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阪神・大山悠輔がFA権行使なら争奪戦へ 「貧打で悩む球団」の主軸に

 

昨年は日本一に大きく貢献


今季は打撃で苦しんだ大山。しかし、数字に表れない貢献度もある


 藤川球児新監督が就任した阪神。V奪回に向けてリスタートを切る中、去就が注目されるのがシーズン中に国内FA権を取得した選手たちだ。

 大山悠輔坂本誠志郎原口文仁糸原健斗。FA権を取得した選手たちは、いずれもチームの主力として活躍してきた。特に大山は中軸で打線を牽引してきた。昨年は全試合に四番でスタメン出場し、打率.288、19本塁打、78打点。最高出塁率(.403)のタイトルを獲得し、38年ぶりの日本一に大きく貢献した。

 今季まで指揮を振るった岡田彰布前監督は週刊ベースボールのコラムで、大山の働きぶりを高く評価していた。

「カケ(掛布雅之)さんと金本(金本知憲)。この2人に近づき、超えてもらいたいのが今の大山(大山悠輔)である。昨年のオフに虎番から『来年の四番は?』と聞かれ、オレは『そんなん、まだ分からん』と答えたけど、ここで初めて明かすことにする。24年シーズン、タイガースの四番は大山。これ一択である。昨年、四番を1年間打ち続けた。苦しいときもあったと思うけど、それを乗り越えた自信は大きかったと思う。それとともに、阪神の四番は大山と認知された。そしてチーム内でも、誰もが認める四番になった。これが大きいとオレは思っている」

「四番とはみんなに認められるバッター。『なんでアイツが四番?』とか『おかしいやろ』とかの声があってはならない打順、それが四番なんよね。そこには四番らしい風格が必要で、大山もそれが身に付いてきた。現在の球界を見渡し、オレが思う四番バッターは2人。まず巨人の岡本(岡本和真)、そしてヤクルトの村上(村上宗隆)である。2人に共通するのはホームランを量産するところなのだが、彼らには独特の空気感がある。先に書いたような四番に必要な風格。それが2人には備わっている。ほかを圧倒するような空気を醸し出し、打席での立ち姿がいい。どっしりした姿。これが四番には必要なのよね。大山にも匹敵するようなムードが出てきた。彼の野球に取り組む姿勢。それは誰もが認めているし、今後も変わらないだろう。23年にひと皮もふた皮もむけた大山である。24年は必ず、さらなる進化があるとオレは見ているし、四番・大山ははっきりとオレの頭に刻まれている」

 球団史上初の連覇へ。今年も「不動の四番」として活躍を期待されたが、思わぬ試練が待ち受けていた。春先から打撃の状態が上がらない。4、5月と低空飛行が続き、6月に入ると四番から七番、六番に打順が下がった。それでも復調の兆しが見られず、打率1割台に落ち込んでファーム降格。完全に自信を失っているように見えた。

チームに与えるプラスアルファ


 大山の活躍なくして覇権奪回は望めない。2週間の調整期間を経て、一軍に昇格以降は勝負強い打撃を取り戻した。打率.259、14本塁打、68打点は満足できる数字ではないが、得点圏打率.354をマーク。8月下旬以降は四番に戻り、鋭い打球を広角に飛ばしていた。

 FA権を取得した今オフは例年と違い、周りが騒がしくなる。スポーツ紙デスクは「今年は不本意な成績に終わりましたが、他球団の評価は高い。貧打で悩む球団は少なくないですし、FA権を行使したら争奪戦になるでしょう」と分析する。

 大山がチームに与えるプラスアルファは、額面の数字だけではない。最善の準備を尽くして試合に入り、常に全力疾走を怠らない。「準備をしていく中で当然、全力疾走も心掛けています。やはり当たり前のことを当たり前にやる、たとえ負けていても最後のアウトが決まるまで全力でやる、ということをやっています。相手に少しでもスキを見せたくないと思っているので、技術的なことよりも、そこを何よりも僕は大事にしています」と自身の信念は揺るがない。

 阪神の若手に大山の思いは受け継がれている。チームを象徴する強打者は、野球人生の岐路に立たされて何を思うか。阪神は慰留に全力を注ぐだろう。残留か、他球団移籍か。悩み抜いた末の決断が注目される。

写真=BBM
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