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【大学野球】無双状態のピッチング…魂の16球で引き分けに持ち込んだ早大・安田虎汰郎

 

プレッシャーの中でも気力十分


早大・安田は11回裏から救援して2イニング、打者6人をパーフェクトに抑えた[写真=矢野寿明]


【10月20日】東京六大学リーグ戦第6週
早大3-3明大(早大1勝1分け)

 魂の16球だった。

 3対3の11回裏から五番手で救援した安田虎汰郎(1年・日大三高)は2回無失点。一人の走者も許さず、打者6人を封じた。裏の守りというプレッシャーの中でも気力十分で、12回裏を締め、引き分けへと持ち込んだ(連盟規定により12回打ち切り)。

「夏のキャンプ後に体調を崩し、チームに迷惑ばかりをかけていた。そんな中で使っていただき、恥ずかしいピッチングはできない」

 今春は6試合に登板し、抑えとしてフル回転した。7回1/3を無失点で7季ぶりのリーグ優勝。許したのは、わずか1安打だった。全日本大学選手権でも、決勝進出に貢献した。

 今季は3カードを終えて3試合登板(2回2/3無失点)。トミー・ジョン手術から復帰した田和廉(3年・早実)が守護神役を担ったこともあり、安田の出番は限られていた。

「投げたくてウズウズしていた。しかるべきタイミングで投入したら、頑張ってくれるだろうと思っていました。できれば、コンスタントに使いたいが、その展開がなくて……。明日から(最終カードの)早慶戦まで『勘弁してくれ……』と思うほど、投げてもらいます(苦笑)。チームのために投げてほしい」(小宮山監督)

 安田は、相当な意気込みだった。勝ち点3同士、相星決戦の明大戦で、早大は1回戦で先勝していた。

「力と力、気持ちと気持ちのぶつかり合い。肘、肩が飛んでも良い。1球1球に心を込めて投げました」

 横にいた早大・小宮山悟監督は「1年生で、それは早い!!」とカットイン。しかし、マウンド上での心意気は、頼もしく映った。

武器はチェンジアップ


試合後、安田は報道陣からの質問に対して、言葉を選びながら丁寧に答えた。律儀な性格である[写真=矢野寿明]


 安田の得意球は、チェンジアップである。この日も多投。明大打線は、完全にタイミングを外されていた。9回一死。三番の主将・宗山塁(4年・広陵高)との勝負では燃えた。

「(昨年8月28日の)U-18代表壮行試合(東京ドーム)で、大学日本代表の宗山さん(当時3年)と対戦させていただいた際、初見で初球をセンター前に運ばれたんです。チェンジアップを狙って来るのは分かっていましたが、チェンジアップで勝負してやろう、と。思い切り投げ込みました」

 宗山は初球をたたき、遊ゴロ。本来ならば中前へ抜けそうな打球であったが、早大の遊撃手・山縣秀(4年・早大学院)があらかじめ二塁ベース後方に位置取りし、難なく処理した。二死からは代打・内海優太(2年・広陵高)を3球連続チェンジアップで、空振り三振に斬った。安田は同じチェンジアップでもカウント球、勝負球、強弱で使い分けるから、攻略はさらに難しくなる。小宮山監督は言う。

「(チェンジアップを)操れるのは、大したもの。ただ(この先)、ボールが速くならないと……。卒業までにスピードを出せるようにし、プロの世界に送り込めればと思います」

 1年春のリーグ戦デビューから通算12イニング無失点。今秋は打者16人からヒットすら許していない(通算打者43人で1安打)。まさしく、無双状態である。3回戦以降も、明大にとっては厄介な相手となりそうだ。

文=岡本朋祐
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