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阪神最強のジョーカー 今季登板なしも「球界代表する投手」期待の左腕は

 

ロマンが詰まった左腕


今年のキャンプでブルペン投球をする高橋


 リーグ連覇を狙う阪神に、「最強のジョーカー」が戻ってきた。7月20日に育成契約から支配下に復帰した高橋遥人だ。

 無理はさせられない。だが、規格外の球にはたくさんのロマンが詰まっている。2021年11月に左肘のクリーニング手術を受け、翌22年4月にトミー・ジョン手術を受けた。満足なコンディションを取り戻せない日々は苦しかっただろう。23年6月には「左尺骨短縮術」及び「左肩関節鏡視下クリーニング術」を受けた。22年から2年連続で一軍登板なし。チームは昨年38年ぶりの日本一に輝いたが、リハビリに打ち込んでいた。昨オフに育成契約を結び、背番号は「129」に。阪神ファンは温かい目で見守っていた。実戦復帰したファームの試合で名前がコールされると、大きな拍手が送られた。

 一軍で通用する水準に到達するのは、簡単な道のりではない。試行錯誤を繰り返していたが、徐々に輝きを取り戻していく。7月13日のウエスタン・リーグの広島戦(由宇)で、実戦復帰後最長の8回を103球で投げ切った。9試合登板で0勝3敗、防御率3.09。勝ち星はついていないが、登板を重ねて投球内容は改善していった。直球は力強さを取り戻し、制球力も上がっていく。32イニングで35三振と奪三振能力の高さは相変わらずだ。球団は一軍でも十分に通用すると判断し、支配下昇格の決断に踏み切った。

 18年に入団し、通算44試合登板で14勝18敗1ホールド、防御率3.01。入団以降はケガで満足に投げられない期間が多かったが、マウンドに立つとすごい球を投げる。19年は19試合登板で3勝9敗、防御率3.78。109回2/3と規定投球回数に到達していないが、イニング数を軽く超える125三振を奪っている。翌20年は左肩の不調で出遅れたが、8月に一軍合流すると12試合に登板で5勝4敗、防御率2.49。しなやかな腕の振りから繰り出される140キロ台後半の直球、落差の大きいツーシーム、鋭く横滑りするカットボールに打者のバットが空を切る。対戦した柳田悠岐(ソフトバンク)、坂本勇人(巨人)ら球界を代表する強打者たちが空振りして驚きの表情を浮かべるほどだった。

アマ時代から規格外の直球


 アマチュア時代からその名は知られていた。DeNA平良拳太郎は週刊ベースボールの「最高のストレート」というテーマで、高橋の名前を挙げていた。

「ストレートと言えば、同学年の阪神・高橋遥人投手。実は沖縄・今帰仁中3年の春に、全国大会(文部科学大臣杯 第1回全日本少年春季軟式野球大会)の準決勝で常葉橘中の高橋投手と対戦したことがあって、沖縄や九州の大会でも見たことのないようなストレートを投げていました。ボールの下を振っているのが分かるくらい、速くて伸びている。試合は0対2で敗れましたが、7イニング制で21アウト中半分以上は三振を取られたと思います。プロに入って、2019年のCSファーストステージ第3戦で互いに先発したときに対戦しましたが、あらためて速いなと。テレビで見ても突き刺さるような球で、やっぱりすごいなと思います」

球団OBも大きな期待


 球界を代表する左腕になれる素質を持ちながら、度重なる故障という試練が待ち受けていた。だが、表舞台から遠ざかった時期もその期待が消えることはない。かつて、阪神のエースとして活躍したOBの藪恵壹は今年のシーズン前に、「二軍ではガラスのエースと言われる高橋遥人投手がコンディションを上げていると聞いています。ようやく目の色が変わったように感じますし、持っているポテンシャルは、すごいものがある。彼が調子を上げて支配下に戻り、一軍復帰を果たすようだと、かなり強い先発陣になるでしょう」と期待を込めていた。

 岡田彰布監督が就任し、リーグ優勝を飾った昨年は8月以降に34勝16敗1分と圧倒的な差をつけ、首位を独走した。阪神の生命線は投手陣だ。才木浩人西勇輝大竹耕太郎ビーズリー村上頌樹の5本柱は強固だが、伊藤将司青柳晃洋は調子を落としてファームで調整している。背番号「29」で再び復帰した高橋が完全復活すれば、チームも勢いづくことは間違いない。

写真=BBM
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