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今季一軍で防御率1点台も戦力外…26歳左腕が「複数球団の争奪戦」可能性が

 

大卒4年目のリリーフ左腕


今季は15試合に登板して防御率1.93だった石川


 プロの世界は厳しい。ドラフト会議で指名された選手たちが大きな志を持って新たな舞台に挑戦する中、チームを去る選手たちがいる。CSファイナルステージを勝ち抜き、日本シリーズに進出したDeNA大和大田泰示楠本泰史ら一軍で実績ある選手が来季の戦力構想から外れて退団。そして、この投手にも来季の契約を結ばないことが通告されて驚きの声が上がった。大卒4年目の26歳左腕・石川達也だ。

 右足を地面すれすれまで下ろし、力をためてから踏み出すダイナミックなフォームから直球、チェンジアップ、カットボール、カーブのコンビネーションで打者を打ち取る。今季は15試合登板で2ホールドをマークし、防御率1.93。被打率を見ると対右打者が.261、対左打者が.310と走者を背負うことが多かったが、要所をきっちり締める。落ち着いたマウンドさばきでフィールディング能力が高い。高校時代に磨いた技術が糧になっている。

 石川は「横浜高時代に学んだフィールディングは、その後の法大、そしてプロに入った今も非常に生きていると思います。現在もプロの世界で活躍する先輩の涌井秀章さん、柳裕也さん(ともに現中日)、後輩の及川雅貴投手(現阪神)とか、誰を見てもやっぱりうまいなと感じます。僕は2学年上の伊藤将司さん(現阪神)のフィールディングやけん制をずっと見てマネしていました。目の前で見てきた中では、ずば抜けてうまかったです。横浜高では、バント処理の際にマウンドからすぐ降りることは当たり前で、その中でも打球への入り方など、渡辺元智元監督、小倉清一郎元部長にみっちりと教わっていたので、それはプロに入ってからもしっかりと生きています」と語っていた。

支配下枠の人数の問題


 5月下旬に登録抹消以降は一軍再昇格の声が掛からなかったが、イースタン・リーグで28試合登板して4勝2敗、防御率2.84で42年ぶりのイースタン優勝、球団初のファーム日本一に貢献した。左のリリーバーが手薄なチーム状況を考えると、来季は1年間フルで稼働することが期待されると思われたが、戦力外通告を受けて退団が決まった。

 スポーツ紙記者は「支配下枠の人数の問題があり、育成契約を打診された模様ですが、正直驚きましたね。走者を背負っても動じないし、イニングをまたいでも投げられる。起用法の幅が広い投手です。ブルペン陣で左腕が手薄な球団は多いので獲得に興味を示す球団は多いと思います」と分析する。

育成からはい上がって


 横浜高、法大と野球の名門校を渡り歩いてきたが、苦労人だ。高校では先発の2枚看板だった同学年の藤平尚真が高卒ドラフト1位で楽天に入団したが、「ずっと高校からプロに行きたいと思っていました」と考えていた石川は力不足を痛感して大学進学を決断する。法大ではチームメートの左腕・鈴木昭汰、早大の早川隆久、慶大の木澤尚文ら同世代の好投手と切磋琢磨したが、4年春に左手首骨折の大ケガをする。それでも希望を捨てず最後までやり抜き、育成ドラフト1位でDeNAに指名された。

 ファームで好投を続け、2年目の22年に支配下昇格。背番号が「101」から「95」に代わった。昨年は28試合登板で3ホールド、防御率1.97と頭角を現し、オフに背番号「46」に。三浦大輔監督が現役時代に新人の92年から6年間つけ、左のセットアッパーとして活躍した田中健二朗が15年間つけた背番号だった。球団の期待は大きかったが、わずか1年でこの背番号に別れを告げ、新天地で現役続行を目指すことになった。

 戦力外通告を受け、新天地ではい上がった投手たちがいる。藤井皓哉(ソフトバンク)はその代表的なケースだろう。高卒で入団した広島は計14試合登板で1勝にとどまり、6年目のオフに退団。四国IL・高知で再スタートを切り、ソフトバンクに育成枠で入団。1年目に支配下昇格して55試合登板で5勝1敗3セーブ22ホールド、防御率1.12と大ブレークした。その後もセットアッパーで活躍し、チームに不可欠な右腕になった。

 運命は自身の手で切り拓いてきた。石川も再び一軍のマウンドで光り輝く日を目指す。

写真=BBM
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