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阪神逆転Vのキーマン 他球団が「高橋宏斗と同じぐらい攻略困難」と評す左腕は

 

猛スパートをかけている阪神


一軍マウンで力のあるピッチングを見せている高橋


 逆転優勝を狙う阪神が猛スパートをかけている。9月に入って10勝3敗。現在4連勝中で首位・巨人を2ゲーム差で追いかけている。その中で、一軍に復帰した高橋遥人の存在が大きい。

 8月11日に一軍昇格し、4試合登板で4勝0敗、防御率1.52。緊張感あふれる試合が続くが、歩んできた苦しい道のりが苦しかった分、再び投げられる喜びにあふれている。2022年にトミー・ジョン手術を受けて復活を目指したが、昨年に左肩に異変を覚え、「左尺骨短縮術」、「左肩関節鏡視下クリーニング術」を受けて2年連続一軍登板なし。育成枠で再契約を結び、はい上がった。

 まだ、完全復調とは言えない。登板間隔を空け、投球数も90球前後と無理をさせない。だが、万全でなくても白星を重ねる姿にすごみを感じる。9月13日の広島戦(甲子園)は、5回2/3を投げて4安打3失点。初回に先制点を許し、4点リードの6回も無死満塁のピンチを招いた。堂林翔太の左前適時打、坂倉将吾の左犠飛で2点を失って降板したが、救援陣が踏ん張り、4勝目を手にした。

 他球団の首脳陣は、「能力の高さは高橋宏斗(中日)と双璧でしょう。状態が良い時は同じぐらい攻略が困難です。直球は145キロ前後と決して速くないが、浮き上がってくる軌道で高めのコースで空振りを取れる。その直球とあまり球速差がないツーシームも厄介です。直球だと思って振りにいくと、落ちるので球が消えた感覚になる」

恐ろしいまでのキレ味


 野球評論家の伊原春樹氏も週刊ベースボールのコラムで、阪神逆転優勝のキーマンに高橋の名を挙げている。

「残り試合も少なくなる中、今後は一戦一戦の重みが非常に増してくる。セの覇権を奪うために当たり前のことではあるが、まずは勝利を計算できる先発で確実に勝ちを重ねることが重要になってくるだろう。巨人では戸郷翔征菅野智之、広島では床田寛樹森下暢仁、阪神では才木浩人、高橋遥人、DeNA東克樹で、さらにもう一人は見当たらない。この中でも私が一番注目しているのは高橋だ。左肘のトミー・ジョン手術からリハビリを経て、8月11日の広島戦(京セラドーム)で1009日ぶりの一軍マウンドへ。5回4安打無失点で勝利を飾ると23日の広島戦(マツダ広島)、9月3日の中日戦(甲子園)でも白星。ここまで3試合の先発で3勝、防御率0.50と素晴らしいピッチングを見せている」

「ストレートの平均球速は145.5キロだが、恐ろしいまでのキレ味がある。低いリリースポイントから浮き上がるような軌道で打者は差し込まれてしまう。加えて、スライダー、フォーク、カットボールなど、すべての球種の質が高い。攻略が難しい投手で、他球団はできれば対戦したくないと思っているはずだ」

復活劇でVに導いた右腕


右肘のトミー・ジョン手術から復活した荒木


 復活劇で優勝に導いた救世主で思い出すのが、かつてヤクルトでプレーした荒木大輔氏だ。1988年のシーズン途中に右肘痛を発症し、トミー・ジョン手術を受けたが、リハビリ中に腱を切って翌年に再手術。椎間板ヘルニアも発症するなど89年から3年間一軍登板なしに終わった。92年の9月に1541日ぶりの復帰登板を果たすと、10月3日の中日戦に先発して7回無失点で4年ぶりの白星をマーク。同月10日の阪神戦でも5回1失点で2勝目を挙げ、14年ぶりのリーグ優勝を飾った。93年も7年ぶりの完封勝利を挙げるなど、8勝4敗、防御率3.92をマーク。日本シリーズ・西武戦では初戦に先発して白星を挙げ、日本一に貢献した。

 荒木氏は故障から復帰後、マウンド上で心境が以前と変化したことを週刊ベースボールのインタビューで明かしていた。

「ただただ、野球をできることが楽しかった。遠足前の子どもじゃないけど、ワクワクする気持ちばかり。ケガする前は『打たれたらどうしよう』『明日は大丈夫かな』という不安の気持ちが大きかったんですよね。だけど復帰後は打たれる怖さがまったくない。どんなにピンチになってもなんとも思わなくなりましたね。極端に言えば草野球でプレーしているような気持ちですよ(笑)。ピンチで落合博満さんを迎えても、『ここで落合と対決だよ』と思っていましたからね」

 同じように故障から復帰した高橋がどのような心境で打者と対峙しているか、気になるところだ。

写真=BBM
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