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【大学野球】芽生えた特別な感情 見応え十分の投げ合いを繰り広げた法大・篠木健太郎、早大・伊藤樹

 

「1戦目はどうしても負けられない」


法大・篠木は蓄積疲労の中、強弱をつけた投球を見せ、打席でも4年生としての存在感を披露した[写真=矢野寿明]


【9月28日】東京六大学リーグ戦
早大3-3法大(1分)
※プロ併用日。連盟規定により9回打ち切り

 投手が試合で対峙するのは打者。しかし、この一戦に限っては特別な感情が芽生えていた。

 法大・篠木健太郎(4年・木更津総合高)と早大・伊藤樹(3年・仙台育英高)による投げ合いは、見ごたえ十分だった。2人は今年7月のプラハ・ベースボールウィークとハーレム・ベースボールウィークの侍ジャパン大学代表の優勝メンバー。約3週間、同じ釜の飯を食べ、お互いが意識しないはずがない。

 コンディションに大きな差があった。法大は立大との第2週を4回戦の末、2勝1敗1分で勝ち点を挙げた。第3週の早大戦まで中3日。篠木は1回戦を8回2失点(2対2の引き分け)、3回戦では自ら決勝三塁打を放ち、9回2失点完投(4対2)。2試合で254球、中4日での先発マウンドだった。勝利にこだわるエースは疲れなど一切、口にしない。

「伊藤樹とはチェコ、オランダでも一緒にいる時間が多かったですが、今は対戦校。エースとしてマウンドに立っている以上、1戦目はどうしても負けられない」

 篠木と言えば気迫全面の力投派だが、この日は「どこかで勝負どころがある。なるべく我慢しよう、と。力を抑えた中で投げました」と、強弱を織り交ぜた粘投を見せた。

 7回表を終え102球。球数、疲労を考慮し、大島公一監督はこの回での降板を決断した。ところが、1点を追う7回裏の先頭打者で七番・篠木は何事もなかったかのように左打席に入った。

 大島監督は「どう見ても、誰が見ても打ちそう。バッターとして、ランナーとして、得点するためには最善策」と、ベンチを動かなかった。篠木は指揮官が言う「基本である投手の足元。見本を示してくれている」と中前打で出塁。犠打の後、代打の主将・吉安遼哉(4年・大阪桐蔭高)の適時二塁打で同点のホームを踏んだ。野手顔負けの好走塁だった。篠木は7回3失点で、その役目を終えた。

「たくさんのことを学ぶことができた」


早大のエース番号11を着ける3年生・伊藤樹は修正能力の高さが光った[写真=矢野寿明]


 早大は東大との第1週を、連勝で勝ち点1を挙げた。第2週は空き週で、法大との第3週を迎えていた。調整期間は十分だった伊藤も、負けてはいなかった。1回裏に制球を乱すなどして、2点を先制されるも、背番号11の絶対的エースは簡単に崩れない。

 すぐさま「変化球の低めを見切っている」と判断し「ゾーンに変化球、ストレートを集めて、投手優位のカウントを作っていく」と投球スタイルを変えた。「基本はゾーン低めに左右の出し入れ。低めすぎるとカウントが悪くなる。安打は仕方ない。ホームランだけにはならないよう、タイミングを外した」。2回以降は立ち直り、クレバーな投球術に法大・大島監督は「伊藤投手はさすが。いろいろな引き出しを持っている」と目を細めた。

 同じ右腕であり、1学年上の背番号18の篠木から感じるものがあったという。

「能力的なストレートの強さは、大学生でもトップクラスです。法政のエースとしての意志の高さ、勝ち気。僕も持っているつもりですが、負けないように、たくさんのことを学ぶことができました」

 伊藤は8回3失点。プロ併用日のこの日、試合は連盟規定により、3対3の引き分けだった。早大・小宮山悟監督は「立教戦での疲れを考えれば、勝たないといけない試合だった。リーグ戦のスケジュールのアヤを生かしきれなかった。私たちにとっては痛い引き分けじゃないですかね」と冷静に語った。

 篠木、伊藤とも中1日、3回戦に向けてスタンバイする。1回戦ドローで、まさしく仕切り直し。春秋連覇を狙う早大と、2020年春以来のV奪還を目指す法大は、勝ち点(2勝先勝)をめぐり、白熱した対抗戦を展開する。

文=岡本朋祐
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