現有戦力へのハッパ
今秋は打率.488で首位打者となり、春、秋でMVPを獲得した
会場から驚きの声が上がった。10月24日に開催されたドラフト会議。
巨人がドラフト2位で指名したのが攻守で俊足を生かしたダイナミックな動きに定評がある遊撃手・浦田俊輔(九産大)だった。
一昨年の
門脇誠、昨年の
泉口友汰に続き3年連続ドラフトで大学生、社会人の遊撃手を獲得。1位で「高校生No.1遊撃手」の呼び声が高い石塚裕惺(花咲徳栄高)の交渉権を抽選で獲得したが、2位も即戦力遊撃手を指名した。他球団のスカウトは、「やられたと思いました。欲しかった選手です。巨人は門脇、泉口、
中山礼都がいるので大卒の遊撃手を獲らないと思いましたが……。スピード感あふれるプレースタイルで、打撃も十分にプロで通用すると思います。線は細いがパンチ力があるし、コンタクト能力が高い。1年目からリードオフマンとして活躍している
近本光司(
阪神)と重なります」と高い評価を口にする。
浦田の獲得は、現有戦力へのハッパをかけた意味合いもあるだろう。新人の昨年にシーズン終盤で遊撃の定位置をつかんだ門脇は攻守の軸として期待されたが、129試合出場で打率.243、0本塁打、21打点、9盗塁とプロ2年目は不本意な結果に。相手のマークが厳しくなる中で、結果を出し続ける難しさを痛感しただろう。迷いが生じたのか、積極性を失ったプレーが散見された。
浦田は強力なライバルになるだろう。九産大で1年春から出場し、2年秋から遊撃の定位置を獲得。3年秋のリーグ戦では9試合で15盗塁をマークし、4年春も相手バッテリーのマークが厳しくなる中で8盗塁を決めている。足が速いだけでなく、大学通算打率.394と広角に安打を打ち分けられる。
巨人には不動の遊撃として長年活躍した
坂本勇人がいる。今年から本格的に三塁にコンバートされたが、「遊撃の後継者」となる選手は坂本と比較される。当然重圧は掛かるだろう。巨人の遊撃を守るにはプレーの技術だけでなく、精神的な強さも求められる。浦田は有力候補に名乗りを上げられるか。前出の他球団のスカウトは「負けん気が強い性格でプロ向きだと思います。守備でミスをした時があったのですが、取り返そうと声を張り上げてボールを呼び込んでいました。門脇とのポジション争いは熾烈になるでしょう」と予測する。
リーグは違うが、5球団競合の末、
楽天が交渉権を手に入れた
宗山塁(明大)にも負けられない。球界を代表する遊撃なれるか。大きな野心を胸に抱き、プロの荒波に飛び込む。
写真=BBM