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驚きの采配がズバズバ的中でV奪回へ…巨人・阿部慎之助監督に「名将になれる」高評価が

 

スキを見せない起用法


広島3連戦の初戦を制しファンにVサインの阿部監督


 首位の巨人が9月13日のヤクルト戦(神宮)に2対7で敗れた。連勝は3で止まり、2位に浮上した阪神と3ゲーム差に縮まったが、優勝争いで有利な立場であることは変わらない。阿部慎之助監督は今後の戦いに向け、頭脳をフル回転させているだろう。

 スポーツ紙デスクは、「常に先を見据え、勝利に向けて用意周到に準備して戦っている。象徴的だったのが敵地・マツダ広島で戦った広島との首位攻防戦でした。阿部監督の勝負師としてのタクトが冴え渡った。スキを見せない起用法は、名将になれる雰囲気を感じましたね」と手腕を高く評価する。

 9月10日からの広島3連戦。マツダ広島ではこの試合まで1勝4敗1分けと苦戦していた。一昨年、昨年もマツダ広島で負け越して「鬼門」になっていた。1ゲーム差で追いかけてくる広島は巨人より3試合多く残っていた。V奪回に向けて重要な試合で、指揮官は大胆な采配を見せる。ベテランの坂本勇人を6月12日の楽天戦(楽天モバイル)以来3カ月ぶりとなる「二番・三塁」で先発起用。この策が見事に的中する。10日の1戦目で森下暢仁から初回に先制アーチを放つなどマルチ安打。3試合で計12打数6安打とチャンスメーカーとしての役割を十二分に果たした。

 天王山に向けて先発ローテーションも変更し、今季最も安定している菅野智之が中8日の登板で5回1安打無失点の快投。3点差に突き放した6回二死一、三塁の好機で菅野に打席が回ってくると、迷わずに秋広優人を代打で起用した。これも驚きの一手だったが、秋広が左前適時打で突き放して期待に応えた。6対1で勝利を飾ると、勢いが加速した。

 11日の2戦目は2点差を追いかける9回に一挙9得点の猛攻で逆転勝利。12日の3戦目は中4日で先発した戸郷翔征が6回5安打無失点とエースにふさわしい投球を見せると、3点リードの8回に二死一、二塁のピンチを迎えて球場がどよめく継投策が。バルドナードに代えて守護神・大勢を投入。一発が出れば同点に追いつかれる場面で、末包昇大を投ゴロに仕留めると、9回も三者凡退で締めくくり5対0と快勝した。マツダ広島で同一カード3連勝は、リーグ優勝した2020年以来4年ぶりだった。

捕手の感性を生かして


 広島3連戦に限らずシーズン終盤に入り、阿部監督の采配が次々に的中している。現役時代は洞察力に長けた捕手として定評があったが、指揮官としてもその感性が生かされている。9月8日のDeNA戦(東京ドーム)。1点差を追いかける9回。大勢をマウンドに送り無失点で抑えた。ビハインドの展開に守護神を送った起用法に、「この試合を絶対に勝つ」という強いメッセージをナインは感じ取っただろう。直後の攻撃で二死一、二塁と好機をつくると、代打起用した中山礼都が右前に運ぶ適時打。土壇場で試合を振り出しに戻すと、延長12回二死で途中出場のオコエ瑠偉がサヨナラ弾を放ち、劇的な勝利を飾った。

伝統と向き合う覚悟


 今季が監督就任1年目。2年連続Bクラスに低迷し、原辰徳前監督が昨季限りで退任し、次期監督に指名された。大きな重圧に襲われたことは想像に難くない。巨人の球団創設90周年のメモリアルイヤーを記念して6月3日に発売された『ジャイアンツ90年史』(小社刊)で、「身震いしましたね、本当に。何か今まで感じたことのない重圧というか、そういうもの感じました。2年連続Bクラスだったチームを何とかするというのは、もちろん並大抵の精神力ではできないことだと分かっていたので。そうした重圧、不安には駆られていました」と振り返っている。

 だが、その重圧を受け止めて伝統と向き合う覚悟はできていた。

「最後に来てしまうのは、やっぱり『勝たないと』と自分で思ってしまうので。『勝ってなんぼだな』と思ってしまう。その前に、その過程でいろいろなことがあるんですけど。やはりそこには先ほども出た『常勝』というのが、一生ついてくるのかなと思いますね。時代が移り変わって、戦力の均衡化が進んでいる中で、もしかしたら『常勝』というのは現実的ではなくなってきているのかもしれない。それでも、90年という歴史の中で、僕らが生まれる前から先人たちがチームを支え、つなげてきてくれたものがある。やはり、それはつなげていかなければならない。その使命感はあります」

 4年ぶりのV奪回へ。全員野球でラストスパートを駆ける。

写真=BBM
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