戦前は連覇予想が多数
あと一歩及ばず、リーグ連覇を逃した阪神・岡田監督
阪神が
巨人と熾烈な首位争いを繰り広げたが、あと一歩及ばなかった。巨人が9月28日の
広島戦(マツダ広島)に勝利し、4年ぶりのリーグ優勝が決定。阪神は今季140試合目でリーグ連覇の夢が消えた。
球団史上初のリーグ連覇へ。今年は大きなチャンスだった。投打で脂が乗った選手が多く、戦力は他球団より充実。戦前の下馬評では阪神のリーグ優勝を予想する野球解説者の声が圧倒的に多かった。
だが、思わぬ誤算が続く。
佐藤輝明、
大山悠輔、
森下翔太とクリーンアップを担う3人の状態が上がらず、ファーム降格で次々と登録抹消に。
ノイジー、
ミエセスの両外国人選手も戦力として稼働しなかった。深刻な得点力不足にあえぎ、リードオフマンの
近本光司を四番に据えるなど、
岡田彰布監督は打開策を探った。7月に14勝8敗と立て直したが、上昇気流に乗れない。8月は自慢の投手陣が痛打を浴びる場面が目立ち、11勝13敗と負け越し。投打の歯車がようやくかみ合ったのが9月だった。22日の首位攻防戦・巨人戦(甲子園)に1対0と完封勝利。首位・巨人に1ゲーム差に接近し、阪神ファンのボルテージは最高潮に達した。
言い続けていた「勝負は9月!」
岡田監督は9月中旬に週刊ベースボールのコラムで、心境を明かしていた。
「ホンマに苦しいことの連続やった。極端な得点力不足。投手陣を含めた守りで、何とかしのいだが、やはり思うような結果にはならない。球宴前、前半戦の貯金は『1』。逆に言えば、よく踏ん張ったという感覚やった」
「その中でオレは常に『勝負は9月!』と言い続けた。残り試合が30試合を切るころから、優勝を左右する勝負が始まる。選手にもそれは伝わっていると思う。だから……ではないが、9月の前半からチームの状態がよくなってきた。打線が活発になり、つながりが生まれた。特に目を見張る成長を遂げているのが三番・森下やろな。ホンマにいいバッティングを続けている。やっと自分のバッティングスタイルを見つけた。そんな感じに映るのよ」
「とにかくバットの出がいい。スイングがレベルになり、どんな球にも対応できるようになっている。それまで紆余曲折はあったし、遠回りしたわけだが、もう崩れることはないんやないかな。打席での自信というのかな。これを得れば、またひとランク、レベルアップできる。一番・近本、二番・中野(
中野拓夢)、三番・森下、四番・大山、五番・佐藤輝……。一、二番が出て、クリーンアップがかえす。昨年のような形がようやく戻ってきた。これで最後まで押し切る」
日本一へまだ続く戦い
だが、巨人を追い越すことはできなかった。23日の首位防戦2戦目で0対1と完封負けを喫すると3連敗と勢いが失われ、終戦を迎えた。
スポーツ紙記者は、「リーグ連覇は叶わなかったですが、苦しかった前半戦の戦いぶりを考えたらよく立て直せたと思います。岡田監督は今年が2年契約の最終年。去就が注目されますが、岡田監督でなければ優勝争いから早々と脱落していたかもしれない。個人的にはもう1年やってV奪回を目指してほしい」と思いを口にする。
今年を振り返る上で、印象的な光景がある。9月27日の広島戦(マツダ広島)。同点の延長12回に救援で登板した
村上頌樹が一死二塁のピンチを招くと、代打・
末包昇大にサヨナラの右越え適時打を浴びて涙を流した。昨季は22試合登板し、10勝6敗、防御率1.75で最優秀防御率、MVP、新人王受賞と大ブレークしたが、プロの世界は厳しい。今季は25試合登板で7勝11敗、防御率2.58。8月以降は集中打で失点を重ねる登板が続き、責任を感じていただろう。救援登板で結果を残せなかった悔しさで、感情を抑えきれなかった。
村上だけではない。選手たちはV逸の悔しさを忘れないだろう。大きな目標は達成できなかったが、戦いはまだ続く。CSを勝ち抜けば、球団史上初となる2年連続日本一の挑戦権が得られる。このままでは終われない。
写真=BBM