2度セーブ王に輝いた助っ人

巨人への移籍が決まったマルティネス
巨人が
中日を自由契約になった
ライデル・マルティネスを獲得したことが、12月16日に発表された。
絶対的守護神として活躍した姿を中日ファンは忘れないだろう。育成契約を結んだのは2017年2月。翌18年に支配下昇格すると、19年以降は6年連続40試合以上登板。最多セーブのタイトルを2度獲得するなど、抜群の安定感で来日通算166セーブを挙げた。
今オフに3年契約が切れると、複数球団の争奪戦に。推定年俸2億3000万円から大幅アップが予想される中、中日も残留に全力を注いだが吉報は届かなかった。スポーツ紙記者は「12球団No,1の抑えであることは間違いないですが、マネーゲームになると厳しい。中日は低迷期が続いていますが、ブルペン陣は力のある投手がそろっている。彼らが奮起して力を発揮すれば、マルティネスの抜けたダメージは少ないと思います」と期待を込める。
育成からはい上がった右腕

今季は最優秀中継ぎを獲得した松山
新守護神の最有力候補が、今季自身初の最優秀中継ぎ投手を受賞した
松山晋也だ。魅力は逆境からはい上がるリバウンドメンタリティーだ。八戸学院大から育成ドラフト1位で入団すると、新人の昨年6月に支配下昇格を果たし、36試合登板で1勝1敗17ホールド、防御率1.27をマーク。今年は3月29日の開幕・
ヤクルト戦で一死も取れず4失点、翌日の同戦でも1回を投げ切れずに1失点と想定外のスタートとなったが、その後はきっちり立て直した。夏場に21試合連続ホールドをマークし、10年に
浅尾拓也(現中日一軍投手コーチ)が記録した25試合に次ぐ歴代2位の記録を樹立。59試合登板で2勝3敗41ホールド、防御率1.33と申し分ない成績だった。
球団別の対戦成績を見ると、セ・リーグ相手では巨人、
阪神、
広島の3球団に防御率0.00。本拠地・バンテリンドームでも27試合登板して25回2/3で無失点と完ぺきに抑え込んでいる。入団以来、一軍の公式戦でアーチを浴びていないことも強みだ。150キロを超える直球とキレ味鋭いフォークのコンビネーションで打者をねじ伏せる。向上心が強い松山は以前から抑えを希望していた。週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。
「(マルティネスが)残留だろうと移籍だろうと、結局は勝負なんですよ。僕の中では今年もそうでした。彼から抑えの座を奪うつもりでやってきていますし、常に勝負しているんです。残留しても来年は自分が抑えの座を奪うつもりでやりますし、そうでないと成長していかないじゃないですか。別に彼と僕の順番(8回と9回)が入れ替わってもいいわけですから。いつだって勝負なんですよ」
抑えは直球の球威、ウイニングショットになる変化球が重要だが、重圧に押しつぶされない強心臓であることも必要条件だ。松山は走者を背負ってもパフォーマンスが落ちない。抑えの適性があることは間違いない。
侍ジャパンにも選出された25歳

今年はさらに成長した姿をマウンドで見せた清水
また、25歳右腕の
清水達也も抑えを務める力がある投手だ。入団以来先発で力を発揮できなかったが、22年に救援に配置転換されたのを機に覚醒。3年連続50試合以上に登板し、今季は自己最多の60試合登板で3勝1敗1セーブ36ホールド、防御率1.40をマーク。過去2年間は3点台だった防御率が劇的に改善した。松山と同様に常時150キロを超える直球とフォークを武器に三振奪取能力が高い。制球力が向上したことで四球から崩れるケースが激減した。
今年11月には侍ジャパンに選出され、国際大会「プレミア12」に出場。圧巻の投球を見せたのが、スー
パーラウンドでチャイニーズ・タイペイ代表と対戦した試合だった。1点リードの5回無死満塁のピンチでマウンドに上がると、パン・ジェカイを投ゴロ併殺打に仕留め、ジャン・クンユーを137キロのフォークで空振り三振と無失点の快投。決勝でチャイニーズ・タイペイ代表に敗れて大会連覇はならなかったが、セットアッパーとして安定感が際立っていた。
守護神候補の松山、清水だけでなく、
藤嶋健人、
齋藤綱記、
橋本侑樹、
勝野昌慶、
祖父江大輔と救援陣に力のある投手がそろっている。マルティネスが抜けたから弱体化したとは言わせない。
井上一樹新監督の下でチーム一丸となり、逆襲を図る。
写真=BBM