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今オフのFA市場で一番人気? 人的補償なしで獲得できる「最多勝右腕」は

 

強固な先発陣で首位快走


9月10日の楽天戦で5勝目を挙げた石川


 首位を快走するソフトバンク。9月14日のオリックス戦(京セラドーム)で10対1と圧勝して5連勝に。日本ハムが敗れたため、マジックを8に減らした。

 リーグトップの544得点をたたき出している強力打線が相手に脅威を与えているが、投手陣の働きぶりも見逃せない。今季のチーム防御率2.57はリーグトップ。昨年がリーグ4位の3.27で、規定投球数回に到達した投手が1人もいなかったことを考えると、大幅に改善されている。救援から先発に配置転換されたモイネロが11勝、大津亮介が6勝をマーク。有原航平が12勝、大関友久スチュワート・ジュニアが共に8勝と強固な先発ローテを形成している。

 その中で、石川柊太は13試合登板で5勝2敗、防御率2.49をマーク。春先は先発でスタートしたが、チーム事情で救援に回り、再び先発に配置転換された。難しい調整となったが、8月以降は4試合登板で3勝0敗、防御率1.33。10日の楽天戦(楽天モバイル)は6回1/3を6安打無四球1失点の快投で5勝目をマーク。ただ、勝利を挙げただけでは満足しない。7回に先頭打者・鈴木大地の打球が右足に直撃してイニング途中で降板となり、「後のピッチャーに申し訳ないことをしました。この悔しさを次にぶつけけれるようにしていきたいなと思います」と試合後のお立ち台で表情を引き締めていた。

献身的な姿勢でチームを支える


 育成入団でブレークした野球人生は、順風満帆ではない。プロ3年目の16年シーズン途中に支配下昇格すると、17年に8勝、翌18年に自己最多の13勝をマーク。コロナ禍の影響により、120試合制で開催された20年に11勝3敗、防御率2.42の好成績で最多勝、最高勝率(.786)のタイトルを獲得した。しかし、21年以降は6勝、7勝、4勝と制球が乱れて崩れるケースが目立った。今年は先発枠から外れて開幕二軍スタートに。悔しい思いは当然あったはずだが、石川は前を見据えていた。

「倉野さん(倉野信次投手コーチチーフ兼ヘッドコーディネーター)が『競争はここまで』という話をされたんです。自分の中ではどこでもチームの力になればいいなって思うし、誰かが打たれていたら励ませばいいし、抑えたら喜び合えばいい」

「自分は日本一に向かって味方同士で戦い合うというよりは、自分を高めていって、どういうピースになっていくか、というつもりで野球をやっているので」

 開幕をファームで迎えて精神的に落ち込む次元の投手ではない。チームに必要とされる役割で自分の最大限のパフォーマンスを発揮し、勝利に貢献する。今年の石川は先発陣の主役ではないが、献身的な姿勢で支えている。

「心のエネルギーを燃やして」


 今年の6月12日に国内FA権を取得。推定年俸1億2000万円で、人的補償を必要としないCランクとみられるため、権利を行使した場合は複数球団による争奪戦は必至だ。他球団の編成担当は「石川が今オフにFA権を行使すれば、一番人気でしょう。先発ローテーションに入るという次元でなく、中心で稼働することが期待できる投手です」と高い評価を口にする。

 ポスティングシステムは球団が認めなければ実現しないが、メジャー移籍という選択肢もある。石川はメジャー挑戦について、「現実的な問題はともかく、プロ野球選手はその気持ちをなくしてはダメだと思うんです」と否定していない。海の向こうでは大きな刺激を受ける2人の右腕がプレーしている。ソフトバンクに同じ育成入団から大ブレークし、親交が深い千賀滉大(メッツ)、千賀を通じて一緒に自主トレを行ったダルビッシュ有(パドレス)だ。

「刺激をもらうことでハードルが上がる。そこにアタックしていくだけでも大事なことなんじゃないかと思うんです。可能性の大小ではない。そもそも僕は学生のころから針の穴に細い糸を通すような、そんな小さな可能性を狙って戦ってきた人間です。あのころの気持ちを今も持ちながらやれたらいいですよね。心のエネルギーを燃やして」

 現在は目の前の戦いに集中している。4年ぶりのリーグ制覇は見えてきたが、CS、日本シリーズと頂点を目指しての戦いは続く。先発のマウンドが似合うが、どんな役割でも右腕を振り続ける。

写真=BBM
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