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【大学野球】不祥事からの確かな変化と手応え 1年間の取り組みを実証した立大

 

山口部長が「成果」を確信した場面


立大は東大2回戦で連勝し、勝ち点2の4位で全日程を終了した。エール交換では涙する部員もいた[写真=BBM]


【10月27日】東京六大学リーグ戦第7週
立大13-5東大(立大2勝)

 立大の三塁ベンチは、試合前練習から活気がった。山口和範部長は学生たちと積極的にコミュニケーションを重ねていた。部員たちの声を拾う中で、確かな変化と手応えを感じた。

「野球だけをやればいいわけでありません。この1年で面談も重ね、学生として求められる、体育会活動のあるべき姿が芽生えてきました。監督、コーチも常日頃より、寮生活から目を配っており、学校教育の一環である野球の本質を理解してきている。この秋で4年生が引退しますので、3年生以下となる新チーム発足時にもう一度、活動理念を確認しようと思います。来年は連盟創設100年ですので、盛り上げていきたいと思います」

 立大は昨秋、一部の野球部員による複数の問題行為が一部報道で発覚した。大学側は調査委員会を設置。同委員会の報告を受けて昨年12月22日に「今後の対応」が示され、再発防止策が進められた。年明けの活動再開以降、木村泰雄監督以下、学生たちは今後の野球部の方針についてミーティングを重ねた。スローガンを「結束」とし学校生活、寮生活の安定、地域清掃など、野球以前の活動に力を入れた。大学生としての取り組みを抜本的に見直し、この1年で、一定の成果が出た。

 山口部長は「成果」を確信した場面がある。1勝1敗の明大3回戦。勝ち点をかけた一戦を、今季最多失点で大敗した(1対15)。

「主将の田中(田中祥都、4年・仙台育英高)がベンチ前の円陣で『応援してくれている人がいる。最後までやり切るぞ!!』と声をかけていたんです。どんな展開でも、下を向かない。田中は控えの立場ではありましたが、キャプテンとしての役割を果たしてくれました」

 立大は東大との最終カードを連勝。勝ち点2の4位で全15試合を戦い切った(7勝7敗1分け)。春は同じ15試合でも6勝8敗1分けの勝ち点1。昨秋は2勝8敗、勝ち点1。昨年に比べれば大きく飛躍し、春から秋にかけても、一歩前進した。とはいえ、3カードを1勝2敗で勝ち点を落とすという課題を露呈した。就任1年目を終えた木村監督は総括した。

「(勝ち点まで)あと1勝を取れないのは、技術的なもの、精神的なものがある。東京六大学、神宮に立つ上での最善の準備ができていたのか……。普段の生活面を含めて、レベルアップしていかないといけない」

「全力で取り組んでくれた4年生に感謝」


試合後の会見でポーズを見せる。木村監督[右]、田中主将[中央]は、この1年間の取り組みを総括した。左は5回1失点でリーグ戦初勝利の1年生・田中優[写真=BBM]


 主将・田中祥はこの1年を振り返った。

「昨年11月の新チームは苦しいスタートでしたが、多くの人が声をかけてくれる。応援してくださる方がいる。目指すべき像。チームとして何を大事にしようかを、ミーティングで話してきました。『応援されるチームを目指す』。自分たちのやってきたことに後悔はない。この1年、練習してきた中で行動、言葉で示してきたつもりです。最後まで一人も欠けることなく、全力で取り組んでくれた4年生に感謝したい。来年、再来年とつないでいけば、リーグ優勝も見えてくる」

 東大2回戦。三塁側の立大応援席には、多くのファンが詰めかけた。声援の一つひとつに、温かみがあった。

「ここまで応援していただいた中で野球ができたので、感謝の思いです」(田中主将)

 試合後のエール交換。両校のメンバーは、グラウンドにそのまま残った。立大は校歌『栄光の立教』をスタンドの観衆とともに声高らかに歌った。4年生にとっては最後の神宮であり、感極まり、涙する部員もいた。1年間の取り組みを、実証するシーンであった。

文=岡本朋祐
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