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菅野智之、戸郷翔征に並ぶ逸材…日本一目指す「巨人のキーマン」は

 

シーズン最終戦で2ケタ勝利


シーズン最終戦に勝利して2年連続2ケタ勝利をマークした山崎伊


 苦しんだが、最後に意地を見せた。2年連続2ケタ勝利をマークした山崎伊織だ。

 今季は前半戦に15試合登板で7勝2敗、防御率1.67の好成績。戸郷翔征菅野智之と共にエース格として奮闘したが、後半戦になると一転して長いトンネルから抜け出せない。8月は4試合登板で2勝2敗、防御率5.82、9月も3試合登板で0勝1敗、防御率7.71。制球力が持ち味だが、序盤から甘く入った球をことごとく痛打される登板が続いた。

 9月14日に登録抹消に。調整期間を経て26日のDeNA戦(横浜)で3回途中4失点KOと振るわなかったが、シーズン最終戦で先発の登板機会を与えられた。10月2日のDeNA戦(東京ドーム)で、7回途中5安打2失点の粘投。本来の投球とは言えなかったが、走者を背負った場面で丁寧に投げ続けて崩れなかった。昨季に続いてシーズン最終戦で2ケタ勝利を達成。15勝の菅野智之、12勝の戸郷に続き、同一シーズンで3投手が2ケタ勝利をマークしたのは、2017年の菅野(17勝)、マイコラス(14勝)、田口麗斗(13勝、現ヤクルト)以来、球団史上7年ぶりだった。

レジェンドOBの厳しい指摘


 大事な優勝争いの時期に貢献できなかった悔しさは当然あるだろう。球団OBの堀内恒夫氏は週刊ベースボールのコラムで、こう綴っている。

「『勝って兜の緒を締めよ!』と言うではないか。今季の巨人は、2年連続Bクラスの4位から、4年ぶりのリーグ優勝を飾った。そのこと自体は見事と言うほかない。だが、俺は今季の巨人にあえて冒頭の言葉を送りたい。確かに投手陣は先発、中継ぎ、抑えも結果的には盤石だった。先発で2ケタ勝利を挙げている投手は、15勝(3敗)の菅野智之と、12勝(8敗)の戸郷翔征の2人がいる(成績はすべて9月29日現在)。昨季は自身プロ初の2ケタ勝利(10勝5敗)をマークした山崎伊織は、今季も2ケタ勝利にあとひとつに迫る9勝(6敗)を挙げて、先発ローテーションの一角として働き続けた。ところが、シーズン終盤にコンディションを崩して登録抹消。いったい何のために1年間努力してきたのか。これでは『元の木阿弥』である。優勝が決まってから2ケタ勝利を飾ったとしても、その価値が半減することは間違いない」

 堀内氏の厳しい言葉は、期待の高さゆえだろう。ただ、9勝でシーズンを終えるのと、2ケタ勝利に到達するのでは本人の心理状況がまったく変わってくる。先発陣を見ると、戸郷、菅野に続き、グリフィン井上温大がCS、日本シリーズでの登板が当確とみられる。特に井上は7月以降に6勝1敗、防御率1.99をマーク。先発左腕が台頭してこないシーズンが続いていた中で、救世主の働きぶりだった。山崎は先発5番手の位置づけの可能性が高く、ロングリリーフ要員に回る可能性も考えられる。

短期決戦を勝ち抜くために


 シーズンと短期決戦は別物だ。リーグ優勝を飾ったチームが、CSファイナルステージで敗れたケースが過去に何度もあった。18、19年と西武がシーズンを連覇したが2年連続でソフトバンクに敗れ、日本シリーズに進出できなかった。当時西武の監督だった野球評論家の辻発彦氏は、以下のように振り返っている。

「ソフトバンクは18、19年とも2位とはいえ、投打の総合力は高かったです。さらにCSファーストステージを勝ち抜いた勢いもあり、打線が上り調子に。逆に西武は試合間隔が空き、特に打線は試合勘が鈍ってしまったのがとても痛かったです。投手陣がソフトバンク打線に攻略され、打撃陣はそれ以上の破壊力を見せることができませんでした。2年続けて初戦を落としたのも痛かったです。優勝チームは1勝のアドバンテージがありますが、初戦を落としてタイとなり、対等な状況になってしまいました。短期決戦で初戦に勝つ重要性も身に染みて感じました」

 山崎が前半戦の投手陣を引っ張った功労者であることは間違いない。夏場の苦しい経験を糧に、短期決戦で輝きを取り戻してラッキーボーイになれるか。重要な役割を担うことは間違いない。

写真=BBM
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