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【大学野球】天皇杯はつかめずも…1年秋から7シーズン、記憶に残る足跡を記した法大・篠木健太郎

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明大1回戦はリミッター解除


法大・篠木は明大1回戦を7回3失点で敗戦投手。気迫の投球を貫いた[写真=矢野寿明]


【11月3日】東京六大学リーグ戦第8週
明大4-2法大(明大1勝)

 法大はすでに優勝の可能性が消滅している。東京六大学リーグ戦は対戦する5校との「対抗戦」であり、最終カードまでしっかりと戦う義務がある。明大1回戦で先発した篠木健太郎(4年・木更津総合高)は通算49試合目、特別な思いでマウンドに立っていた。

「1回戦、3回戦で投げることを大島さん(大島公一、監督)にお願いして、どちらも取ろうと、制限をかけながら投げていました。高村さん(高村祐、助監督)からも『大丈夫か?』と言われながら(持ち味であるスピードボールを)一つ削ってでも、第一優先として、エースとしてマウンドを守り続ける姿を残したいと思っていました。結果として優勝できれば良かったですが、僕の力不足もあって……。(最優秀防御率のタイトルを獲得した3年春の53イニングを上回る、シーズン自己最多59イニングで)たくさんのイニングを投げられた秋は充実していました」

 明大1回戦は「この1試合に思いをかける」と、リミッター解除。「投げる中で、これをやったらスピードが上がるというのがある」。持ち味のストレートで押していく投球がさえた。真っすぐでの空振りも多く「イメージとのギャップが少なかった」と、思い描いたボールを投げることができたという。

 6回まで2安打無失点の力投も、7回に3失点。この回で降板し、敗戦投手となった。法大は2対4で1回戦を落とした。

「秋の中では一番、良い感覚でしたが、7回は失投。甘めに入った。自分の責任で、この先に生かしていきたい」。下級生時代から顔を合わせてきた明大の主将・宗山塁(4年・広陵高)との直接対決。「(楽天ドラフト1位で)注目されているバッター。楽しんで投げられました。上の世界へ行っても対戦機会があれば、負けたくない」。3打席で2つの四球を与え、第3打席は一ゴロに抑えている。

2人の恩師が生観戦


 篠木は10月24日のドラフトでDeNA2位指名を受けた。この日は木更津総合高の五島卓道監督と青山茂雄部長が神宮のネット裏で観戦した。篠木が高校3年生だった2020年夏はコロナ禍で、甲子園出場をかけた千葉大会は中止。千葉県高野連主催の独自大会で優勝し、主将を務めた篠木は有終の美を飾った。

 五島監督は、4年前の夏を回顧する。

「優勝しても、甲子園がない。その中でも勝った。それは、大変なことです。東京六大学でプレーしたいとの希望があり、ウチに進学してきました。4年後のプロ入りを目指して法政大学へ進学し、当初からの思いを実現させました。この4年間で、人とのつながりも増え、心身とも成長したと思います。また、プロへ行って勉強することも多々あるかと思いますが、より一層、頑張ってほしいです」

 篠木は4学年上の左腕・早川隆久(早大-楽天)ら、東京六大学の各校へ進学した先輩にあこがれて、木更津総合高へ進んだ背景がある。五島監督は「篠木には考える能力があり、早川とかぶるところがある」と明かした。早川は探求心が旺盛で、責任感が強く、エースとしての魂を見せてきた。篠木も同様だ。

明大1回戦、法大応援席には多くの観衆が詰めかけた。4年生エース・篠木の熱い思いが伝わったに違いない[写真=矢野寿明]


 試合後、篠木に恩師2人の観戦を伝えると、驚いた表情を見せた。

「知らなかったです(苦笑)。中学のときにエースでもなかった自分に、声をかけてくれました。木更津総合高校に進んでいなければ、今、こうして法政大学でも投げられていない。いろいろな道を切り拓いてくれた五島監督と青山部長には、感謝しています」

 49試合、14勝12敗、防御率2.26。1年秋から7シーズン、チームのために腕を振ってきたが、天皇杯をつかむことはできなった。しかし、記憶に残る足跡を明確に記した。

「これだけ投げさせてもらい、大島監督には感謝しています」

 1年時に4年生の主将だった右腕・三浦銀二(今季までDeNAに在籍)と、高校の先輩でもある左腕・山下輝(ヤクルト)の「マウンドを守る姿」にあこがれた。篠木は2年春から背番号18を着け、常にエースとしての「覚悟」を持って投げてきた。今さら説明するまでもなく、3年生以下は「勝利への執念」を見て学んだはずである。

文=岡本朋祐

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