さらに強固になった救援陣
リーグ連覇を狙う巨人の救援陣は、球界屈指の陣容と言ってよいだろう。
中日を自由契約になり、複数球団の争奪戦になっていた
ライデル・マルティネスの獲得に成功。8、9回を
大勢、マルティネスに託すことになるが、他の救援陣も能力の高い投手がそろっている。
左の変則サイドで経験豊富な
高梨雄平、プロ2年目の今季4勝22ホールドで新人王を受賞した
船迫大雅、チームトップの58試合登板した
アルベルト・バルドナード……。そして、他球団のスコアラーが「直球の質で言えば、大勢やマルティネスより上」と評する右腕が、最速160キロ右腕のカイル・ケラーだ。
「高めの直球は速いだけでなく軌道が独特なんです。対戦した打者たちは『吹き上がる』と表現していました。高めから落ちてくるパワーカーブも厄介です。
阪神時代は直球で空振りを奪うイメージがなかったのですが、日本でプレーを重ねて打ちづらくなっている。リードを許して7回からケラーが出てくると苦しい展開になります。来年の巨人は間違いなく手強い相手になるでしょう」(前出のスコアラー)
特に活躍が際立ったケラー
2021年から3年連続リーグ優勝を逃し、22、23年はBクラスに低迷。その要因は不安定な救援陣だった。救援陣のチーム防御率を見ると、22年が3.78、23年が3.81といずれもリーグワースト。
阿部慎之助監督が就任し、着手したのは救援陣強化だった。阪神を自由契約になったケラーのほか、トレードで
泉圭輔、
近藤大亮、現役ドラフトで
馬場皐輔を獲得。ドラフト1位右腕・
西舘勇陽もセットアッパーで起用した。積極的な外部補強に生え抜きの選手たちは刺激を受ける。大勢、船迫、
平内龍太らが奮闘した。
補強した投手たちの中で、特に活躍が際立ったのがケラーだった。4月下旬から約2週間ファーム降格を経験したが、その後は安定した投球を続けて救援陣に不可欠な存在になった。52試合登板で2勝2敗1セーブ20ホールド、防御率1.53。打者が直球にヤマを張っていても当たらない場面が見られた。47回で54奪三振を奪い、奪三振率10.34。他球団なら抑えを務めていても不思議ではない投手だ。
球史に残る剛腕クローザー
剛速球で球界屈指のリリーバーの名を刻んだ助っ人外国人投手といえば、デニス・サファテだろう。
広島、
西武でセットアッパー、抑えで活躍すると、14年にソフトバンクへ。3球団目で絶対的守護神に進化した。移籍1年目から4年連続60試合以上登板し、15年から3年連続最多セーブのタイトルを獲得。17年はNPB歴代最多の54セーブを樹立した。
同年に
DeNAと対戦した日本シリーズで見せた快投は伝説として語り継がれている。第2、3戦に登板し、3勝2敗で迎えた第6戦では1点ビハインドの9回から登板。打線が同点に追いつくと、延長10回、11回も続投。150キロを超える直球で打者をねじ伏せ、3回無失点の快投で球場の流れを変えると、11回に
川島慶三のサヨナラ適時打で日本一に。日本シリーズMVPに輝き、外国出身の選手で初の正力松太郎賞に選出された。
森唯斗(DeNA)はサファテと親交が深く、その後に守護神の座を継承して黄金時代の立役者となった。サファテとのキャッチボールで破壊力十分の直球を受け続けたことで「あいつのせいで、何個、グラブがつぶれたか」と週刊ベースボールの取材で振り返っている。そして、尊敬の念を口にしていた。
「キャッチボールの意識だったりというのは、すごかったんですよ。そこはやっぱり、僕も続けていきたいなとは思っているんです」
「彼とキャッチボールをしたら、そう気づく人もいるんじゃないですか? キャッチボールの大切さというか、僕はもし一緒にキャッチボールとかをしてなくて、トレーニングでも、食事だったりでも、そこまでやっていなかったら、多分僕はここまでできていなかったと思うし、ホントに勉強になりましたね」
サファテは18年以降、股関節痛に悩まされ、一軍のマウンドから遠ざかったが来日通算234セーブをマークした。日本でキャリアを重ねて進化しているケラーはどこまで近づけるか。全盛期はこれからだ。
写真=BBM