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下位低迷の中で孤軍奮闘…首位打者、最多安打狙える「中日のスラッガー」は

 

確実性が高まった打撃


今季は進化したバッティングを見せている細川


 逆襲を狙う中日で、主軸として奮闘しているのが移籍2年目の細川成也だ。

 球界屈指の飛距離を誇る和製大砲だが、今年はコンタクト能力も格段に上がっている。7月28日の阪神戦(甲子園)では、2回に西勇輝の高めに入ったスライダーを左翼席に運ぶ先制の13号ソロ。セ・リーグ最速で100安打に到達した。2点を追う9回無死一塁でも相手守護神・岩崎優から両リーグ最多の101安打目となる左前打を放った。8月6日のDeNA戦(岐阜)でも2安打3打点の活躍。1点を先制された直後の初回二死一塁で左翼席に逆転2ランを叩きこんだ。濱口遥大の外角低めのスライダーを左手一本ですくい上げた技ありの一撃が決勝点となった。

 今季100試合出場で打率.298、14本塁打、44打点。打率はリーグ2位で、108安打はリーグトップ。107三振はリーグワースト2位だが、確実性が高まったことでさらに進化している。

 他球団の打撃コーチは、細川についてこう指摘する。

「直球の打ち損じが減りましたよね。きっちりとらえられているから打率が上がる。昨年試合に出続けて、打席を積み重ねた経験が大きいと思います。少しでも甘く入ったら長打を浴びるリスクが高まる。ボール球になる変化球をきっちり投げ切れるかが、抑えるポイントになります」

課題を克服して進化


 DeNAから現役ドラフトで移籍した昨季は140試合出場で打率.253、24本塁打、78打点をマーク。いずれも自己最多の数字でブレークしたが、さらに上を目指すためにクリアしなければいけない課題もあった。

 春先から快音を響かせていたが、7月以降は打率.204、14本塁打。相手バッテリーのマークが厳しくなり、ボール球にバットが空を切る場面が目立った。試合に出続けるためのコンディション作りの難しさも痛感しただろう。今年はその反省をきっちり生かしている。7月は月間打率.315、4本塁打、9打点。2ストライク後も粘って四球をもぎ取る打席が増えた。昨年は49四球で出塁率.326だったが、今季は早くも45四球でリーグトップの出塁率.380。長打だけを警戒すれば良い打者ではなく、出塁率が高い強打者に変貌している。

和田コーチとの出会いがプラスに


和田コーチの現役時代のバッティングの構え


 細川の覚醒の要因として、和田一浩打撃コーチの存在が大きい。試合前の練習ではマンツーマン指導を受ける姿が日常の光景となっている。現役時代に30代以降で1901安打をマークし、名球会入りを果たした和田コーチの打撃フォームは独特だった。バットを上段に構えて上下に揺らし、オープンスタンスから左足を高く上げ、体をコマのように回転して振り抜く。ボールを手元まで引きつけて強い打球を放つ打法が可能なのは、背筋の強さとリストの強さが秘訣だった。

 和田コーチは週刊ベースボールのインタビューで、自身の打撃で重視していることについて聞かれて以下のように語っている。

「う〜ん……それを簡単に説明するのはすごく難しいのですが(苦笑)。ただ、順番に階段を上っていくこと。段飛ばしにはいかないということは間違いないと思います。いきなりトップレベルのバッティングをマネしたからといってできるわけではない。まず自分ができることをちょっとずつ増やしていくことからですね。一番の基本は強くバットを振ること。そこからフォームや考え方などを成長させることで伸びていく。まずは基本をやって、自分に合った打ち方や構え方などがあると思うので、それを身に付けていけばいい。僕は今でもその基本の部分を大事にしています」

 細川は和田コーチとの出会いが野球人生で転機になった。球界を代表する強打者にステップアップしている。昨年に続いて2年連続の出場となった球宴では1戦目(エスコンF)に全セの「七番・左翼」でスタメン出場すると、1点を先制してさらに2回無死一、三塁の好機で全パの先発・山崎福也(日本ハム)の初球に投じた直球をとらえ、左翼線に適時二塁打。この回一挙9得点を挙げる猛攻につなげた。

 後半戦も調子を落とすことなく、19試合連続出塁をマークしているが、チームの白星につながらなければ心から喜べない。春先に貯金6で首位に立つ快進撃を見せたが、その後は下降線をたどり現在借金10。白星を積み重ねるために打ち続ける。

写真=BBM
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