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33歳のベテランにメジャーが熱視線…FAで去就注目される「タフネス右腕」は

 

タフで市場価値が高い


今年は7勝に終わったがベテランらしい投球は健在の九里


 今季15勝をマークして自身4度目の最多勝に輝いた巨人菅野智之が海外FA権を行使し、来季にアメリカでプレーする意向を表明した。メジャーの複数球団が獲得に興味を示している中で、この右腕も海の向こうに渡る決断をするか、注目される。広島九里亜蓮だ。

 今季は23試合登板で7勝10敗、防御率3.21。好不調の波が激しく、投球回数が131回2/3で規定投球回に到達できなかった。イニング数にこだわりを持つ右腕は昨季リーグトップの174回1/3を投げただけに、悔しさが大きいだろう。チームも8月まで優勝争いを繰り広げたが、9月以降に大失速して4位に終わった。

 九里は今季が3年契約の最終年。今オフは昨季取得した海外FA権について熟考する考えを示している。33歳と決して若くないが、他の投手にない魅力がある。メジャーを取材するスポーツ記者は「入団以来10年間で肩、肘に大きな故障がなく、先発ローテーションで投げ続けている。これだけ投げて大きな故障がない投手は市場価値が高い。メジャーは先発ローテーションを離脱せず、長いイニングを投げられる投手が重宝されます。中継ぎの経験があるし、首脳陣にとってはありがたい投手です。直球は常時140キロ台で決して速くないですが、チェンジアップ、スライダー、シュート、カットボール、ツーシームと多彩な変化球を高いクォリティーで操る。昨年から制球力が改善されていることもプラス材料です。性格的にも異国の地で適応能力が高そうですし、海外FA権を行使するならメジャーの球団は獲得を検討すると思います」と分析する。

2021年には最多勝


 向上心旺盛で、現状維持を良しとしない。21年に13勝を挙げて最多勝に輝いたが、22年オフにアメリカで自主トレを行い投球フォームの改造に着手した。九里は昨年7月に週刊ベースボールのインタビューで、こう語っている。

「『ドライブライン・ベースボール』(トレーニング施設)にずっと興味があって、チャンスがあれば行ってみたいと思っていました。ただ、新型コロナウイルスの影響で、行くのが難しい状況になって……。ようやく落ち着いたので、このタイミングで行っていろいろと学んでみようと思ったんです。僕自身、コロナ禍で、21年は最多勝のタイトルを獲らせていただくことができましたが、次の年、昨季はまったく良くなくて。『このままじゃもう、勝っていけないだろうな』と思ったのが一番強い。このままのピッチングスタイルなのか。いや、何かを変えなければ勝てないと思ったので、これはもう(アメリカに)行こう、と」

「行って話をして最初に思ったのが、考え方がまったく違うということ。日本の野球と、アメリカの、メジャー・リーグの野球というところで、考え方がまずまったく違いました。自分のフォームをセンサーをつけて分析したりするのですが、そういうのを今までちゃんとやってきたことがなかったので、実際にやってみると、やっぱり直すべき点というのが何個も何個も出てきて。自分の体についてだったり、膝の使い方だったり、グラブの使い方だったり、本当細かいところをいろいろと知ることができた。毎日いろいろなことを勉強しながら、いい時間、いい1カ月になったなと思います」

男気あふれる右腕


 メジャーへの思いはあるが、広島に残留する可能性も十分にある。九里は同学年で同期入団の大瀬良大地と投手陣を引っ張ってきた。最多勝を獲得した際は、「大地(大瀬良大地)とは、やはり入団したときから、互いに切磋琢磨して頑張っていける関係でありたいと思っていましたし、またそうしてやってきていますので。まだまだ通算の勝ち星とか、全然大地のほうが上で、これで並んだわけでもありませんけれども、少しでも追いついて、この先も互いに頑張っていきたいと思っているので。そういう意味でも、タイトルを獲ることを経験できたのは良かったと思います。大地からは、最多勝が決まったあと、『おめでとう』と声を掛けてもらいました」と明かしている。

 男気あふれる右腕はリーグ3連覇を飾った18年以来遠ざかっている栄冠に向け、新井貴浩監督の下で貢献したい思いもあるだろう。悩み抜いた末にどのような決断を下すか。

写真=BBM
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