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注目集める慶大・清原正吾のドラフト指名 「獲得すべき逸材」の理由とは

 

4年春にはベストナイン


今年は一軍で1試合の登板のみに終わった畠


 ドラフト指名に掛かれば、プロ野球史に残る出来事と言っても大げさではない。去就が注目されるのが、プロ志望届を提出している清原正吾(慶大)だ。

 通算525本塁打をマークした偉大なスラッガー・清原和博の長男でなければ、ここまで注目されなかっただろう。ただ、いいことばかりではなかった。「父がいろいろあって、重圧、プレッシャーもかなり大きく、野球から目を背けたくなってしまったのがあります」。小学3年から6年時までは学童野球チームでプレーしていたが、中学進学後は遠ざかった。中学でバレーボール部、高校ではアメリカンフットボール部で他のスポーツに打ち込んだ。

 だが、慶大に進学すると驚きの決断をする。全国の実力者が集まり、部員が100人近い野球部への入部。なぜ、6年間のブランクを経て野球を再開したのか。「長男としての思いが芽生え、母の大変さを目の当たりにする機会が増え、最後の学生生活で親孝行がしたい、と。父と母を喜ばせたい思いが、根底にあります」。責任感の強い性格が、体を突き動かした。

 野球の名門校出身でも4年間ベンチ入りできない部員がいる中、清原はブランクを埋めるべく必死に野球と向き合った。そして、最終学年でチャンスが巡ってきた。1学年上の主力選手たちが抜けた背景もあり、「四番・一塁」で4年春からスタメンに出場すると、打率.269、7打点をマーク。ベストナインを初受賞した。高校野球を経験していない選手が、東京六大学リーグでタイトルを獲得することは極めて異例だ。

4年秋には2本塁打をマーク


 4年秋はさらにインパクトを与える。明大1回戦で1点差を追いかける9回に、大川慈英のカットボールをバックスクリーンに運ぶリーグ戦アーチ。土壇場で振り出しに戻し、引き分けに持ち込んだ。東大3回戦でも4回にアンダースロー右腕・渡辺向輝が初球に投じたカーブを左翼席へ先制ソロ。5回に中前適時打を放ち、チームの勝利に貢献した。

「1打席目の打席内容を振り返って、1打席で意識を変えて、2打席目に入りました。アンダースローの渡辺投手に対して、1打席目はこすってしまった内容だったので、上から上からを意識して、素直にバットを出していこうと。大きいスイングでなく、鋭いスイングを意識している。うまくヘッドが走ってくれたと思います。昨日、鈴木投手(太陽、4年・国立高)に苦しめられ、そこで帰った後、室内で練習して、今日のためにコンディションを合わせてこられたかな、と思います」と打席を分析。慶大の堀井哲也監督は「変化球に崩されなくなった。春はまだストレート系ならばいけるな、というところがありましたが、変化球でピタッと止まるようになったので、これはもう、ある程度のボールは、甘くくればいけるなと思いました」と目を細めた。

 秋のリーグ戦は11試合出場で打率.200、2本塁打、4打点。際立った成績を残しているとは言えないが、2本のアーチはドラフトに向けてアピール材料になったことは間違いない。

育成枠での指名が現実的


 記事の冒頭で、ドラフト指名に掛かれば、プロ野球史に残る出来事と言っても大げさではないと綴ったが、それは清原和博の長男としてプロで「親子鷹」が実現するという理由だけではない。中学、高校と野球から6年間離れて、大学から再開してNPBに入団した選手を過去に聞いたことがない。今後どのように成長していくのか、想像もつかない。新たなモデルケースでNPBの世界に飛び込むことは、極めて異例の挑戦と言える。

 独立リーグの指導者は「大学から野球を初めて4年後に六大学リーグで2本のアーチを打つなんて化け物ですよ。映像で見ましたが、一塁の守備はうまいし、足も遅くない。打撃も飛ばす力があるので、プロ入りしてさらに伸びる可能性が十分にある。育成枠での指名が現実的になりますが、獲得すべき逸材だと思います」と高い評価を口にする。

 育成枠で入団し、その後に大活躍した野手では、甲斐拓也牧原大成周東佑京(ソフトバンク)が代表的だが、スラッガーは成功例が少ない。もし、清原が育成ドラフトで指名されたら新たなパイオニアになれるか。14日のドラフト会議で運命が決まる。

写真=BBM
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