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巨人V奪回のキーマンに 高校時代は三番手投手も「野球センス抜群の左腕」は

 

先発、救援で奮闘


9月に入って好投を続ける横川


 巨人が9月26日のDeNA戦(横浜)で12対4と圧勝。リーグ優勝へのマジックを3に減らした。先発全員の18安打と打線が爆発して大差がついたが、決して楽勝だったわけではない。好救援が光ったのが、二番手で登板した横川凱だった。

 序盤に6得点を奪ったが、先発の山崎伊織がピリッとしない。2回に宮崎敏郎にソロを浴びると、3回に宮崎、桑原将志伊藤光に適時打を浴びて3失点。2点差に縮められ、さらに二死一、三塁のピンチと試合の行方が分からなくなった。山崎が降板し、横川がマウンドへ。森敬斗をフォークで空振り三振に仕留めると、4、5回も三者凡退とDeNA打線の勢いを封じた。2回1/3を無安打無失点と完ぺきな投球で今季3勝目をマークした。

 優勝争いが佳境に入った9月に先発、救援で奮闘ぶりが光る。4カ月ぶりに一軍昇格した7日のDeNA戦(東京ドーム)で同点の延長11回から登板すると、2回無失点の快投で、オコエ瑠偉のサヨナラアーチを呼び込んだ。その後も救援で好投を続けると、21日の広島戦(マツダ広島)では138日ぶりに先発登板し、6回6安打1失点。投げるだけでなく、6回は自らのバットで3点目の右前適時打を放った。救援陣が崩れて逆転負けを喫したが、首脳陣の期待に見事に応えた。

 身長190センチの大型左腕が際立つのは野球センスだ。牽制、フィールディング能力が非常に高く、打撃も犠打をきっちり決めてミート能力も光る。スポーツ紙記者は、「大阪桐蔭高のときに同学年の根尾昂(現中日)が投打の二刀流で注目されましたが、横川も何をやらせても器用にこなす。長身の投手はフィールディングを苦手にするタイプが多いが、身のこなしが柔らかく俊敏です。総合力が高く、将来は井上温大と共に左腕エースになれる素材だと思います」と期待を込める。

高校時代は「後悔しかなかった」


 日の当たる道を歩んできたわけではない。大阪桐蔭高で甲子園に4度出場し、3年時に甲子園春夏連覇を達成したが、当時の横川は柿木蓮(日本ハム)や根尾昂(中日)に次ぐ三番手投手だった。高校時代を振り返ると、「後悔しかなかった」と週刊ベースボールの取材で明かしている。

「環境はこれ以上にないくらい最高で、野球に対しても、人としても、いろいろなことが良い経験になったなと思います。でも、その環境を自分が最大限に扱えていたかといったらそうでもないし、そこまで考えて野球をしていたわけではなかったので」、「西谷(西谷浩一)先生にも、『もっともっと考えて野球をやれ』ってすごく言われていました。だから(投手陣の)三番手だったんですよね」。

投球フォームの改造が奏功


 巨人にドラフト4位で入団すると2021年、22年のオフに2年連続で育成契約に。だが、心は折れない。グラブを高々と上げて、反動をつけて左腕を振り下ろす投球フォームに改造すると直球の球速が上がり、力強さが増した。

「今までは普通に投げても137キロとか138キロしか出てなかった。それが軽く投げているのに143キロとか出始めて、『え!?』って。もうそこで、こうやって投げようと決めました。そこからは自分のものにするだけでしたね」

 成功への道筋が見えたことで、階段を駆け上がる。昨年の3月に支配下昇格し、4月23日のヤクルト戦(神宮)で5回2失点の粘投。根尾、柿木より先にプロ初勝利を挙げると、その後も先発、救援で計20試合登板し、4勝8敗2ホールド、防御率3.95をマークした。

 今年は制球に苦しみ、ファームで4カ月過ごしたが、9月に再昇格後は安定した投球を続け、12試合登板で3勝1敗、防御率0.94。重圧の掛かる場面でもきっちり抑える。先発、救援と起用法の幅が広く貢献度は非常に高い。プロで初めて味わうリーグ優勝は特別な思いになるだろう。シーズンは残り4試合。必要とされる役割で、全力を尽くす。

写真=BBM
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