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【大学野球】3年生ながら早大野球部を背負うオーラを放つ右腕 背番号「11」を着ける伊藤樹

 

10日間で4試合に先発


立大3回戦で今季4勝目。背番号11を着ける伊藤樹は、通算11勝目のポーズを見せた[写真=矢野寿明]


【10月7日】東京六大学リーグ戦第4週
早大4-1立大(早大2勝1敗)

 今秋の東京六大学リーグは9週制。春の優勝校・早大は第1、3、4、6、9週に試合が組まれている。唯一の連続週となる第3、4週を乗り越えるのが、前半戦のカギだった。

 早大・小宮山悟監督は常々、言うことがある。

「1回戦、3回戦を投げ切ってこそ、背番号11を着ける早稲田のエース」

 指揮官の言葉を体現しているのが、右腕・伊藤樹(3年・仙台育英高)である。

 早大は開幕カードの東大戦を、連勝で勝ち点1。開幕投手を務めた伊藤樹は、1回戦で6回無失点と危なげない投球を披露した。

 法大との第3週は1回戦を引き分けた(プロ併用日のため9回打ち切り)。先発の伊藤樹は8回3失点と粘投。早大は2回戦で先勝。中1日、伊藤樹は法大3回戦を7回1失点で勝利投手となり、勝ち点2奪取に貢献した。

 中4日で迎えた第4週の立大1回戦は、9回1失点完投。9回表に桑垣秀野(3年・中京大中京高)にソロ本塁打を浴び、完封を逃し「悔しいです」と、勝利投手とは思えない表情を見せていたのが印象的だった。早大は2回戦で、今季初黒星を喫した。

 中1日。伊藤樹は1回表に立大・桑垣(3年・中京大中京高)に先頭打者本塁打も、2回以降は「(捕手の)印出さん(印出太一、4年・中京大中京高)と話し合い、うまく配球して、割り切って投げた」と修正した。7回1失点と試合をつくり、8回以降は救援陣が踏ん張り、4対1で逃げ切った。伊藤樹は今季4勝目。早大は勝ち点3をマークし、第4週を終えて、単独首位に立った。

 ヤマ場となった第3、4週で伊藤樹は10日で4試合に先発。登板過多にも映るが、122球、109球、121球、83球とセーブした。3回戦を見据えたペース配分、省エネ投球が身についている。ベンチを預かる小宮山監督も球数とコンディションを冷静に見極めた上で、慎重に起用してきた。ブルペン陣も信用しており、エース交代を決断できる背景もある。

エースとしての「美学」


中1日で先発した伊藤樹は7回1失点を83球でまとめた[写真=矢野寿明]


 今春を通じて、先発した試合はすべて7イニング以上を投げ、ゲームメーク能力に長ける。ハイライトは中1日で先発した春の明大3回戦。延長11回を完封(5対0)で、明大から19年秋以来の勝ち点を挙げ、7季ぶりの天皇杯奪還のポイントとなる一戦だった。伊藤樹は「年間無敗」を掲げ、今春は3勝(防御率1.49)、今季も5試合で4勝(防御率1.46)。さかのぼれば、先発に定着した2年秋も4勝1敗、防御率1.99と安定感が光る。

 小宮山監督は立大3回戦の試合後、好投した伊藤樹について褒め称えた。

「十分にしっかりとしたピッチングをしてくれた。さすがだな、と」

 1回戦と3回戦で先発し、なおかつ、結果を残す。伊藤樹は今春から背番号11を着ける早稲田のエースとしての「美学」を語った。

「(中1日で、体調は)回復しないものです……(苦笑)。当たり前のように、投げる。当然のように、当然あるつもりでいる。それが仕事なので……。いつも高いレベルの中で投げるのが、持ち味。中1日に関係なく、当たり前のレベルを上げていきたい」

 早稲田の背番号11とは、複数シーズンの活躍を経て、首脳陣、部員から認められた上で着ける慣例がある。小宮山監督は22年の入学以来、伊藤樹の潜在能力を高く評価していたが、取り組みの甘さを何度も指摘してきた。そこで、自覚を促すために、この春、伊藤樹に「11」を託した。立場が人を変えたのだ。

 背番号11で通算11勝目。第6週は春秋連覇への天王山となる明大戦が控える。「春はああいう形で勝ちましたが、秋に負けると、負けたという形で終わってしまう。連勝で勝って終わらせたい」。3年生ながら、すでに早稲田大学野球部を背負うオーラを放っている。

文=岡本朋祐
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