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【首都大学リポート】4試合で13打数7安打、打率.538 4年生で素材開花の“苦労人”桜美林大・廣瀬航大

 

絶好調のバッティング


桜美林大は開幕4連敗。残り3カードで五番・廣瀬がチーム浮上の起爆剤となる[写真=大平明]


【9月15日】首都大学一部リーグ戦
帝京大4-1桜美林大
(帝京大2勝)

 首都大学リーグ第2週2日目。開幕3連敗の桜美林大が帝京大2回戦に臨んだ。この試合で五番・DHに抜てきされたのが廣瀬航大(4年・中越高)。廣瀬は開幕3試合で七番として、9打数5安打と打撃好調だった。

「練習は特に変えたところはないのですが、手投げのトスバッティングで振り込んできました。唯一、4年生になってから取り入れたのは置きティーで、バットとボールの当たり方や打球の角度を意識しています」

 打順を上げたこの一戦では、好機で迎えた第4打席で左飛。左翼手の後方への当たりだったが「あの場面で1本が出ないと意味がない。ランナーを置いたところでヒットが打てるように練習したい」と反省を口にしている。

 第1打席は「もともと早打ちなのでネクストではピッチャーの投げるボールをよく見て、初球から合わせられるように準備しています」と初球を叩いて、ファーストの左へ。一塁手が逆シングルのミットでなんとか触れたものの、打球はそのままライトへ抜けていくヒット。第3打席はセンターへはじき返して2本目の安打を記録し「1本目のヒットは捕られてしまうかと思ったんですけれど、抜けてよかったです。2本目は真ん中寄りに抜けてきた変化球をうまく打てました」と、これで今シーズンは13打数7安打、打率.538と高い数字を残している。

「この3年間、苦しい思いをしてきましたし、4年生になったらチームのために貢献したいと考えていたので、その思いが打たせてくれているのではないかと思います」

中越高で夏の甲子園出場


 中越高時代は2018年夏の甲子園に出場。慶応高との初戦は、1年生ながら七番・二塁で先発し「慶応高の応援がすごくて、ピッチャーと会話もできないくらいでした」と振り返る。

 攻撃面では「相手の左腕・生井惇己投手(現・日立製作所)の速い真っすぐに力負けしないように打ちにいきました」と2安打を放つ活躍。惜しくもサヨナラで敗れたが「目標としていた甲子園という大舞台に立てたことは、これからの野球人生にも生かしていけると感じました」と振り返る。

 3年夏はコロナ禍で甲子園をかけた地方大会、全国大会が中止となったが、主将としてチームを引っ張り、新潟県高野連主催の独自大会を優勝で、有終の美を飾った。

「自分たちの世代は3年生が18人と例年よりも少なくて、周囲から『弱い』と言われていたのですが勝ち切ることができてうれしかったです」

野球人生を変えた一打


 桜美林大には高校の先輩で、21年春の首都大学リーグで最高殊勲選手(MVP)を獲得している投手の山本雅樹(現:ロキテクノ富山)に誘われたのがきっかけで進学。しかし、入部直後の4月にヘルニアとなり9月まではプレーすることができず。さらに「大学はピッチャーのレベルが高く、簡単に打てるほど甘くなかった」とずっと試行錯誤を繰り返してきた3年間だった。きっかけをつかんだのはこの春のリーグ戦も最終盤にさしかかった第7週、東海大1回戦だ。

 6回裏の二死二塁で代打起用されると「あのときは、まだ進路が決まっていなかったので『人生最後の打席』だと思って入りました」と覚悟を決めた一振りで、センターへ自身のリーグ戦初安打となるタイムリー二塁打。8回裏にもライトへ2打席連続となる適時二塁打を放ち、2安打2打点の活躍。その後、社会人チームに内定して野球を続けることも決まり、まさに自身の人生を切り拓くターニングポイントの打席となった。

 藤原悠太郎監督は「練習を積み重ねてレギュラーを獲った選手。コンタクト能力が高く、今は状況に応じたバッティングもできるようになってきました。試合に出られなかったときもスタンドでの振る舞いは立派でしたし、応援もよくやってくれました。今季は副主将としてチームを支えてくれています」とグラウンドの内外で高い評価をしている。

 桜美林大は帝京大2回戦を1対4で落とし、開幕4連敗と苦しい立場となっている。だが、廣瀬は残り3カードへ向けて前を向く。

「来週は空き週になるのでやるべきことをやって、しっかりと練習していきたい。勝ち点は2つ落としましたが、今季は3位まで関東大会に出ることができるので、関東大会とその先にある明治神宮大会を目指し、チャンスで一本を打ってチームに貢献したい」

 4年生になって、素材を開花させた苦労人。最後は良い形で、大学野球を締めくくりたい。

文=大平明
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