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初出場の球宴で大活躍も流血で途中交代…「三冠王の可能性ある」強打者は

 

力強いバッティング


DeNA打線の中で強打を発揮いているオースティン


 今セ・リーグで最も怖い打者ではないだろうか。DeNAのタイラー・オースティンが本格的に覚醒の時を迎えている。

 6月に打率.346、5本塁打、17打点で自身初の月間MVPを受賞。7月に入って少し快音が止まっていたが、すぐに修正した。前半戦最後の10試合で5本塁打と量産。試合の流れを変える値千金の一撃が多い。9日の中日戦(横浜)では同点の延長11回二死でマイケル・フェリスの150キロ直球をバックスクリーン右に叩きこむサヨナラ弾。お立ち台で「もう最高の気分です。チーム全体の勝利だと思います。あと、山本(山本祐大)選手の大活躍(4安打)のおかげであの打席が自分のところに回ってきたのだと思います」とチームメートを称賛した。

 7月19日からのヤクルト3連戦(神宮)では13打数7安打、3本塁打と爆発した。1戦目に3年ぶりの1試合2本塁打をマーク。2回に吉村貢司郎のツーシームをパワーで左中間席に運ぶと、同点に追いついた6回は技ありの一撃だ。金久保優斗の直球を逆方向の右越えに運ぶ14号勝ち越しソロ。2戦目に猛打賞をマークすると、3戦目も2点を追いかける9回無死二塁で木澤尚文のスプリットを左翼席に運ぶ起死回生の同点2ランを放った。試合は延長線の末にサヨナラ逆転負けを喫したが、その活躍は目を見張るばかりだ。

4年間で規定打席未到達


 能力は申し分ない。現役時代にNPBの助っ人外国人で史上唯一の通算2000安打の金字塔を打ち立てたアレックス・ラミレス監督はオースティンのプレーを見た際、「今まで見てきた外国人選手の中で一番のインパクト」とうなった。それほどの逸材だったが、度重なる故障により日本でプレーした昨年までの4年間で規定打席に到達したシーズンはゼロ。昨年も6月の交流戦中にヘッドスライディングした際に負傷交代し、「右肩鎖関節の捻挫」で長期離脱。一軍のグラウンドに復帰は叶わず、22試合出場で打率.277、0本塁打に終わった。

 今季は4月10日の中日戦(横浜)で左翼線へ適時二塁打を放った際に全力疾走で右太もも裏を痛めて途中交代。1カ月間離脱したが、5月17日に一軍昇格以降は奮闘している。二、三番でスタメン起用が多く、前半戦終了時点で打率.302、15本塁打、37打点をマーク。現在247打席。後半戦も試合に出続ければ、来日初の規定打席に到達する。セ・リーグで打率3割以上はドミンゴ・サンタナ(ヤクルト)、丸佳浩(巨人)、細川成也(中日)の3選手のみ。本塁打は現在3位で、リーグトップの村上宗隆(ヤクルト)に2本差まで接近している。打点はリーグトップの岡本和真(巨人)が54で、7位タイのオースティンは37と少し差が開いているが、一気に積み重ねれば三冠王に輝く可能性がある。

際立っている勝負強さ


 他球団のスコアラーは「一番抑えにくい打者。緩急に崩されないし、どのコースにも対応してくる。頭の良い打者で試合中に修正してくるので同じ配球が通用しない。特にチャンスになるとどこに投げても打たれる雰囲気があります。二塁や三塁に走者を置いて対戦したくないですね」と警戒を強める。

 この言葉を裏付けるように、得点圏打率.419と圧巻の数字をマークしている。規定打席に到達した選手でチームメートの佐野恵太近本光司(阪神)が共にリーグトップの得点圏打率.333。オースティンの勝負強い打撃は際立っている。

 DeNAの308得点はリーグトップ。オースティン、佐野、牧秀悟宮崎敏郎と強打者が並び、山本、梶原昂希、ドラフト1位の度会隆輝ら将来を嘱望される若手も存在感を見せている。シーズン途中に米国から復帰した筒香嘉智が左肋骨の疲労骨折で戦列を離れているが、打線の破壊力はリーグ屈指だろう。前半戦を終えて、首位の巨人に2.5ゲーム差の3位と逆転優勝が可能な位置につけている。

 筒香の代役で初出場した球宴でも輝きを放った。第1戦で2回に大量9得点の口火を切る先制の中前適時打。途中出場の第2戦でも5回に左越え2ランを放った。ただ、9回に想定外のアクシデントが。一塁の守備で辰己涼介(楽天)の打球が顔面を直撃して流血し、途中交代した。オースティンが打撃タイトルを独占するような大活躍をすれば、頂点が間違いなく見えてくる。ケガで離脱しないことを願うばかりだ。

写真=BBM
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