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「地域創生」「野球普及」「生徒教育」 千葉日大一高が元ロッテ・青松慶侑氏と「野球で遊ぼう!」を実施

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開催は昨年に続き2度目


「並びっこベースボール」では守備側が捕球すると、全メンバーが集まり「せ~の! アウト!!」とコール。攻撃側の「せ~の! セーフ!!」とタイムを競う[写真=BBM]


 千葉日大一高野球部は12月15日、船橋市内の同校グラウンドで「野球で遊ぼう!」を実施した。地元の船橋市、習志野市を中心に3歳から小学校6年生まで約80人が参加。講師役は元ロッテ青松慶侑氏と、千葉日大一高の硬式野球部員41人が務めた。同校は小学校、中学校、高校が併設。この日は、小学校から約20人が参加した。グラウンドは共用で、16時までは小学生が使用するため、部活開始までは、高校生と小学生が触れ合う機会も多い。

 同イベントの開催意義は、多岐にわたる。地域創生、野球普及、生徒教育の三本柱である。

昨年に続き、元ロッテの青松氏[右]が講師役を務めた。左はイベントを企画・考案した千葉日大一高・若山監督[写真=BBM]


 開催は昨年に続き2度目。就任3年目の千葉日大一高・若山大輔監督は意図を語る。

「野球のできる場所がない。ウチのグラウンドを開放して、子どもたちに楽しんでもらおうというのが最大の開催趣旨です。学校が主催で、元プロ野球選手を講師としてお呼びする例は、あまりないと思います。開催にあたっては各方面の関係者の尽力、昨年から青松さんにはご協力をいただき、熱心な指導でありがたく思っています。主催者は昨年の千葉県高等学校野球連盟から私どもの学校にして、今年はこちらから船橋市教育委員会、習志野市教育委員会に、ご後援のご依頼をしました。各小学校にはポスターも配布していただき、認知度が一気に上がり、昨年の倍近くの参加者が集まりました。地域貢献のため、来年以降も継続していきたいと思っています」

 若山監督はエネルギッシュな指導者である。日大高、日大では捕手としてプレー。大学卒業後は4年間、母校・日大高で外部コーチを務めた。その後、土浦日大高で1年間、コーチを務め、この間に教職資格(地歴)を取得。2年間、非常勤講師として日大高の教壇に立ち、19年に千葉日大一高に赴任した。野球部顧問を経て、22年から監督として率いている。

 とにかく自ら動く。遠くは高知の明徳義塾高・馬淵史郎監督、県内では習志野高・小林徹監督の下を訪ねるなど、百戦錬磨の監督から指導論を勉強。赴任当初、部員は2学年で17人という厳しい時代もあったが、SNSなどを駆使して、野球部の魅力を発信。若山監督と同い年である荒木恒部長との二人三脚の熱血指導で、昨今の部員増へとつなげている。

「私たちは大会で勝つことを目標に活動していますが、正直『甲子園出場』と胸を張って言える学校ではありません。競技力向上以外の部分で、高校生として、人としての力を高めるのは大事なことです。現在の教育現場ではコロナ禍以降、生徒たちは他人に興味がない、コミュニケーション能力が不足しているのが実情です。こうして取材をしていただいたり、大人や子どもたちと接していく中で、生徒が成長するきっかけになってほしいと願っています」(若山監督)

テーマは「盛り上げること」


内野部分では青松氏が守備の基本を指導した[写真=BBM]


 この日のイベントはグラウンドを4つの種目(守備、投球、並びっこベースボール、打撃)に分けて、年齢で区分けをして約2時間で回した。守備は青松氏が丁寧に指導し、投球はネットに向かって投げ、野球部員が球速を計測。打撃はティー台にボールを乗せて、約20メートル先の小学校工事中の柵である「ホームランラグーン」を目指してフルスイング。並びっこベースボールはティーボールの簡易版で、守備側が捕球した人に集まるのと、打者走者が打席周辺のコーンを回ってくる(約20メートル)までのスピードを競う。「せ~の! アウト!!」「せ~の! セーフ!!」と遊びの延長で楽しむことができ、グラウンドは子どもたちの歓声が響き渡った。

ティーネットに向かって投げる投球では、野球部員が球速を計測し、その場で子どもたちに数字を伝えていた[写真=BBM]


 青松氏はプロの現役引退後、野球とは別の業界で活躍しているが、スポーツ振興への思いは強いものがある。

「野球に限らず、スポーツが楽しい、やってみよう、もっとうまくなりたい、という感覚は子どもたちが成長する上で大切なことだと思っています。私自身、千葉ロッテマリーンズで12年お世話になりましたので、千葉に恩返ししたい思いもありました。野球に育ててもらいましたので、次世代にも、野球を通して学んでほしい。今日、最後に『楽しかった?』と聞いたら、子どもたちから『はい!』という元気な返事を聞くことができ、私としましても、昨年に続いて、このイベントへの参加意義、携わる喜びを強く感じました。子どもたちがスポーツを楽しむきっかけづくりを、これからもしていきたいと思います」

女児の姿も見られ、打撃ではティー台から「ホームランラグーン」を狙った[写真=BBM]


 主将・秦幸平(2年)は言う。左胸には子どもたちとの距離を縮めるため「こうへい」と、名前が書かれたシールを貼っていた。

「子どもたちを教える中で、野球を楽しむことの原点を改めて認識しました。想定以上のプレーが飛び出したり、一生懸命取り組んでいる姿に、私たちも刺激をもらいました。野球には、思いやりが必要です。このイベントを通じてチームとして考えて動くこと、チームプレーの大切さを学ぶことができています」

主将・秦は昨年に続く2度目の参加。イベントから多くを学んだ[写真=BBM]


 千葉日大一高は今秋、地区予選の代表決定戦で敗退し、県大会出場を逃した。二番・中堅の秦主将は来夏の千葉大会の目標を「県8強」と語った。秦主将は中学時代にプレーした志村ボーイズでは、控え選手の立場だった。

「硬式野球経験者は10人で、付属中学から上がってきたのが10人。自分自身を含めて、中学で活躍した選手はほぼいませんが、その中でも県上位へ進出できるところを見せたい」

 この日のテーマは「盛り上げること」。部員41人は子どもたちがエンジョイできるように創意工夫して、約2時間をコーディネートした。閉会式後も約1時間、グラウンドを開放。運動会でも見られる玉入れでは、紅白に分かれて競争。すっかり打ち解けた子どもたちが、高校生と一緒になって白球に夢中になった。付き添いの保護者も笑顔である。クリスマス前の忘れられないプレセントとなったはずだ。

文=岡本朋祐

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