週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

【大学野球】侍ジャパン大学代表4年生投手の中で東日本国際大・藤井優矢が「プロ志望届」を提出しなかった理由

  0

全日本大学選手権で4強進出の原動力


東日本国際大の4年生・藤井は2024年ドラフトで、プロ志望届を提出しなかった。卒業後は社会人野球へ進み、2年後のドラフトを目指す[写真=矢野寿明]


 侍ジャパン大学代表は、かねてから「プロの登竜門」と言われる。2024年はプラハ・ベースボールウィーク(チェコ)とハーレム・ベースボールウィーク(オランダ)で優勝。日の丸を背負った選手24人は2つの国際大会で、結果を残した。

 投手11人の内訳は4年生4人、3年生7人だった。愛知工大・中村優斗(諫早農高、ヤクルト1位=第1回入札単独)、日体大・寺西成騎(星稜高、オリックス2位)、法大・篠木健太郎(木更津総合高、DeNA2位)がプロ志望届を提出し、10月24日のドラフト会議で指名を受けた。NPBスカウトから「即戦力」の評価を得たことになる。

 4年生投手4人のうちで唯一、プロ志望届を提出しなかったのは東日本国際大の最速150キロ右腕・藤井優矢(4年・角館高)だ。

 今年6月の全日本大学選手権では、2年ぶりの4強進出の原動力となった。圧巻の4連投で最優秀投手賞を受賞している

 吉備国際大との1回戦(6回1/3)から、和歌山大との2回戦(4回1/3)、そして上武大との準々決勝(7回1/3)といずれもロングリリーフ。魂の3連投で、18回無失点で準決勝進出を決めた。17奪三振とここ一番でギアを上げられるのが特長で、計2四死球と制球力も抜群。休養日1日を挟んだ早大との準決勝もブルペン待機した。2点リードした6回途中から救援し、早大の三番・吉納翼(4年・東邦高、楽天5位)に逆転3ランを浴びるも、その裏にすぐさま同点に追いつく。最後はタイブレークの10回表に力尽きたものの、大会3勝、23イニングで自責点2(防御率0.78)と圧倒的な数字を残した。気迫十分の投球は、相当なインパクトだった。

 キレのある140キロ後半のストレートに、変化球はカーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップ、ツーシーム、スプリット。その日の調子、相手打者との相性によって使い分ける器用さがある。

「(4連投の準決勝は)もうゲーム中に泣きそうなぐらい、体が張っていました。ただ、自分が降板したら終わりなので、任された以上は最後まで投げ切るのが役割だと思っていました。(3ランは)あの1球だけ、どこか疲れが出てしまった……。ただ、気持ちだけは抜けていなかった。難しい試合でした」

 大学日本代表候補に追加招集されると、最終選考合宿では堀井哲也監督(慶大監督)の目に留まり、初代表入りを遂げた。ハーレム・ベースボールウィークでは米国との決勝で胴上げ投手。プラハ・ベースボールウィークを通じ計4試合で9回1/3を投げ、自責点1(防御率0.96)と国際舞台でも躍動した。

社会人野球へ進む選択


 角館高(秋田)に入学時は遊撃手だった。「1学年上に投手がいなくて、チーム事情から1年秋から遊撃手と兼任するようになりました。投手専任になったのは大学入学後です」。縁があって東日本国際大に進学。藤井が1年生だった7月、藤木豊監督が就任した。かつて八戸大(現・八戸学院大)を率い実績十分で、多くのプロ野球選手を輩出。藤井にとっても、新指揮官との出会いが転機となった。「厳しく接してくれ、大きかったです」。

 3年春に4勝を挙げ、南東北大学リーグ優勝に貢献すると、全日本大学選手権で全国デビューを飾った。ところが、同秋は右肩を痛め、登板できなかった。リハビリを経た最終学年の春、エースとして全国4強へと導いた。

 大学日本代表候補合宿期間中、藤井に大学卒業後の「進路」について聞くと、慎重に言葉を選びながらこう答えていた。

「社会人が基本ですが、大学選手権次第と、自分の中では考えていたので、監督と相談という形です。自信もついてきましたので……」

 本気でプロを目指す上で、藤井には2つの条件があった。「監督に信頼されるピッチングをする。チームを勝たせる」。いずれもクリア。一度は迷ったが、やはり、当初からの方針であった社会人野球に進む選択をした。

 出身地である東北の強豪企業チームからは、故障していた3年時から声がかかっていたという。投げられない時期から高く評価してくれた相手の期待に、背くことはできない。社会人野球の最高峰である都市対抗野球大会で活躍し、故郷に恩返しする。これほど、モチベーション高く取り組める環境はない。

 この秋は南東北大学リーグを7季連続で制したが、明治神宮大会東北地区代表決定戦1回戦(対仙台大)で敗退。藤井は大学での公式戦をすべて終えた。休む間もなく、社会人合流まで、オフシーズンは体力強化に励む。

 好きな投手はソフトバンク有原航平だ。

「自分はそこまでスピードがないので、打たせて取りながら、ゲームの流れをつくっていくタイプ。三振を奪いたい場面では、三振を狙う。メリハリある、投球術が持ち味です」

 藤井は「気持ち」で動く投手だ。先発、救援、どのポジションでも対応可能なタフさが売りだ。一発勝負のトーナメントが多い社会人野球では一層、輝きを増すはずだ。採用してもらった会社のために全力で腕を振り、2年後、「即戦力」でのドラフト指名を目指す。

文=岡本朋祐

この記事はいかがでしたか?

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント 0

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング