ファームで過ごした1カ月が分岐点
2年連続最下位から2位に躍進した日本ハム。今オフは
アリエル・マルティネス、フランミル・レイエスの両助っ人外国人の契約延長が発表された。レイエスは残留が決まった後、「ファイターズ以外の場所でプレーすることは考えられませんでした。日本に到着した日から、球団に関わるすべての方が温かく接してくれて、自分の家にいるような気分で毎日を過ごしてきました。私と家族も、新しい機会を与えてくれた球団に非常に感謝しています」と球団を通じてコメントを残した。
来日1年目は103試合出場で打率.290、25本塁打、65打点。決して順風満帆だったわけではない。大きな分岐点は打率.211、2本塁打と状態が上がらず、5月13日に登録抹消されてファームで過ごした1カ月間だった。最初は落ち込んだが、日本野球に適応するために必要な時間であることを理解して気持ちを切り替えた。「ファームに行っても、みんなが僕を受け入れてくれたから、僕もしっかりと野球をすることができた。その感謝を伝えたいと思って、若い子たちを連れてご飯も行けた」とチームメートとの絆が深まった。
エスコンFで本塁打量産
ファームでリフレッシュし、日本人投手と対戦する際のタイミングの取り方、配球を学ぶことで打撃がガラッと変わった。6月15日に一軍復帰以降は77試合出場で23本塁打。打率もグングン上昇し、8月は打率.403、8本塁打、23打点と大爆発で月間MVPを獲得した。25本塁打のうち、エスコンフィールドで19本を放った。本拠地で本塁打を量産した秘訣について、週刊ベースボールの取材でこう語っていた。
「エスコンFで多くのホームランを打てているのは、自分のホームだからだよ。気持ちも高まるっていうのが一番の要因かな。やっぱりファンの方たちの声援が力になっているんだなって感じる。もちろん、球場の構造を考えてもホームランが出やすいっていうのは認めざるを得ないんだけどね。最近は試合前のスタメン紹介でバナナを食べるパフォーマンスをしてから、エスコンにバナナグッズを持ってきているファンの人がいたのも知っているよ。本当にうれしいよ。SNSでもバナナやキングコングのスタンプを送ってくれたりする人もいて楽しいね。そうやってファンの方たちに楽しんでもらっているなら最高だね」
打撃スタイルが重なるブーマー
他球団のスコアラーは「パ・リーグで最も怖い打者の1人」と警戒を口にした上で、レイエスの打撃についてこう分析する。
「逆方向に長打を打てるし、変化球への対応力が高い。コンタクト能力に自信を持っていると思います。来年は1年間通じて試合に出続ければ三冠王を狙えるのでは。厄介な打者ですよ」
助っ人外国人で三冠王を獲得した選手はブーマー・ウェルズ(阪急、
オリックス、ダイエー)、
ランディ・バース(
阪神)の2人のみ。バースは85、86年と2年連続で輝いている。
巨漢の右打者でレイエスと重なる打撃スタイルがブーマーだった。来日2年目の84年に打率.355、37本塁打、130打点で外国人史上初の三冠王に輝くと、その後にシーズン40本塁打を3度マーク。ただ、「私はホームランバッターではなく、アベレージヒッターだ」と語っていたように長い手足を器用に使った巧みなバットコントロールが真骨頂だった。89年に打率.322で2度目の首位打者を獲得するなど、日本で10年間プレーして通算打率.317をマーク。4000打数以上では
落合博満(
ロッテ、
中日、
巨人)を上回り、右打者の史上最高打率だ。
ブーマーは異国でプレーする際に心掛けていることを聞かれ、「日本で成功するためには、自分が日本にいることを忘れないことだ」と語っている。本塁打を狙ってバットを振り回すのでなく、好機の場面では右方向への軽打で走者を掛けすなどフォア・ザ・チームに徹した。打点王を4度獲得したことが貢献度の高さを物語っている。
レイエスも状況に応じた打撃技術で何度も殊勲打を放った。ブーマーのような「球史に残る最強助っ人」になれるか。その可能性は十分に秘めている。
写真=BBM