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【高校野球】1、2年生が「同心」となって目の前の試合に立ち向かう早実

 

投手を主将にした意図


早実の新主将は左腕エース・中村。東京都市大付高との1回戦を12対4で突破すると、相手校に丁寧にあいさつした[写真=BBM]


【10月5日】東京都秋季大会1回戦
早実12−4東京都市大付高
(7回コールド)

 早実は西東京代表として9年ぶりに出場した今夏の甲子園で、2勝を挙げた。大社高との3回戦では、延長11回タイブレークに及ぶ大熱戦の末にサヨナラ負けした(2対3)。

 球史に残る名勝負を経験した2年生以下の新チームは、スローガンに「同心」を掲げてスタート。新たに主将に就任したのは背番号1の左腕エース・中村心大(2年)だ。中村は鳴門渦潮高(徳島)との1回戦を7回4失点、鶴岡東高(山形)との2回戦では延長10回完封勝利と実績十分のサウスポーである。

「3年生から教えてもらったのは、同じ思いを持ってプレーすることの大切さです。2年生20人で話し合い、1年生16人を含めて全員で意識を高め、甲子園で勝つための練習に取り組んでいく上で『同心』に決めました」

 和泉実監督は投手を主将にした意図を語る。新チーム結成時に指揮官が中村本人に打診。早実では過去に、あまりないケースである。

「投げることはもちろん、打つほうでも期待しています。中心になってもらわないといけない。一番(の適任)かな、と。投手は負担になる、とも言われますけど、2年生全員が主将のつもりで活動するように言っています。(旧チームの主将だった)の宇野(宇野真仁朗、9月30日にプロ志望届提出)と同じく、上級生にふさわしい行動を取ることが大切です」

 中村は自覚十分だ。

「(一番・遊撃手だった)宇野さんと同じスタイルはできませんので、投手としてできる、他の分野で引っ張っていきたいと思います」

 東京の秋季大会は今年から運営方法が変わった。夏の東・西の代表校は一次予選を免除。都大会はシード制なし(昨年までは、秋の一次予選を突破した東・西の夏8強以上がシード校)のオープン抽選となった。

 早実は1回戦で東京都市大付高との対戦となり12対4、7回コールドで初戦を突破した。

 主将・中村はこの日の登板はなく、ブルペンに向かうこともなかった。和泉監督が評価するように、打撃も非凡だが「野手から行くのは難しい」と、あくまでも投手メーンでの起用を示唆。この日は三塁ベンチでナインを鼓舞した。自校の守りが終われば、真っ先にベンチから飛び出し、9人を率先して出迎え、和泉監督の円陣に聞き入った。

 先発の右腕・中島颯之介(2年)が4回途中(4失点)まで投げ、二番手の右サイド・田中孝太郎(1年)が小気味の良い投球で相手の反撃を封じた。

「2人が良いピッチングをしたので、自分も負けないように、勝てるピッチャーになりたい」(中村)

右腕・川上を遊撃で起用


今夏の甲子園で2試合に救援した1年生・川上は、今秋は四番・遊撃で出場している[写真=BBM]


 今夏の甲子園で2試合に救援した右腕・川上真(2年)は四番・遊撃で先発出場。1回裏の先制適時三塁打を含む3安打3打点と打線をけん引した。「初戦突破? ホッとはしましたが、もっと勝っていかないといけない。チャンスで回ってきても、そこまで責任を感じることなく、楽しんでプレーしています」。ショートでも、動きの良さを披露。こちらも旧チームの主将・宇野の後継者である。

「宇野さんには、宇野さんのスタイルがある。僕は僕なりの形でやりたい。宇野さんは背中で見せるタイプでしたので、自分は周りへの声かけを含めて、元気ハツラツでプレーする」

 和泉監督は遊撃・川上の起用の理由を語る。

「本来は中村との二枚看板を構想していましたが、練習試合を重ねていく中で、この形に落ち着きました。川上は、もともとは内野手。楽しそうにやっていますよ」

 投手として登板する可能性も残すが、現状は野手メーンで練習を積んでいるという。甲子園でマスクをかぶった正捕手・山中晴翔(2年)が一番に入る打順は活気があり、國光翔(2年)、灘本塁(2年)の経験者がけん引。ベンチには甲子園で背番号8を着けた三澤由和(2年)も控える。また、大社高との3回戦で「内野手5人シフト」を敷いた際に左翼(実際は投手横に配置)に入った西村悟志(1年)は二塁を守る。この日の1回戦は悪天候で、グラウンドコンディションが不良だったが、無失策で切り抜けたのは収穫だ。

「公式戦が初めてだったので、もたもたしたところもあったが、秋はいつものこと。公式戦を経験している選手と、していない選手で温度差もありましたが、これは、試合を重ねていくしかない。一戦一戦、公式戦の中で成長していきたいと思います」(和泉監督)

 早実は2回戦で、修徳高と対戦する。主将・中村は「2季連続での甲子園出場が目標。まずは秋の東京で優勝する」と、来春のセンバツ切符をつかむべく、意気込みを語る。大社高との甲子園3回戦で延長11回裏、二番手投手でサヨナラ打を浴びた川上は「あの悔しさはまだ、心の中に残っている。甲子園でやり返すしかない」と語る。1、2年生が「同心」となって、目の前の試合に立ち向かう。

文=岡本朋祐
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