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「ポール間を走っている姿がまず頭に思い浮かぶ」和田毅へ早大時代の恩師・野村徹氏のメッセージ

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熱血指導した最後の教え子


早大時代、和田は4年間で東京六大学通算27勝をマーク。法大・江川卓の443奪三振を更新し、476奪三振まで数字を伸ばした。原点は活動拠点の東伏見グラウンド[写真、現・安部球場]にある[写真=BBM]


 ソフトバンク和田毅投手(43歳)が11月5日、今季限りでの現役引退を発表し、記者会見を開いた。早大時代の4年間、指導に当たった野村徹氏(87歳)がメッセージを寄せた。9月13日には和田の1学年下のヤクルト青木宣親(42歳)が現役引退を表明。野村氏は10月2日に行われた青木の引退試合(対神宮、対広島)に足を運んだ。和田の引退により、母校・早大で熱血指導した最後の教え子が、ユニフォームを脱ぐ形となった。

【野村徹氏のメッセージ】

 和田は自分の体をよく知っている。足の内転筋を痛めて、走れなくなったのが、致命傷だったと思います。習慣であったランニングに、ピッチングのすべてが出てくるわけですからね。(現役最年長44歳の)ヤクルト・石川雅規投手と一緒です。調子が良いときは、走りで分かる。そこを重要視してきました。走れない悔しさ、歯がゆさがあったかと……。

「松坂世代」の中で生き残ってきて「1年でも長く……」と思っていたはずですが、こればかりは仕方ない。本人からの連絡によると、9月ぐらいから頭にあったそうです。「チームに迷惑はかけられない」「(チャンスがある)若手にも迷惑がかけられない」と、日本シリーズ後のタイミングでの発表になったそうですが、周囲への配慮が、彼らしいですね。

 学生時代も、故障が多かった。常日頃から、十分なケアをしていました。にもかかわらず、なぜ多かったかと言えば、体を目一杯使って投げていたからです。改めて、映像を見ても、相当なエネルギーを消費していました。今回の場合、エンジンの元(下半身)から故障した。和田は、小手先では野球はできない。

 和田の最大の良さは、初速と終速の差が少ないこと。人一倍のトレーニングの賜物です。つまり、打者の手元でのキレが優れている。140キロそこそこでも、三振を量産できたのは、そこに秘密があります。初速と終速の差が開いてくると、そのキレが落ちる。一気に飛びやすいボールになってしまう。逆に飛んでしまうんです。私の記憶が正しければ、本塁打で試合が決まる試合が多かった印象。すべては、ピッチャーの宿命ですが……。

 大学4年間の思い出と言えば、東伏見グラウンド(現・安部球場)のポール間を走っている姿がまず、頭に思い浮かびます。

野村徹氏は1999年から2004年まで母校・早大を指揮。和田が在籍した4年時の02年は春秋連覇へと導いた。写真は2002年春の早慶戦[写真=BBM]


 もう一つは、4年秋。法大3回戦で江川卓さん(元巨人)の奪三振記録を更新し、明大、立大から勝ち点を挙げ、慶大1回戦で(早大として52年ぶりの)連覇を達成しました。迎えた2回戦。9対2とリードした9回裏、私は和田を三番手投手に指名しました。イニング頭の交代時にマウンドへ行くのは初めてでした。具体的に指示することは、何もありません。投球練習の後「和田、全部、三振狙っていけ!!」。最初で最後の三振指令でした。最後は和田らしく、試合を締めてくれました(2奪三振)。立派な4年間でした。

和田の原点はランニング。4年間、東伏見グラウンドではひたすら、下半身を強化した


 10月2日。青木の引退セレモニーで花束を贈呈させていただきましたが、この日の試合前、東伏見に足を伸ばしました。練習時に小宮山悟監督から「一言、お願いします」とありましたので、選手の前でこう言いました。

「東伏見で、悔いを残さないこと。東伏見で取り組んできたことを、神宮で披露するだけ。早稲田はその精神が受け継がれている。『一球入魂』。それは、東伏見にないといけない」

 早稲田大学野球部で監督を務めた6年、私が学生に言い続けたのは「東伏見=神宮」。まさしく、和田はそれを体現した一人です。走って、走って、投球の下地を作り上げた。投手として大事なものを、早稲田に残しました。

 今季引退した青木に次いで、(早大で指導した)最後の一人……。寂しいですねえ。いよいよ、来たか、と。あと1年かな、とは思っていましたが……。和田から電話をもらったときには一層、寂しさを感じた。3月に引退セレモニーを開催すると聞きましたが「よく頑張った」と声をかけてやりたいと思います。

写真=BBM

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