「質のいい球を投げる」
3年目の今季はまだ勝利は得られていない赤星
広島が8月28日の
中日戦(バンテリン)で敗れたため、
巨人が首位に浮上した。シーズン終盤は1つも落とせない試合が続く。
戸郷翔征、
山崎伊織、
菅野智之、
グリフィン、
井上温大が先発で安定した投球を続けている中、「6番目の男」として輝きを放ってほしい右腕が
赤星優志だ。
バランスの取れた投球フォームから最速152キロの直球、カーブ、フォーク、カットボール、シュート、スライダーと多彩な球種を操る。先発として期待が大きく、2022、23年と5勝をマーク。野球評論家の
荒木大輔氏は赤星が登板した昨年9月7日の
ヤクルト戦(神宮)での投球を週刊ベースボールのコラムで振り返り、以下のように分析していた。
「しっかりと打者の懐を突くピッチングも見られました。例えば味方が1点を勝ち越した直後の6回裏。一死から長岡(
長岡秀樹)選手に中越えの二塁打を浴び、山田(
山田哲人)選手は遊ゴロに抑え二死二塁で村上(
村上宗隆)選手を打席に迎えた場面です。フォークが2球連続ワンバウンドし、カウント2-0から2球連続で選択したのは内角へのカットボール。これをファウルで平行カウントに戻し、5球目のフォークはワンバウンドでフルカウントになりました。6球目は再びカットボールを内角へ。低めに外れて四球となりましたが、外角一辺倒に偏らないピッチングは幅が広がるという意味でも強みになります」
「一つ気になったのはカウントを取るとき、際どいコースを狙い過ぎていたこと。見逃しでストライクを奪うことばかりではなく、少し甘めでもファウルでカウントをもっと稼げるようになればピッチングは楽になるでしょう。能力は高いので経験を重ねれば1年間、先発ローテーションを担える投手になれるはずなので、楽しみな存在であるのは間違いありません」
他球団のスコアラーも「制球力が良く、質のいい球を投げる。投球スタイルが
村上頌樹(
阪神)と重なります。今年は白星に恵まれていませんが、エースになれる素材だと思います」と高く評価するが、今年の成績を見ると、17試合登板で0勝7敗1ホールド、防御率3.52。チーム事情でさまざまな役割をこなしているが、救援では9試合登板で防御率1.86に対し、先発は8試合登板で0勝7敗、防御率4.29と安定感を欠いている。
味方の援護に恵まれない側面はあるが、相手打線が2、3巡目以降に痛打を浴びる場面が目立つ。白星を重ねる投手は中盤の要所を無失点で抑えきる力がある。赤星が「勝てる投手」になるためには、打者の目が慣れる5回以降に制球力、抑える引き出しを増やすことがポイントになるだろう。
かつて背番号31を背負った右腕
先発、リリーフに奮闘した水野
先発だけでなく、救援でも大事な役割を担っている。8月23日の中日戦(東京ドーム)では、2点ビハインドの7回から登板したが、二死三塁から
細川成也に右前適時打を浴びると、
宇佐見真吾に左中間2ランを被弾。制球が甘く2回3失点と試合の流れを引き寄せる投球ができなかった。
赤星の背番号「31」をつけていた
水野雄仁(現巨人スカウト部長)は、現役時代に先発、救援でフル回転している。プロ4年目の1987年は先発で16試合、中継ぎで8試合登板して10勝4敗、防御率2.61をマーク。
王貞治監督(現
ソフトバンク球団会長)就任4年目で初のリーグ優勝に大きく貢献した。
水野氏は22年6月に週刊ベースボールのインタビューでこう語っている。
「私自身もかつてはドラフト1位で指名されてプロの世界に飛び込みました。ドラフト1位のプレッシャーはもちろんありましたが、それでも何とか一軍でそれなりに活躍することはできた。でも、そうではない選手もいる。私はスカウトの仕事を始めてからまだ日が浅いですが、20年、30年とスカウトをやられている方たちは、一軍に上がることなく消えていった選手たちもたくさん担当してきたはずですし、ツラい思いもしてきたはずです。担当した選手を球団が指名すれば、スカウトは半ば親のようなものですから。だからこそ、担当した選手の活躍が大きな喜びになるのだと思います」
赤星は殻を破り、巨人に不可欠な投手になれるか。与えられた役割でリーグ優勝に導く活躍を見せれば、選手としての価値が一気に上がることは間違いない。
写真=BBM