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【高校野球】7年ぶり復活の雪谷「伝統行事」 強豪にサヨナラ負けも「都立の雄」の存在感

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2年生右腕が力投


雪谷高は延長11回タイブレークでサヨナラ負け。6回表まで4対1とリードし、主導権を握っていたが、最後は力及ばなかった[写真=BBM]


【第106回全国高校野球選手権東東京大会】
7月11日 神宮球場
▽2回戦 二松学舎大付高5x-4雪谷
(延長11回タイブレーク)

 雪谷高の一塁側応援席は、スクールカラーの真っ赤に染まった。二松学舎大付高との2回戦を前に同校の「X」には、告知があった。

『【チーム雪谷の皆様へ】本校野球部は夏の大会で1回戦を突破し、来る2回戦では、数年ぶりに全校生徒を挙げて「母校応援」を敢行します。ぜひ雪谷高校にゆかりのある皆様方にも応援をお願いします!』

 同校の同窓会「螢友会」のホームページからも情報発信され、雪谷高の関係者が神宮球場に集結。7年ぶりの全校応援。雪谷高の伝統行事が復活したのである。約800人の一体感のある大応援が、グラウンドの選手たちを後押ししたのは言うまでもない。今夏はノーシードながら21年夏から23年春まで4季連続甲子園出場を遂げた強豪・二松学舎大付高に対して、互角の戦いを見せた。試合は4対4の9回で決着がつかず延長タイブレークへ。雪谷高は11回裏に力尽き、サヨナラ負けを喫したが、2003年夏に甲子園に出場実績がある「都立の雄」として、存在感を示した。

2年生右腕・熊田は二松学舎大付高の強力打線を10回4失点に抑えた[写真=BBM]


 V候補相手に力投したのは10回4失点の2年生右腕・熊田航大だ。公式戦初先発の「秘密兵器」。法政二高、法大、プリンスホテルを経て阪神日本ハム巨人で右投手としてプレーした雪谷高・伊達昌司監督は褒め称えた。

「昨秋はベンチに入るか入らないかのギリギリのところで、メンバーから漏れてしまいました。冬場に一生懸命練習して、体が強くなり、球速も120キロから136キロまで上げてきた。カットボール、スライダーが同じ軌道でくる。登録メンバーに入れて以降も、グングンと伸びてきた成長株です。彼しかいないと思いました。上出来、100点満点です。これから1年、どうなっていくのか楽しみです」

頼もしい3年生がバックに


一塁側の雪谷高応援席は約800人。赤で染めて、全校応援が展開された[写真=BBM]


 下級生が快投できたのも、頼もしい3年生がバックで支えていたからである。

「キャプテンの戝津(戝津佑願)と吉岡(吉岡赳彰)が中心にチームをまとめてくれました。下級生時代から出場していた選手が多く、新チーム結成当初は『うまくいくかな?』と思っていましたが、試合ではミスが連鎖し、うまくいかない時期もありました。課題を一つひとつ克服し、心と体をコントロールできるようになった。私の考えと3年生の考えが一致。自分たちでもがいて作り上げたチームです」

 試合後、ナインはグラウンドで泣き崩れた。

「私たちが勝つには、この展開しかなかった。二松学舎さんはゲームの入り、雰囲気と甲子園を多くの大舞台を経験し、洗練されたチームです。惜しかったですが、強豪私学を相手に都立校が引っ繰り返すには何が必要か、本気で考えるようになれば強くなると思います。(21年4月の)就任以降、今までで一番、悔しがっているように見受けられました。この敗戦を糧にしてほしい」(伊達監督)

 背番号10の2年生・熊田は新チームに向けて「全体的にレベルアップしないといけない。一つひとつ勝ち、上のレベルまで行きたい。甲子園? もちろんです」と力強く語った。

 2003年夏に甲子園初出場して以降、雪谷高の大応援は夏の風物詩として定着した。高校野球とは、グラウンドとスタンドが一体となって初めて成立する。背番号を着けた20人の登録選手だけでなく、全部員が主役。勝利まであと一歩、届かなかったが、大声援の影響力をあらためて感じた2時間18分であった。

文=岡本朋祐

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