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中日は下位低迷も打撃絶好調 立浪和義監督に才能を見出された「スピードスター」は

 

打線をけん引するトップバッター


9月21日のヤクルト戦で4回に勝ち越し打を放った


 CS進出の可能性が消滅したが、このまま終わるわけにはいかない。中日が9月21日のヤクルト戦(神宮)で7対6と両軍25安打の乱打戦を制し、最下位を脱出した。

 打線を牽引したのが、「一番・中堅」でスタメン出場した岡林勇希だった。初回に中前打で出塁し、2点先制の口火を切ると、4対4で迎えた4回二死二塁で左腕・山野太一の直球を左前にはじき返す勝ち越しの一打。8月23日の巨人戦(東京ドーム)以来、1カ月ぶりの適時打が決勝打となった。

 立浪和義監督が成績不振の責任を取り、18日に今季限りでの退任を発表。岡林は指揮官に才能を見出された選手だった。前年は24試合出場にとどまったが、就任1年目の2022年に開幕から外野のレギュラーに抜擢され、142試合出場で打率.291、0本塁打、32打点、24盗塁をマーク。10本の三塁打はリーグ最多で、最多安打(161本)のタイトルを獲得した。昨年は全143試合フルイニング出場し、打率.279、3本塁打、31打点、12盗塁。最多安打は1本差で届かなかったが、7月から8月にかけて29試合連続試合安打の球団記録を樹立した。スピード感あふれるプレーで相手に重圧をかける。球際に強い外野の守備力も評価され、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を2年連続受賞した。

右肩炎症のため開幕二軍スタート


 シーズン終了後のアジアチャンピオンシップ2023で侍ジャパンに選出され、新たに背番号「1」を背負うことに。今年2月の春季キャンプを取材した野球評論家のデーブ大久保氏は、「何より今年から『1』の背番号を背負う岡林勇希が一番にいることは非常に大きいです。デーブ的には阪神近本光司にも引けを取らない一番打者です。まだまだ若いですから、近本以上の一番打者になる可能性は高いですし、キャンプを見ていても『1』の風格が出てきているなあ、と感じました」と週刊ベースボールのコラムで絶賛していた。

 22歳と若いが期待の若手という位置づけではなく、主力として計算される立場になった。立浪監督は「この2年、本当に頑張ってくれている選手ですが、出塁率、盗塁数、左投手の変化球対策など課題もまだ多い。ただ体力もあるし、練習もできる選手なので、そんなには心配していないです。何かコツをつかめばグンと伸びているところまで来ているので、いい一番になると期待しています」とさらなる飛躍を期待していた。だが、待ち受けていたのは試練だった。

 右肩炎症のため開幕二軍スタートに。2年連続最下位から巻き返しを狙うチームは春先に10勝3敗1分けの好ダッシュで2891日ぶりに単独首位に浮上し、岡林は4月19日に一軍昇格した。リードオフマンとしてさらにチームを勢いづけたかったが、コンディションが万全でないのか打撃の状態がなかなか上がってこない。7月下旬まで打率1割台に低迷。スタメンを外れることも少なくなかった。チームも失速して借金が積み重なっていく。

8月から打撃が上昇


 打撃不振でもファームに落とさず、復調を望んでいた指揮官の期待に応えたい。8月は打率.323、出塁率.363と状態を上げると、今月は打率.359、出塁率.431と絶好調だ。下半身の粘りで緩急に崩されず、ヒットゾーンに飛ばす持ち前の打撃を取り戻し、9月16日の巨人戦(東京ドーム)で今季7度目の猛打賞をマーク。3年連続100安打に到達した。打率も.260に上昇している。

 立浪監督は開幕前に週刊ベースボールのインタビューで、「ずっとBクラスが続いて低迷しているチームですから、やはり選手を変えていかないと変わっていかない。それは1年目にすごく感じたことです。その中でもすぐに結果を出していかなければならないのですが、変えたからと言ってそんなにすぐに結果が出るものでもない。でもそこは批判覚悟でね。結果が出なければ言われるのは当然ですし、それは監督の責任ですから。今年は腹をくくってやりますよ」と語っていた。

 チーム再建に向けて尽力したが、志半ばでチームを去ることに。岡林も責任を感じているだろう。シーズンは残り7試合。立浪監督に恩返しし、来季につなげるためにも最後まで駆け抜ける。

写真=BBM
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