大学日本代表での成功体験
法大は開幕カードで勝ち点1。リーグ戦初勝利の1年生・倉重[左]とサヨナラ本塁打の松下[右]が、ウイニングボールを手にして笑顔を見せた[写真=BBM]
【9月24日】東京六大学リーグ戦
法大3x-2立大(延長13回)
(法大2勝1敗1分)
法大は立大に1敗1分と追い込まれてから、3、4回戦と連勝して、勝ち点を挙げた。
3回戦は右腕エース・
篠木健太郎(4年・木更津総合高)が、逆転三塁打&2失点完投勝利。4回戦は13回裏、一死から五番・
松下歩叶(3年・桐蔭学園高)がサヨナラ本塁打を放った。松下は今春の開幕カードの立大3回戦で決勝3ラン。今秋の開幕カードでも勝負強さを見せ、勝ち点奪取に貢献した。
2020年春以来のV奪還へ好発進したヒーロー2人に共通するのは、大学日本代表での成功体験だ。今夏、プラハベースボールウィーク(チェコ)とハーレムベースボールウィーク(オランダ)で優勝。代表メンバー24人に入った篠木と松下は2大会を通じて11戦全勝と、頂点に立つ喜びを味わった。
右の強打者・松下は六番・一塁で先発したアメリカとのハーレムベースボールウィーク決勝で、1点を追う6回裏に逆転2ラン。ここ一番での集中力に加えて、守備の本職は三塁、二塁ながら、不慣れな一塁守備も器用にこなした。
引き分けた1回戦後、篠木はこう言った。
「勝つことを経験できたのは、自分と松下。還元しないといけない。松下とはそういう話をしてきた。口に出すことにより、やらないといけないという、責任と覚悟が芽生える」
松下は篠木とのやり取りを、こう受け止めた。
「勝つ上での雰囲気。勝利への執念を浸透させていこう、と言ってきました。この一戦にかける思い、1試合1試合に対する思い、代表チームで成長できた部分です。正直、今日(立大4回戦)は勝ちゲーム(の展開)ではありませんでしたが……夏から取り組んできた勝利へのこだわりを、出すことができた」
青学大の四番から得たもの
3時間10分の激闘。劇的なサヨナラアーチを放った松下[背番号4]を、歓喜のナインが本塁付近で出迎えた[写真=BBM]
松下はなぜ、サヨナラ弾を打つことができたのか。3回戦まで13打数2安打0打点と、調子が上がらなかった。大学日本代表で学んできた技術を、ようやく開花できたという。
「(1学年上の)青学大・西川史礁さん、大商大・
渡部聖弥さん(広陵高)、(同級生の)創価大・立石正広と右打者に好選手が多かったんです。スイング軌道を学びましたが、今までにない違った感覚を、勉強できました」
東都大学リーグ3連覇、全日本大学選手権連覇の青学大の四番・西川から得たものを語る。
「西川さんはラインでボールをとらえ、打つ瞬間に速く振る、と。自分にはまだ、スキルがないので、できないですが、一つの引き出しにはなりました」
13回裏一死走者なし。11回から救援した二番手・吉野
蓮(3年・仙台育英高)が投じた初球のカット系のスライダーをたたいた。
「球種に関係なく、初球から行くと決めていました。自分のスイングができた。コースは内角寄りの真ん中でしたが、ボールの見方がしっくりきたんです。それまではただ、振っていただけでしたが、ボールが長く見られるようになった」。第1打席で内野安打を放って以降、4打席は凡退。試合中に修正して、第6打席で結果を出したのである。
サヨナラ弾は、通算4号。ホームランボールは12回から救援してリーグ戦初勝利を挙げた1年生左腕・倉重聡(広陵高)に譲った。激闘後、松下はすぐに気持ちを切り替えた。中3日で第3週、春の覇者・早大戦を控える。
「春は連敗しているので、やり返す気持ちでやっていく」
早大には同学年のエース・
伊藤樹(3年・仙台育英高)のほか正捕手で主将・
印出太一(4年・中京大中京高)、鉄壁の遊撃手・山縣秀(4年・早大学院)、そして、開幕カードの東大戦で3本塁打9打点をマークした吉納翼(4年・東邦高)がいる。大学日本代表で一緒にプレーした4人と対峙するのだ。
この春、早大が47度目のリーグ制覇を遂げ、並んでいた法大は優勝回数で抜かれた。特別な相手である。ユニフォームを着る「責任」と、プレーする「覚悟」。日の丸を背負った篠木と松下には、一流アスリートとしての資質が備わっている。残る対戦は4カード。法大はまだ、一つのヤマを越えたに過ぎない。
文=岡本朋祐