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日本シリーズはベンチ外も…現役ドラフトで移籍の右腕に「先発で復活」期待が

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メキシコで聞いた一報


現役ドラフトでDeNAからソフトバンクへ移籍することになった上茶谷


 運命とは不思議だ。DeNA・上茶谷大河が、現役ドラフトでソフトバンクに移籍することが決まった。東洋大の同級生で切磋琢磨した甲斐野央(西武)がドラフト1位で指名され、DeNAで慕っていた森唯斗が守護神として活躍した球団から、先発での復活を期待されて指名された。

 DeNAは日本シリーズでソフトバンクを4勝2敗で撃破し、26年ぶりの日本一に輝いたが、上茶谷は日本シリーズの出場資格40人から外れていた。救援から来季の先発転向に備えてメキシコのウインター・リーグに参戦していた最中に、ソフトバンクに移籍の一報を聞いた。驚きを隠せないのは無理もない。メキシコから帰国し、12月12日に入団会見を行った。

 背番号は「64」に。ソフトバンクの球団公式ホームページを通じ、「連絡が来たときはビックリしました。打線も守備も投手陣もすごい、最強だと見ていて思っていました。先発として結果を出したいと思いずっとやってきたのでこの機会をチャンスと捉えて結果で恩返しをしたいですし、そのためにメキシコに行っていて、そこで新たに掴んだものもあります。それをしっかり出して新しい自分を新天地で発揮できるよう頑張ります。まずは開幕ローテーションに入ること、二桁勝利をすることを目指して頑張ります」と誓った。

殻を破り切れなかった6年間


 DeNAでは殻を破り切れなかった。ドラフト1位で入団し、新人の19年に25試合登板で7勝6敗、防御率3.96をマーク。野球評論家の川口和久氏は週刊ベースボールのコラムで、上茶谷の実力を高く評価していた。

「実は、春季キャンプで彼を見て、これは勝てる投手だなと思い、『1年目から10勝はできるでしょう!』とテレビでも太鼓判を押していた」

「彼のピッチングフォームの特徴は、トップのときのヒジの位置が低いこと。それで低いまま体を開かず我慢して体を前に持ってきて、ヒジの位置も並行移動というのか、そのままの高さで前に持っていき、最後に強く柔らかく振ってリリースする。下半身の使い方もいい。バッターからすれば『ここ!』と思ったタイミングから少しずれ、阪神のバッターがそうだったがボール1個分、差し込まれる。スピードガンより打者の体感は5キロ増しくらいじゃないかな」

 だが、その後は故障の影響もあり20年は2勝、21年は1勝と白星が伸びない。救援に配置転換された昨年は46試合登板で5勝3敗4ホールド、防御率2.11をマークしたが、今年は6月上旬に走塁の際に右足首を捻挫したことが大きく響いた。一軍復帰に3カ月以上かかり、18試合登板で2勝2敗1ホールド、防御率4.37。阪神と対戦したCSファーストステージでは第2戦に登板したが、日本シリーズはベンチ外に。チームは2連敗から4連勝でレギュラーシーズン3位から下克上を飾ったが、貢献できなかった悔しさが強かっただろう。

タレントがそろう大学同級生


 上茶谷がともに汗を流した東洋大の同学年はタレントがズラリとそろっている。ドラフト当時は甲斐野、梅津晃大(中日)と共に「東洋大3羽ガラス」と形容されたが、プロに入団したのはこの3人だけではない。ドラフト7位の中川圭太(オリックス)は21年からリーグ3連覇の立役者となり、社会人経由でプロ入りした藤井聖(楽天)は今季自己最多の11勝をマークし、早川隆久と共に球団史上初の左腕で2ケタ勝利を達成した。末包昇大(広島)も昨年11本塁打をマークし、貴重な和製大砲として期待が大きい。上茶谷は週刊ベースボールの取材で、大学の同期についてこう語っている。

「うーん、言えるのはやっぱり周りの人に恵まれたってことですよね。特に大学の同期。中には甲子園出場で完全燃焼して、もういいやって投げ出してしまう選手もいたけど、僕ら甲子園出ていない組っていうのか、すごいやる気に満ちあふれていたんですよ。皆で頑張ろうって意識が強かったし、彼らの存在がすごく大きかったと思いますね」

 プロは結果がすべての世界だ。東洋大では4番手投手だった藤井が今年は最も輝いた。楽天と同一リーグのソフトバンクに移籍した上茶谷は負けられない。先発陣の層はDeNAより厚いかもしれないが、新天地で光り輝けるか。

写真=BBM

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