戦力アップに向けて

来季へ向けてFA選手獲得へ動くと見られる阿部監督率いる巨人
4年ぶりのV奪回を飾り、来季は13年ぶりの日本一を目指す巨人。戦力アップに向け、FA権を行使した
大山悠輔(
阪神)と
甲斐拓也(
ソフトバンク)の獲得レースに参戦する可能性が報じられている。
大山は阪神の四番としてチームを牽引し、38年ぶりの日本一に輝いた昨年は最高出塁率(.403)のタイトルを獲得。2020年には
岡本和真(巨人)と熾烈な本塁打王争いを広げ、自己最多の28本塁打をマークしている。リーグ屈指の右の強打者と言えるだろう。
甲斐は正捕手を長年務め、17年から4年連続日本一と常勝軍団を築いたソフトバンクを象徴する選手だ。侍ジャパンの常連で21年に東京五輪の金メダル獲得、昨年のWBC制覇に大きく貢献している。今季は119試合出場で打率.256、5本塁打、43打点をマーク。守備面でも投手陣の持ち味を引き出す配球と強肩で7度目のゴールデン・グラブ賞を受賞し、4年ぶりのV奪回を果たした。

阪神の四番として打線の軸となってきた大山
スポーツ紙記者は、「大山と甲斐は残している数字だけでなく、野球に取り組む姿勢も素晴らしい。大山は常に全力疾走を怠らず、甲斐も投手に対する声掛け、内外野のポジショニングに常に気を配る。他球団からの評価が高いのは納得できます」と評価する。
レジェンドからも高い評価
現役時代NPB最多の通算3085安打を樹立した野球評論家の
張本勲氏は、22年に週刊ベースボールのコラムで自身が選んだ守備のベストナインを選出している。
王貞治氏(現ソフトバンク球団会長)、
長嶋茂雄氏(現巨人終身名誉監督)、
イチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)と超一流のレジェンドの名前を挙げる中、甲斐が現役の選手で唯一選出された。
張本氏は「私はバットで成績を残してきた選手だが、もし監督を務めるなら打撃力よりも投手力を重視した守りのチームをつくるだろう。こう言うと誰もが驚くのだが、チームが勝つ可能性を考えたら分かることだ。強いチームというのは1点を奪うこと以上に、1点を守ること、与えないことに長けている。そこで今回はグラブ特集でもあり、私が選ぶ守りのチームを考えてみたい。守備のベストナインと考えてもらってもいい。あくまで私の意見ということで、ご理解いただきたい」と強調した上で、甲斐を選んだ理由を以下のように語っている。
「捕手は私が現役のころはノムさん(
野村克也、南海ほか)に森さん(
森祇晶、巨人)が名捕手と言われ、少し前になると古田(
古田敦也、
ヤクルト)、谷繁(
谷繁元信、横浜ほか)がそうなのだろうが、私は現役の甲斐(甲斐拓也、ソフトバンク)を推したい。数年前に生で見た日本シリーズでの衝撃がまだ残っている部分が大きいのだが、肩の強さ、スローイングの速さ、送球の正確性とすべてが完璧だった。こんな捕手がいるのかと心底驚いたものだ。育成出身というのが信じられなかった。まだ29歳の現役選手で打撃に課題があるようだが、守りだけなら歴代屈指の捕手だと考える」
野村克也氏からの教え

ソフトバンク4年ぶり優勝の立役者となった甲斐
甲斐が尊敬するのが、球界屈指の名捕手で監督としても名将で知られた野村克也氏だ。20年から野村克也氏以来43年ぶりに捕手で背番号「19」を着けている。野村氏の生前に週刊ベースボールの企画で対談したことも。追悼インタビューの際に、こう語っていた。
「野村さんからは本当にたくさんの言葉をいただいて、その言葉から多くのことを学ばせていただいて、一つひとつ、そのすべてが僕の『芯』となっています。印象に残っているものを問われても、選ぶのが難しいほど。先ほども言いましたが、野球以外の部分でもすごく勉強になる部分が多いです。『人間はなぜ生まれてくるのか』。そういったことも本には書いてあったりするのですが、それを受けて、野球選手としての“甲斐拓也”だけではなく、一人の人間としての“甲斐拓也”がつくられてきたと思っています」
「まず“人として”という題から入るんですよね、野村さんは。『人として生まれる』『人として生きる』『人を生かす』。そういったところから勉強になりますし、僕らは野球選手ですけれど、野球だけやっていればいいというわけではない。一社会人として、一人の人間としてといった部分が、まずは大事になると教えてくださいました。もちろん野球に関しても、『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』というように、キャッチャーとして、特に心に残る言葉というのも多いです」
球団の垣根を越えて選手、指導者の人望が厚い大山と甲斐は、FA権を行使してどのような決断を下すか。
写真=BBM