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【大学野球】監督はプロ挑戦後押し 慶大・清原正吾の今秋目標は「三冠王」 マルチスポーツを経験したからこその適応力

 

この秋、神宮で3本塁打の可能性も


父が西武時代に着け、最も愛着がある背番号3でプレーする慶大・清原。いよいよ今秋、学生ラストシーズンだ[写真=BBM]


 母校・慶大を指揮する堀井哲也監督は昨年1月から全日本大学野球連盟監督会会長であり、今年からは大学日本代表を指揮している。

 第43回プラハベースボールウィーク(チェコ)と、第31回ハーレムベースボールウィーク(オランダ)で優勝。2大会を通じて14日間で11試合という超過密日程を消化し「11戦全勝」という成果を収めた。

 海外遠征で約3週間、チームを留守にした。7月21日の帰国後、慶大の下田グラウンドで真っ先に目が留まったのが右の強打者・清原正吾(4年・慶應義塾高)だったという。

「相当、良くなっている。一番、伸びていると感じました。春は期待料込みで『5本塁打』と言いましたけど、この秋は現実路線で3本は打つのではないかと見ています」

 NPB通算525本塁打を放った清原和博氏(元西武ほか)を父に持つ。小学3年で野球を始めたが、6年を終えると、いったん白球から距離を置いた。慶應普通部ではバレーボール部、慶應義塾高ではアメリカンフットボール部に在籍。「父がいろいろあって、プレッシャーもかなり大きく、野球から目を背けたくなってしまったのがあります」。大学で再び野球の道へ。「長男としての思いが芽生え、最後の学生生活で恩返し、親孝行がしたいと考えました。父と母を喜ばせたい思いが、根底にあります。そこで『もう1回、頑張ろう』と、大学で野球部に入部しました」。

 硬式野球は初めて。血のにじむような努力を重ね、6年の空白を埋めた。4年春、一塁のレギュラーを奪取。全13試合中12試合で「四番・一塁」で先発出場し、チームトップタイの打率.269、トップの7打点。記者投票のベストナインでは、14票中13票を集めた。中学、高校で野球を経験していない選手がタイトル奪取とは「奇跡的」と言っていい。

 父・和博さんは毎試合、神宮球場のスタンドで観戦。祈るように息子の活躍を願っているように見えた。春のリーグ戦後、家族4人で会う機会があった。そこで、父から祝福されたという。清原は笑顔で明かした。

「『おめでとう!』と言うのと『まだまだここからだぞ!』と。そして『正直、ここまで来られるとは思わなかった』とも言われて、本当にうれしかったです。幸せな時間でした。いよいよラストシーズンなので後悔なく、家族全員を喜ばせたい気持ち。秋こそは、ホームランを打ちたいです」

「すべての可能性に対して『ない』とは言えない」


 大学4年秋。清原は一般の就職活動をしていない。年始から「野球継続」を基本線に「プロ志望」を表明。ただ、強調していたのは「この1年を全うする。1日たりとも妥協せずに練習を重ねていく」。全力を傾けた結果として、周囲がどのような評価をするか。あくまでも、目の前の取り組みに集中してきた。

「この4年間をやり切って、(プロが)無理ならば無理、と。区切りをつけたい」

 実際にNPBへの「思い」はどれほどあるのか。大学卒業後の進路についてあらためて聞くと、慎重に言葉を選んだ。

「まだ、家族とも話せていない。僕の独断では決められない。僕の意見もありますが、話し合った上で将来を決めたい。NPB? 今のままでは到底、手の届かない世界。目指す分には、口で言えますけど……。プロの厳しさは父親が一番、知っていますし……。選択肢を聞かれればプロ、社会人、独立リーグ、就職、留学。すべての可能性に対して『ない』とは言えない状況です。ただ、一つだけ言えるのは、この4年秋の練習を怠ることはしたくない。秋の最後までしっかりやり切りたい」

 堀井監督は清原に無限大の可能性を感じている。だからこそ、プロへの挑戦を後押しする。

「この春のシーズンを見ていても、試合を重ねるごとに打撃の内容が良くなっているんです。硬式野球を始めて4年。伸びシロがあるので、清原には『行けるところまで行け!』と言っています。大学を卒業して、サラリーマンは似合わないと思うんです。『とにかく今は野球をやれ!』と。秋次第でしょう」

 他の競技を経験してきたアスリートが、ブランクを経て、野球で成功を収める。堀井監督は清原にかつて例のない「パイオニア」として、多くを発信してほしいと願っている。

 今春は本職の一塁手以外に、チーム事情で右翼手、二塁手をこなした器用さがある。マルチスポーツを経験してきたからこその適応力は、清原にしかない武器である。父からもらった宝物のファーストミットのほか、内野用、外野用のグラブも携え、スタンバイする。愛用する父モデルの900グラムのバットでは今秋、打率、本塁打、打点でトップに立つ「三冠王」を目標とする。春のベストナインはチームがV逸し、個人的にも満足いく数字ではなく、心の底から喜べなかった。父が西武時代に背負い、愛着ある背番号3を着ける清原は、天皇杯奪還へ導いた上で「文句なしのベストナイン」で、有終の美を飾るつもりだ。

文=岡本朋祐
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