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マジック6の巨人 他球団が警戒「岡本和真に匹敵する厄介な天才打者」は

 

9月は打率4割近くをマーク


9月に入り、打撃の状態が急上昇している吉川


 大きな白星だ。巨人が9月20日の広島戦(マツダ広島)で8対2と快勝し、引き分けを挟んで4連勝。2位の阪神DeNAに敗れたため3ゲーム差に広げ、優勝マジックを一気に2つ減らして「6」にした。

 打線に火をつけたのが、打撃絶好調の吉川尚輝だった。初回に右前打で22試合連続出塁とすると、3回二死一、二塁で左翼線にはじき返す先制の2点適時二塁打。7回も一死三塁の好機で中前適時打を放ち、猛打賞3打点の大活躍で勝利に貢献した。9月の月間成績は打率.397、2本塁打、10打点で得点圏打率.417。四番の岡本和真と共に打線を牽引している。

 他球団の首脳陣は、「完全にゾーンに入っている感覚じゃないですかね。どこに投げてもヒットゾーンに飛ばすので対策が難しい。岡本に匹敵する厄介な打者です。もともと野球センスは天才的なモノを感じる。集中力が高まったことで、可能性が引き出されているように感じます」と指摘する。

走塁、守備も高いレベル


 2020年から二塁の定位置をつかんだ吉川だが、持っている能力を最大限発揮できているとは言えなかった。昨年は132試合出場で打率.256、7本塁打、36打点。4盗塁と一昨年の16盗塁から減少した。今季から就任した阿部慎之助監督は開幕前に、一塁・岡本和真、三塁・坂本勇人、遊撃・門脇誠のスタメン起用を明言したが、吉川については出場機会を保証しなかった。ここで満足してもらったら困る。期待の高さの裏付けと言えるだろう。

 そして、シーズンが始まると不可欠な存在になった。坂本、門脇が打撃不振でスタメンを外れることが少なくない中、攻守でチームを牽引。勝負どころの9月で輝きがさらに増す。9月19日のDeNA戦(東京ドーム)では初回無死一、三塁の好機で、左腕・ケイのスライダーを振り抜き、中堅の頭を越える先制の適時二塁打。さらに一死一、二塁の好機でモンテスの一邪飛の間に、二塁走者でタッチアップ。意表を突く好走塁でオースティンの悪送球を誘うと、一気に本塁へ生還した。

 球界トップクラスの二塁の守備でも、再三の好守でチームを救っている。今季のシーズン途中に西武にトレード移籍した松原聖弥は、吉川のすごさについて以前にこう語っていた。

「守備範囲はちょっとズバ抜けている。尚輝がセカンドで、僕がライトを守ることが多いんですけど、『あ、これ、ライト前抜けてくるわ』という打球が全然抜けてこない。これはちゃうな、と毎回思わされます」

大学時代にはアルバイトも


 雄弁に語ってチームを引っ張るタイプではないが、職人気質の副将はチームに安心感を与える。ドラフト1位で巨人に入団したが、田中正義(現日本ハム)、佐々木千隼(現DeNA)の当たりクジと縁がなく、「外れ外れ1位」だった。注目度の高い東京六大学リーグや東都リーグではなく、地元の中京学院大で4年間を過ごしたことは大きな財産になっている。野球以外にも、社会経験で多くのことを学んだ。週刊ベースボールの取材でこう振り返っている。
 
「中京学院大時代、みんな大学近くのアパートでひとり暮らしをしていて、部員の9割がアルバイトをしていました。僕はスーパーの総菜並べや土木工事をしました。電柱を立てる工事ではスコップで穴を掘ってましたよ。僕がスコップで50センチくらい穴を掘って、そこから親方が2メートルぐらい掘ります。いいトレーニングになりましたね(笑)。カー用品店でも働きました。岐阜のほうは雪がけっこう降るのでスタッドレスタイヤの交換が多く、僕は夏タイヤを袋詰めする作業を延々とやっていましたね。アルバイトでは言葉遣いやあいさつ、何よりもお金を稼ぐ大変さを知ることができたので、経験してよかったと思ってます」

 華やかなプロ野球の世界に入っても、地に足がついた素朴な性格は変わらず、ファンの人気は根強い。4年ぶりのV奪回へ。覚醒した天才打者がチームの主役になろうとしている。

写真=BBM
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