全試合四番で出場
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巨人不動の四番として優勝に貢献した岡本和
今オフのFA市場で動向が注目されている選手が
阪神・
大山悠輔だ。巨人が獲得に乗り出していることが報じられ、全力で慰留に努める阪神と一騎打ちの様相を呈している。
ライバル球団の四番として、巨人の前に立ちはだかってきた。2020年に自己最多の28本塁打をマークすると、昨年は打率.288、19本塁打、78打点で最高出塁率(.403)のタイトルを獲得。38年ぶりの日本一に大きく貢献した。今季は春先から状態が上がらずファーム降格を味わったが、夏場以降は調子を上げて四番に返り咲いた。打率.259、14本塁打、68打点。前年より成績を落としたが、得点圏打率.354と勝負強さが光った。
巨人が大山の獲得を実現した場合、注目されるのが守備位置だ。入団以来三塁がメインポジションで、内外野を守った時期があったが、
岡田彰布前監督が就任した昨年以降は2年連続で一塁に固定された。巨人でも一塁を守るなら、
岡本和真の守備位置をどうするか。今季は一塁の定位置で起用される方針だったが、チーム事情でシーズン途中から三塁や左翼を守った。7年連続30本塁打達成はならなかったが、全試合で四番を務めて打率.280、27本塁打、83打点をマークした。
井端監督の守備評価
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現役時代の井端監督。中日でゴールデン・グラブ賞を7度獲得した
岡本は三塁でゴールデン・グラブ賞を2度受賞している。16~18年に巨人の内野守備走塁コーチで、指導に当たったのが現在侍ジャパンの
井端弘和監督だった。井端監督は18年11月に週刊ベースボールの取材で岡本の守備について、「バウンドが合わないと、ノッキングを起こしたみたいに途端に不自然な足の運びになる。ここが狂えば、当然、スローイングも安定しない。体も硬かったから、まずはスムーズな足の運びを身に付けることと、体を柔らかくすることから始めました」と明かしている。
19年は一塁で116試合出場したことも、プラスに働いたという。「『まず捕球』の意識が身に付きました。おかげで捕る、投げる、のバランスが良くなった。スローイングも焦って突っ込むようなフォームで安定しませんでしたが、これもバッティングと同じ。しっかりと軸足に乗せて投げる意識付けをし、練習で繰り返したことで、今はまずまず見ていられます。もともと肩は強かったし、正しい体の使い方を練習したので、十分にサードを守れると思いますよ」。
井端監督は現役時代に球界を代表する遊撃の名手として活躍し、ゴールデン・グラブ賞を7度受賞している。岡本を見守る視線は温かく厳しい。「あと2~3年、やってきたことを意識して続けられるか。横着をすればすぐに元の悪いクセが顔を出します。ただ、2~3年頑張って続けられれば、イヤでも体に染みつきます。そうなったら、安心して見られるようになると思います」と期待を込めていた。
左翼起用での懸念は?
岡本は20~22年まで三塁一本だったが、昨年以降は一塁、三塁、外野を守っている。スポーツ紙記者は「打撃に集中させるためにも、できるだけ守備の負担を軽減したい思いが首脳陣にあるでしょう。ただ、三塁は
坂本勇人がいる。遊撃からコンバートして1年目でゴールデン・グラブを受賞しました。そうなると、岡本は左翼で起用の可能性が考えられる。決して守備範囲が広いわけではないですし、本職のポジションではないので打撃に及ぼす影響が気になるところですが……」と指摘する。
今季は得点力不足に苦しんだ打線強化に向け、本職が捕手の
大城卓三を一塁、内野を守るココ・モンテスを左翼で起用した。柔軟な起用法が功を奏して4年ぶりのV奪回を飾ったが、主力選手は1つのポジションに固定して戦うのが理想だろう。FA補強に成功しても、チーム力の底上げにつながるとは言い切れない。大黒柱の岡本和は来年どのポジションを守るのか。チームの命運を握る起用法になりそうだ。
写真=BBM