キーマンは「自分ですかね!!」

明大の主将・宗山は翌日に控えた早大との優勝決定戦に向けて、意気込みを語った[写真=BBM]
東京六大学リーグ戦は第9週の早慶戦で、慶大が早大に連勝し、勝ち点を挙げた。早大と明大が8勝3敗2分け、勝ち点4で並び、優勝決定戦が11月12日に行われる。優勝決定戦は2010年秋(早大10対5慶大)以来、14年ぶり。早大と明大の対決は1948年春(早大5対1明大)以来、76年ぶりである。
決戦を翌日に控えた11日、明大の主将・
宗山塁(4年・広陵高、
楽天ドラフト1位)が報道各社の取材に応じた。優勝決定戦は一発勝負。キーマンを聞くと、即答した。
「自分ですかね!! 自分が打てば点が入りますし、どんな形でも良いので、1点を多く取るために、打撃でも守備でも、勝負どころで良い結果を出したい」
前日の早慶戦は、東京都府中市内の活動拠点である島岡寮でチェックしていた。
「自分の部屋で見ていたんですが、試合終盤は食堂に結構な人数がいて、盛り上がっていました。特に4年生の勝ちたいという思いが伝わってきました。慶應さんは順位を抜きにして、早慶戦であれだけの強い気持ちで連勝。自分たちはそこしか希望がなかった。慶應さんの4年生の気持ちが見えた試合。自分たちも最上級生の力を見せられたらと思います」
昨晩は宗山主将と副将3人で決起集会を開き、幹部が一丸となってチームの士気を高めた。
明大は今春の早大戦を1勝2敗、今秋は2敗1分けでいずれも勝ち点を落としている。
「あと少しのところだと思うので、勝ちたい気持ちと、どれだけ落ち着いてやれるか」
勝利のへのポイントを4つ挙げる。
まずは、早慶戦からの流れを活用する。
「慶應さんに勢いがあって、早稲田さんは少し押されているように見受けらえました。そういうところ含めて、自分たちにも流れが来ているのかな、と。あとは、つかむのは自分たち。五分五分の勝負で、うまくその流れに乗っていければと思います」
次に試合の「入り」だ。明大は11月4日の法大2回戦から、中7日での試合となる。早大も第6週から2週(中18日)を空け、第9週では試合間隔によるズレが生じて、本来の実力を発揮できなかった背景がある。
「優勝決定戦という、独特な空気感にいち早く入っていけるような状態に持っていきたい。メンタル面と体を動かして、1球目から動ける準備をしていきたい」
もう一つのモチベーション
3つ目は先発が予想される早大の右腕エース・
伊藤樹(3年・仙台育英高)の攻略である。今秋は1回戦で8回1失点、3回戦で8回無失点に抑え込まれている(いずれも勝利投手)。春も1勝1敗と勝ち点をかけた3回戦で11回完封された。明大にとっては、天敵である。
「どんどんいろいろな球種を使って、ストライクを取ってくるので、自分から仕掛ける準備をしていきたい。とても良いピッチャーであることは間違いないですが、状態が良ければまったく打てない投手は、なかなかいない。打つべきボールを逃さずに打っていき、得点圏の場面では意識を置いていきたいです」
最後に、優勝決定戦に臨む上での姿勢である。
「リーグ戦ですと、成績が出たり、結果が数字に表れたりする。優勝決定戦は自分の結果どうこうよりは、とにかく最後の1点を取っていくという勝負になる。形どうこうではない。気負い過ぎず、自分たちで楽しんでやってきた中で、少しでも相手を上回ることができれば、優勝決定戦にふさわしいゲームができる。これまでやってきたことしか、ゲームには出ない。強い気持ちをゲームで出すことを、監督も期待している。結果が良かろうが、悪かろうが、やり切るだけです」
もう一つ、モチベーションがある。4年間、指導を受けていた明大・田中武宏監督が今秋限りでの退任を表明している。「今の4年生はずいぶん、お世話になっている。良い結果で、監督を送り出したい」。明大の伝統は「人間力野球」である。「もともとなかった試合。もう1試合できるのはうれしく思いますし、勝っても負けても、自分たちの試合で最後、決められるのは幸せです」。8シーズンプレーした神宮球場で、集大成を見せる。
文=岡本朋祐