球団経営としては痛手
今季は自己最多の10勝をマークした佐々木
11月17日にZOZOマリンスタジアムで開催された
ロッテのファン感謝デー。開会の挨拶を行った
吉井理人監督に促されると、
佐々木朗希が別れの挨拶と決意表明を口にした。
「今回、球団に後押ししていただき、メジャーに挑戦することになりました。5年間、熱いご声援ありがとうございました。ケガなどで、なかなかうまくいかず、つらい時もあったんですけど、監督、コーチ、チームメート、スタッフ、たくさんの方に支えられ、乗り越えることができました。今回これまでいただいた、熱いご声援、厳しい激励も力に変えてアメリカで頑張ってきます」
今オフにポスティングシステムを利用してメジャー挑戦。球団が佐々木の決断を認めたことにすべてのファンが納得しているわけではない。在籍した5年間で規定投球回に達したシーズンはゼロ。白星も今季の10勝が自己最多で、「令和の怪物」と評された右腕の能力を出し切ったとは言えない。
ダルビッシュ有(パドレス)、
大谷翔平、
山本由伸(共にドジャース)、
今永昇太(カブス)ら日本人メジャー・リーガーはNPBでエースにふさわしい活躍を見せ、海の向こうに渡っている。佐々木が納得のいく結果を残したかと言われると、疑問符が付く。
現在23歳のためメジャーの「25歳ルール」により、25歳未満の選手の移籍はマイナー契約しか結べない。あと2年後の挑戦なら少なくとも50億円以上の譲渡金がロッテに入ってくると予測されていたが、今オフの挑戦で3億円以下の譲渡金しか入ってこないことも、球団経営としては痛手だ。
投打がかみ合えば怖いチーム
佐々木が今オフに退団することで戦力ダウンは必至だが、他球団のスコアラーは違った見方を示す。
「能力がずば抜けている投手であることは間違いないですが、故障が多く、1年を通じて先発ローテーションで回ったシーズンがない。絶対的エースという位置づけではなかったと思います。過去の戦いを振り返ると、ロッテは下馬評が低いときほど強い。先発陣は
小島和哉、
種市篤暉、FAで去就が注目されて残留を決断した
西野勇士の3本柱に加え、
C.C.メルセデス、今季途中入団のダラス・カイケルが残留すればゲームメーク能力が高い投手なので計算できる。ベテランの
石川歩、
唐川侑己、若手成長株の
田中晴也、
中森俊介を組み合わせながら、吉井監督が投手陣を整備するでしょう。打線も
佐藤都志也、
藤原恭大、
友杉篤輝ら期待の若手が殻を破ろうとしている。投打がかみ合えば怖いチームです」
今季は11連勝もマーク
吉井監督が昨年から就任して2年連続Aクラス。今季は5月14日の
オリックス戦(那覇)から4つの引き分けを挟み、19年ぶりの11連勝をマークしている。シーズン終盤に失速したが、地力はある。野球評論家の
大久保博元氏は週刊ベースボールのコラムで、ロッテの戦いぶりを高く評価していた。
「弱いチームが勢いに乗って何連勝かするときはあります。でも、11連勝はまぐれでもなかなかできないこと。真の実力が付かないと10連勝以上はできない。特にプロのリーグ戦で実力は拮抗しているので、大型連勝ができる確率は低いのです。私がすごいな、と思うことは11連勝ではなく、4つも負けずに引き分けたことです。約2週間以上も負けの雰囲気を味わっていないんです。これは非常に精神的に大きく響いていきます」
「実際に交流戦に入ってから
ヤクルトとの第2戦目は9回に同点に追いつき、引き分けに。さらには第3戦目も同じような展開でこちらも引き分けに持っていきました。ここまでくると9回までに1点差なら何かが起こるんではないか、という気持ちになってきます。案の定、
阪神との2試合では9回に追いつき、延長でサヨナラ勝ち。勢いもありながら、しっかりと勝ちゲームにつなげる試合展開が行われているからこそできるのです」
頂点にたどり着くためには、現有戦力の底上げと戦力補強が必要なことも事実だ。「佐々木がいなくなったから弱くなった」と言われるのはナインも心外だろう。ファンの熱狂的な声援を背に受け、1人でも多くの選手が覚醒することを期待したい。
写真=BBM