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【高校野球】劇的なサヨナラ勝利で4強の東京「甲子園占領」へ腕を振る右腕エース・永見光太郎

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負けを覚悟から……


東京高のエース・永見は延長11回、139球を一人で投げ切った[写真=BBM]


【第106回全国高校野球選手権東東京大会】
7月23日 神宮
▽準々決勝 東京高6x-5日大豊山高
(延長11回タイブレーク)

 最後のアウト一つ取るのは大変である。あきらめないことを学ぶ、教訓となる一戦だった。

 4対5で迎えた11回裏二死満塁。東京高の井上渓太郎(3年)は二塁手前へ力のないゴロを放った。万事休すか……。一塁ベンチで12回表に向けて準備をしていた右腕エース・永見光太郎(3年)も「終わったな……」と負けを覚悟したと明かす。

 しかし、野球はゲームセットの瞬間まで、何が起こるか分からない。日大豊山高の二塁手が一塁へ、まさかの悪送球。三走に続き、二走も生還して劇的なサヨナラ勝ちを収めた。

「勝って泣いたのは、初めてです」

 永見は歓喜した。「先発した以上、最後まで投げ切る気持ちでした。疲れ? ありません。スタミナ? 大丈夫です」。背番号1は決して弱音を吐かない。しかも、冷静である。6回までに4点ビハインドも慌てず、打線の援護を信じて待った。7、8回に反撃でついに追いついた。4対4のまま9回で決着がつかず、タイブレークへ。10回は双方とも無得点。11回表、日大豊山は1点を勝ち越したが、逃げ切ることができなかった。東京高としては、今春の東京都大会4回戦で8回コールド敗退(0対7)した日大豊山高に、リベンジする形となったが「そこは意識せずに、目の前の相手に集中するだけでした」と、182センチの永見は淡々と語った。

タイブレークの延長11回裏、1点ビハインドから劇的なサヨナラ勝ちを収めた[写真=BBM]


 最速143キロのストレートにはキレがあり、カウント球、勝負球でも使えるカットボールを軸に配球する。追い込んでからのフォークも効果的だ。今春は二松学舎大付高との東京都大会3回戦で1失点完投(2対1)し一躍、注目の存在に。NPBスカウトも「将来性」を高く評価するドラフト候補である。

 永見は「最終的にはプロへ行きたい思いはありますが、大学を含めて、夏が終わってから考えたいと思います」と明かした上で「これまでで一番の成績を残せたので、自信にはなっています」と手ごたえを語った。母校を指揮する松下浩志監督も「今は大会に集中していますので、進路については大会後、あらためて話し合うことになります」と説明した。

チームスローガンは「伝説」


プロ注目右腕・永見は大勢の報道陣に囲まれ、試合後の取材に応じた[写真=BBM]


 チームスローガンは「伝説」。東京高は過去最高の4強進出を果たした。永見は「歴史に残る代になったので、良かった」と達成感を語りつつ「具体的な伝説は『甲子園占領』。ゴールはない。行けるところまで勝つ」と、気持ちを引き締めた。「甲子園占領」とは、聖地のマンモススタンドを超満員の観衆で埋めるほど、多くの人に応援されるチームを目指すという意味だ。この日の神宮球場の一塁応援席では、近隣の絵画館にまで大声援が届くほど、一体感のある大応援が展開された。

 準決勝の相手は第1シードの名門・帝京高。東京高は3回戦から中1日で4回戦、5回戦、準々決勝と計4試合を消化した。ほぼ一人で投げてきた永見は中3日で迎える一戦を控え「春の大会は(次の試合まで)約1週間あり、調整がうまくいきませんでした。今回は気持ちを切らさず、次もチームの勝利に貢献したいです」と、気を引き締めた。

 大田区の多摩川沿いにある東京高は「土手高(どてこう)」として親しまれている。野球部、ラグビー部、陸上競技部らが共用のグラウンドは、河川敷にある。春夏を通じて甲子園出場経験がなく、新たな伝統を築いていく。

文=岡本朋祐

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