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配球の読みは超一流 他球団のファンからも愛される「巨人の天才打者」は

 

経験豊富なベテラン


チームでの存在感は抜群の長野


 リーグ優勝にマジック「4」としている巨人。敵地・甲子園で阪神との首位攻防戦を1勝1敗で、2ゲーム差のままにしたことで覇権奪回に大きく前進した。もちろん、隙を見せることは許されない。残り6試合。頼もしい存在が経験豊富なベテランの長野久義だ。

 重要な戦いでスタメンに抜擢されたことが、首脳陣の信頼の厚さを物語っている。9月22日の阪神戦(甲子園)に「五番・左翼」で30試合ぶりにスタメン出場。2回無死一塁で、才木浩人のスライダーを逆方向にはじき返す右前打で好機を広げると、1点差を追いかける4回一死一塁で、才木浩人がフルカウントに投じた外角低め149キロ直球に反応した。ランエンドヒットを成功させる中前打で一、三塁と好機を拡大。マルチ安打は5月8日の中日戦(バンテリン)以来4カ月ぶりだった。ただ、試合後に笑顔はない。6回無死満塁の好機で内角の直球に差しこまれて投飛。後続も倒れて無得点に終わると、7回以降も阪神の投手陣に抑え込まれて完封負けを喫した。

2022年オフに巨人復帰


 新人王、首位打者、最多安打とタイトルを獲得し、巨人の中心選手として活躍。「チョーさん」の愛称で親しまれ、謙虚な振る舞いで他球団のファンにも愛された。2018年は打率.290、13本塁打で長嶋茂雄原辰徳に次いで球団史上歴代3位の入団初年度から9年連続100安打を達成したが、同年オフにFAで加入した丸佳浩の人的補償で広島に移籍。大きな波紋を呼んだが、広島でもナインを気遣い、フォア・ザ・チームに徹する姿勢ですぐに信頼を得た。4年間プレーし、22年オフに無償トレードで巨人に復帰。広島、巨人で現役時代にプレーし、11年から巨人の投手コーチを4年間務めた野球評論家の川口和久氏は、週刊ベースボールのコラムで以下のように語っていた。

「ご存じのとおり、長野は巨人にこだわり、ドラフトで2度、他球団を断ってまで入って来た選手でもある。現役の最終盤、巨人のユニフォームで勝負できて本当によかったと思う。俺は彼とコーチと選手として何年か一緒にやったが、明るい性格で人当たりもよく、人間性は抜群。なんというのかな、人の気持ちを受け止めてくれる器の大きな男だった。首位打者も獲っている打撃に関してもこだわりの男で、ベースから離れて構え、スイングアークを大きく取るスタイルを貫いた。打撃コーチが何度も修正を指示していたが、絶対に変えなかった」

「実際、巨人に必要な戦力となる可能性はある。4位に低迷した巨人の外野は丸を除けば固定できているとは言えず、若手や外国人を起用するにしても経験豊富なバックアップは絶対に必要だ。後の勝負どころでの代打も泣き所だった。原辰徳監督も言っていたが、亀井善行がいたらと思う場面は何度もあった。長野はスタメンで4打席勝負というタイプではあったが、それはもう言える年齢ではない。チームが与えたチャンスをいかに生かし、結果を出すことができるか。それが次のチャンスにもつながっていくと思う」

打てばチームが盛り上がる


 昨年は75試合出場で打率.259、6本塁打、19打点。代打で34打数10安打、打率.294、1本塁打、6打点の好成績を残した。

 昨年一軍打撃チーフコーチを務めたデーブ大久保氏は、「チョーさんの読みは、見ていてやはり超一流です。昔の人で例えるなら、巨人の場合は吉村(吉村禎章)さんですかね。抜群に配球を読むのがうまかったですね。西武で言うと秋山幸二さんです。こうちゃんも実際には配球を読んで打つ打者でした。そういうレベルの打者です。その彼が調子を上げてきているのですから、頼もしいばかりです。あとは体調を見ながら、原(原辰徳)監督が出場機会を考えていくことになります。チョーさんの人間性は素晴らしく、ミスターナイスガイ。だからこそ、彼がヒットを打ったときなどは、当然のようにチーム全体が盛り上がります。それもまた後半戦での追い上げには欠かせないのです。その意味ではいい形での勝ちゲームで次の試合に臨めるという感じで見ています」と働きぶりを高く評価していた。

 今季は6月25日のDeNA戦(新潟)で、9回一死二塁の好機に代打で登場すると中前適時打を放ち、通算1500安打を達成。広角に安打を打ち分ける天才打者の技術はさびついていない。スタメン出場は16試合にとどまっているが、代打の切り札として打率.281と勝負強さは健在だ。共に戦う仲間たちと阿部慎之助監督を胴上げへ。ラストスパートで力を出し尽くす。

写真=BBM
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