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三浦大輔監督に一喝された右腕は「意外な経歴」 奮起期待される「DeNAの熱男」は

 

負けん気の強い投手


今季ここまで33試合にリリーフ登板しているウィック


 優勝争いから脱落しかけたDeNAだが、まだあきらめていない。現在貯金3で首位・巨人と4.5ゲーム差。直接対決が7試合残っているだけに、勝ち続ければ逆転優勝の機運が高まる。

 今季は連勝と連敗が続く出入りの激しい戦いが続いた。優勝争いは巨人、広島阪神の混戦に。DeNAは貧打に苦しんだ7月下旬から2019年以来5年ぶりの9連敗。借金が5にふくらんで万事休すと思われたが、ある試合がチームの流れを変える分岐点となった。8月27日の阪神戦(横浜)。3点リードの7回にローワン・ウィックは救援登板したが、制球が定まらず連続四球と安打で無死満塁のピンチを招いた。三浦大輔監督が交代を告げるためにマウンドへ向かうと、ウィックは交代を拒否するような態度を見せた。この態度を見た三浦監督が厳しい表情で「Change!(交代)」と一喝。ウィックの腰を押し出す形でマウンドから降ろした。

 温厚な性格で知られる指揮官は現役時代から怒りを表に出したことが皆無に近い。珍しい光景に、ナインの表情が引き締まった。この試合を10対4で快勝し、その後も広島に同一カード3連勝を飾るなど現在6連勝中。貯金を3に増やし、上位3球団に一気に接近している。

「負けん気の強い投手であの場面は自分へのふがいなさもあり、カッカしていたと思います。あの態度に賛否両論ありましたが、三浦監督とわだかまりはありません。シーズン終盤は安定した投球を見せてもらわなければ困る。それだけの能力を持った投手ですから。制球力が課題なのでいかに改善できるかがポイントになります」(スポーツ紙記者)

捕手としてプロの道へ


 来日1年目の右腕は異色の経歴だ。カージナルスに捕手として入団すると、外野手に回り、15年に投手に転向する。190cmの長身から平均球速が150キロを超える直球と縦に大きく曲がるナックルカーブを武器に、18年にパドレスでメジャーデビューを飾ると、19年からカブスでリリーバーとして活躍した。22年は64試合登板で4勝7敗9セーブ4ホールド、防御率4.22をマーク。メジャー通算146登板の実績を引っさげ、DeNAに入団した。

 守護神候補の一人でもあったが、4月3日の阪神戦(横浜)で8回から登板すると近本光司に被弾するなど3安打2失点と一死しか取れずに降板。登録抹消されて1カ月半の間、ファームで調整した。高めの直球一辺倒では、バットを短く持ってファウルでカットされる。低めの直球を効果的に使うため、配球の組み立てを見直す必要があった。5月31日に一軍昇格すると、夏場以降は回またぎで登板する機会が目立つ。山崎康晃伊勢大夢ら実績のある投手たちが本調子でなく、救援陣の台所事情が苦しい中、どんな試合展開でもマウンドに上がる姿が頼もしい。

逆転Vへ指揮官は熱い思い


 9月4日の広島戦(横浜)で名前がコールされると、スタンドからどよめきと歓声が起きた。三浦監督から一喝を受けて以来1週間ぶりの登板。ウィックはヒゲをそった風貌に変化していた。5点リードの7回に先頭の菊池涼介を3球すべて高めの直球で空振り三振、佐藤啓介を遊飛に仕留めると、秋山翔吾の強烈な一ゴロはタイラー・オースティンがダイビングキャッチで好捕。三者凡退に抑えた。8回も続投して二死一、二塁のピンチを招いたが、堂林翔太をナックルカーブで遊ゴロに打ち取り無失点。一塁ベンチに引き揚げると、三浦監督とコミュニケーションを取る姿が見られた。

 三浦監督は16年に現役引退する際、「やっと横浜DeNAベイスターズがいいチームになっただろとみんなに自慢できます」と語っていた。今年8月に週刊ベースボールのインタビューでその真意を聞かれた際、以下のように答えている。

「そのときに言った言葉は今でも覚えています。僕自身いろいろな経験をしてきた中で、横浜から去っていく選手もたくさん見ましたし、以前は横浜に行きたくないという選手の声も聞きました。最下位の常連のような時期も経験しましたし。それが球団、選手、スタッフ、コーチ、みんなが変わってきて、他球団の選手からも横浜に行きたいという言葉が聞こえてくるようになって良かったなという思いでした。そして、引退後にチームへ戻ってきてからはさらに良いチームにしたい、強いチームにしたい、優勝したいという思いがまた強まりました。当然、今でもその気持ちは強く持っています」

 監督就任4年目。逆転優勝で熱い思いを結実させられるか。

写真=BBM
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