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中学時代は補欠、阪神で戦力外も…育成契約から「素質開花の苦労人」は

 

バットで存在をアピール


7月7日の広島戦では栗林からサヨナラ安打を放った板山


 巻き返しを狙う中日の起爆剤になっている男がいる。阪神を昨季限りで退団し、育成契約の入団からはい上がった板山祐太郎だ。

 身体能力の高さと走攻守のバランスの良さに定評があったが、阪神では一軍のレギュラーをつかめなかった。プロ8年目の昨年は12試合出場で打率.059、0本塁打、0打点。チームは38年ぶりの日本一に輝いたが、オフに戦力構想から外れた。

 まだできる――。現役続行を目指すためにオフに右肘遊離軟骨除去手術を受け、中日に育成契約で入団。5月5日に支配下昇格で即一軍から声が掛かり、「支配下登録され、うれしい気持ちと身が引き締まる思いでいっぱいです。昨年、阪神を戦力外になって、こうやってドラゴンズにもう一度チャンスをいただけたことに、毎日野球ができる喜びを感じながらプレーしてきました。自分の特徴は守備で言えば、いろんなポジションを守れるというところ。そこに関しては1球1球ムダにできないという思いでやってきました」と決意を口にしていた。内外野を守れるユーテリティーが武器だが、バットでも存在をアピールしている。

7月5日の広島戦では移籍後第1号アーチをバンテリンドームの右翼席へ運んだ


「三番・一塁」でスタメン出場した6月25日の古巣・阪神戦(倉敷)。0対0で迎えた8回二死三塁の好機で才木浩人のスライダーを一、二塁間にはじき返す決勝の適時打を放った。猛打賞の活躍でお立ち台に上がると「最高にうれしいです!」と叫んだ。7月5日から本拠地・バンテリンドームで行われた広島戦でも同一カード3連勝の立役者に。6日に相手エース・大瀬良大地から移籍後初アーチを右翼席に叩きこむと、7日は同点で迎えた9回一死満塁で守護神・栗林良吏から右前に運ぶサヨナラ適時打を放った。

 チームは敗れたが衝撃の一発も。9日のDeNA戦(横浜)で、3点差を追いかける6回二死一塁で、ドラフト5位右腕・石田裕太郎が内角に投じた145キロの難しい球を右翼席中段に叩きこんだ。肘をたたんで体をコマのように回転させる高等技術に球場がどよめいた。11日の同戦も4回に右翼フェンス直撃の三塁打を放ち、逆転の口火を切った。今季30試合出場で打率.326、2本塁打、10打点をマーク。期待以上の活躍を見せている。

中学での挫折がターニングポイント


 阪神でファーム暮らしが続いていた時期も腐ることなく、誰よりも練習に打ち込んできた。その原点は中学時代だ。神奈川県横浜市で生まれ育ち、中学の時に硬式シニアの名門・中本牧リトルシニアに入団したが、3年間レギュラーを勝ち取れなかった。全国屈指の強豪・横浜高への進学を希望したが、「横浜高校に行かせてやれないこともないけど、3年間スタンドでいるよりかは試合に出てなんぼじゃないか」と監督に助言を受けて、成立学園高に進学した。板山は週刊ベースボールの取材で、こう語っている。

「中学での挫折というのが僕の中で結構ターニングポイントというか。ほかの人より練習をしているという自信はあったし、負けていないと思っていましたけど、やっぱり中学時代は体の大きいやつには勝てないので。金属バットだし、僕は150cm台で、180cm台のやつがゴロゴロいて。どんなにバットを振っても打球の強さや飛距離では勝てないし、球の速さや肩の強さでも勝てないし。そこでの悔しさというのが高校、大学ずっと心のどこかにありました」

「できることは何なのかと考えたときに練習するしかなかったので、体が小さいことにグチを言っても何も始まらないので。プロになっても一軍にいるいない、試合に出る出ないを決めるのは僕じゃない。あくまでも選手は評価してもらって使ってもらう立場だと思います。じゃあ使ってもらえるように結果を残すしかなくて、練習するしかないし。そういう考え方ができたのは中学のときの挫折があったからだなとは思いますね」

 日の当たる道を歩んできたわけではない。挫折や試練を乗り越えることで強くなってきた。低迷期が長く続いている中日は、ハングリー精神にあふれている板山の台頭が他の選手への刺激になる。今まで支えてくれた人たちに恩返しするためにも、ドラゴンズブルーのユニフォームを身にまとい、全身全霊で野球に打ち込む。

写真=BBM
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