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【大学野球】東大・鈴木太陽が慶大戦で1失点完投勝利ができた2つの理由、勝因

 

7回一死まで無安打


東大・鈴木は慶大2回戦で1失点完投勝利。9回表、最後の打者を右飛に抑えると、ガッツポーズを見せた。2年秋から数えて16試合目の登板で、初勝利[写真=矢野寿明]


【10月6日】東京六大学リーグ戦第4週
立大2-1早大(1勝1敗)

 東大・鈴木太陽(4年・国立高)は最速146キロ右腕である。かつては球速を追い求めていたが、チームのためにはならないことに気づいた。勝利を目指す上で、スピードを封印。最上級生の自覚が、投球スタイルを変えた。

 慶大2回戦で1失点完投勝利。2年秋から数えて16試合目の登板で、うれしいリーグ戦初白星を挙げた。チームは昨秋の法大3回戦からの連敗を18で止めた。鈴木は6回一死までパーフェクトに抑え、7回一死まで安打を許さなかった。この回に1失点したが、8、9回は無失点に抑え、慶大打線をわずか3安打に封じた。

「5回が終わったところで『今のところ、パーフェクトか……』と。ただ、あと4イニングもある。そっちのほうが勝っていたので『長いな〜』と(笑)。(6回一死から四球でパーフェクトが)途切れたときは『点をやれない。ちゃんと抑えないと』。(9回までは)長かったです。ようやく終わった。ようやく、1勝できた。無意識に両手を上げました。終わった瞬間は実感が沸かなかったんですが、ジワジワと喜びが出てきました」

 なぜ、勝利をつかむことができたのか。鈴木は2つの理由を語った。

「全球種、狙ったところに、ゾーンに投げられた。気負い過ぎず、球種をずらして、打たせていこうと思った」

 テンポの良い投球で内、外野も好プレーを連発。野手陣がマウンド上の鈴木をもり立てた。さらに、好投の秘密を明かしたのは、連盟役員である西山明彦先輩理事だ。東大ではリーグ戦通算8勝の元右腕が、2つの勝因を語る。

 まずは、投球フォームだ。

「投げ方が変わっています。テークバックが(一塁方向に)深く入り、1回、消えてから腕がスッと出てくる。ストライクゾーンに投げれば、大ケガはしない。タイミングが取りづらいからです。相手校さんも、練習では準備できないタイプだと思います」

 次に、緩急である。変化球はチェンジアップ、カットボールで強弱をつけて、勝負どころではスローカーブをうまく活用していた。

「困ったら、遅いボールを選択する。鈴木は個性的なフォームであり、8割方は抑えられる。仮に甘いコースに行ったとしても、とらえるのは難しい。東大の投手は、150キロのボールを投げることはできない。ならば、いかにして打者を打ち取るのか……。ゾーンに投げられれば、抑えられる可能性は高まる。鈴木は神宮で見事、実証してくれました。他の投手にとっても、参考になったと思います。守備も攻める姿勢が見られました。野球の一つの経験としては、必ず次につながる」

好投の背景に捕手の功績


今春から率いる大久保裕監督[中央]にとってもリーグ戦初勝利。正捕手・杉浦[左]は適時打と好リードで、鈴木[右]を完投勝利へと導いた[写真=矢野寿明]


 開幕カードの早大戦2試合で32失点、明大との2試合でも13失点を喫した。一方で打線は4試合で1得点と得点力不足だったが、慶大戦では1回戦で3得点、2回戦は4得点と立て直してきた。慶大2回戦で適時打を放ち、鈴木とバッテリーを組んだ杉浦海大(3年・湘南高)は、努めて気を引き締めていた。

「スタンドの歓声もすごかったので、浮かれた気持ちになった。でも、明日がある。勝ち点を取らないと最下位脱出、その上はない。整列の瞬間から、明日に向けて切り替えた。1勝するのが目標ではない。体のケアをして、練習をして、良いリード、良い打撃をしたい」

 好投の背景には、杉浦の功績もあった。

「早大戦以降、反省をし、いろいろな方から助言をいただいたり、多くの媒体から情報を集め、分析と、その場で観察した」

 リーグ戦は勝ち点勝負(2勝先勝)である。

「主将(藤田峻也、4年・岡山大安寺高)を中心に『優勝』を目標に掲げてきました。(勝ち点を)2つ落として、現実的には厳しいですが、1試合も落としたくない。勝ち点に向けて1勝できたのは良かった。自分たちの代で勝ち点を取り、残り2カードにもつなげていきたいと思います」(鈴木)

 この秋、東大が神宮をさらに熱くしていく。

文=岡本朋祐
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