週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

ブレーク期待も26試合出場のみ…殻を破ってほしい「巨人の若手成長株」は

 

迷いのあるバッティング


今季は打撃で飛躍した姿を見せられなかった秋広


 4年ぶりのV奪回を飾った巨人。ナインたちがビールかけで喜びを爆発させた中、この選手は危機感のほうが大きかっただろう。今季26試合出場で打率.261、0本塁打、1打点と苦しんだ秋広優人だ。

 プロの世界で活躍し続ける難しさを肌で感じただろう。昨季は4試合連続本塁打など121試合出場で打率.273、10本塁打、41打点の好成績をマーク。若手成長株の筆頭格として期待値が上がり、今年2月の宮崎春季キャンプでは臨時コーチを務めた松井秀喜氏(ヤンキースGM付き特別アドバイザー)からマンツーマン指導を受けた。

 しかし、実戦でなかなか結果が出ない。打撃フォームがしっくりこないのか、相手投手と戦う前に、心に迷いが出ているように感じられた。開幕をファームで迎え、5月7日に一軍昇格したが2週間で登録抹消に。その後も一軍に定着できない。伸び悩む現状を打破したかったのだろう。夏場に立てていたバットを寝かせて、テークバックを小さくした打撃フォームに改造したこともあった。コンタクトを重視した打撃を心がけることは決して悪い試みではないが、当てるだけの手打ちのスイングでは秋広の良さが消えてしまう。

 9月16日の中日戦(東京ドーム)では体勢を崩されて三飛、三ゴロと寂しい打撃内容で、途中交代を命じられた。阿部慎之助監督は「何の魅力も感じなかった。あんな『ちょこん』とうまくヒットを打ってくれだなんて、こっちは思っていない。そこをもっと理解してほしい」と苦言を呈し、ファームで再調整に。リーグ優勝の瞬間に立ち会うことはできなかった。

激戦区の外野陣


シーズン最終盤、外野の一角として試合に出続けた浅野


 秋広が結果を出せない中、夏場以降の活躍でリーグ優勝に貢献したのが、高卒2年目の浅野翔吾だ。前半戦は共にファームで切磋琢磨していたが、エリエ・ヘルナンデスが左手首骨折で戦線離脱したのを受けて浅野が一軍昇格。広角に鋭い打球を飛ばして勝負強さを発揮し、8月は月間打率.348、3本塁打、11打点をマークした。9月に入って打率を落としたが、14試合連続安打をマークするなどスタメンで出続けた。

 外野陣でレギュラーが確定していると言えるのは、丸佳浩のみ。残りの2枠を、浅野、本職は内野だが外野を守るココ・モンテスオコエ瑠偉萩尾匡也に加え、ベテランの梶谷隆幸立岡宗一郎、ドラフト3位の佐々木俊輔らが虎視眈々と狙っている。秋広がクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでメンバー入りし、試合に出場するためには目に見える形でアピールするしかない。

宮崎の地でアピール


 自身の打撃を見つめ直し、フルスイングを貫く「原点回帰」で道を切り拓く。みやざきフェニックス・リーグに参加し、「七番・一塁」でスタメン出場した10日の広島戦(天福)で2試合連続アーチ。1点差を追いかける3回無死で相手左腕・高太一の直球を振り抜くと、高々と舞い上がった打球は右中間スタンド中段に弾んだ。12日のソフトバンク戦(サンマリン宮崎)でも2回二死二塁で先制の適時二塁打。相手はCSファイナルステージに向けて調整登板した石川柊太だっただけに、価値がある一打だった。

 巨人は借りを返さなければいけない相手がいる。パ・リーグの覇者・ソフトバンクだ。2019、20年とリーグ連覇して、日本シリーズで挑んだが2年連続で4連敗。シリーズ史上初の屈辱だった。リーグ優勝の歓喜が吹き飛んでしまった厳しい現実を忘れられない。

 阿部監督は今季最終戦後のセレモニーで、「これからが本当の勝負。厳しい戦いが待っている。日本シリーズに進んで、ここ(東京ドーム)で日本一の報告ができるように」とファンに誓った。CSファイナルステージを勝ち抜き、日本シリーズで4年ぶりの頂上決戦が実現するか。チーム一丸とならなければ、12年以来12年ぶりの日本一にはたどり着かない。シーズンで味わった悔しさを糧に、大舞台で輝きを放てるか。規格外の潜在能力を持つ秋広が救世主になることを期待したい。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング