゾーンが広がっている。この打法を継続できれば打率が大きく下がることはないでしょう。塁に出て俊足も生かせますし、覚醒の予感がします」(スポーツ紙記者)

 大阪桐蔭高で同学年の根尾昂(中日)、柿木蓮(日本ハム)、横川凱(巨人)と共に3度の全国制覇を経験。走攻守3拍子そろった素材に、ドラフト1位でロッテ、阪神楽天と3球団が競合した。球団史上3人目となる高卒1年目の開幕戦にスタメンを飾るなど、期待は大きかったが殻を破れない。2021年の7・8月に打率.348、5本塁打、15打点をマークして月間MVPを受賞するなど輝きを放つ時期があったが、好調を持続できない。長打を狙う強打者を目指すのか、リードオフマンとして生きるのか。プロで生きるスタイルが見えにくい印象もあった。

口にしていた背水の陣


 昨年は自己最多の103試合に出場したが、打率.238、3本塁打、21打点と満足できない数字に。同学年の山口航輝と昨年7月に週刊ベースボールの企画で対談した際、故障から復帰する可能性が高い荻野貴司高部瑛斗に話題が及ぶと、危機感を口にしていた。

「外野陣は今でもそうですけど、やはり試合でしっかりと打たなければ試合に出してもらえない立場なので、打つしかないんですよ。そのお二人がケガから復帰したら、外野のスタメンの枠が2つ埋まるということです。今のところ、僕はチャンスをもらっている状態なので、もっと結果を残して、そのお二人が復帰しても僕を使いたくなるような選手になっておきたいです」

 打撃で結果を残さなければ一軍を保証されている立場ではない。個人の目標を聞かれた際も、背水の陣を強調していた。

「まずはチームに貢献できるように。気にするところはそこですね。もちろん、優勝したい気持ちはあります。その気持ちは大きいのですが、だからどうしようとか自分が考えて言える立場ではないと思います。そんな余裕もないですし」

相手にとって厄介な打者に


7月7日の西武戦では2本の適時三塁打で勝利に貢献した


 ノーステップ打法はタイミングの取り方が難しく、誰もが会得できる打撃技術ではない。打撃センスが抜群の藤原はフォーム改造の決断が現時点で功を奏していると言える。打席で追い込まれても出塁していることで相手バッテリーにとって厄介な打者になっている。

 7月5日の西武戦(ベルーナ)では2回二死一、三塁の好機でフルカウントから高めのスライダーをきっちり見極めて四球で出塁した。簡単に凡打しない打席が続くことで自信をつけたのではないだろうか。早いカウントからの打撃もスイングが鋭い。7月7日の西武戦(ベルーナ)では、3回無死一塁で右翼線に先制の適時三塁打。強烈な打球で試合の主導権を引き寄せた、8回一死一、二塁の好機で右中間を深々と破る2点適時三塁打。自身初となる1試合2本の三塁打で3打点をマークして勝利に貢献した。

 もちろん、まだレギュラーをつかんだわけではないが、首脳陣の信頼は高まっている。スピードスターが不動のリードオフマンに覚醒する姿を見られるだろうか。

写真=BBM
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